太宰治のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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第3位 如是我聞

出版社:筑摩書房
発売日:1989年6月27日

「小鳥を飼い、舞踊を見るのが立派な生活なのか!刺す!そう思った。大悪党だと思った」に見られる志賀直哉に対する直筆分が本作の構成要素の骨子に収められ、その前後に見られる「川端康成へ」と名ざしで発表された告白体の作品とともに、未だ文学界で物議を醸し続けている不朽の一作!

太宰作品にはいくつか実在の人物を扱ったものと、また実在の人物に抗議したものとがあげられますが、『もの思う葦』に収められた「川端康成へ」に次ぐこの『如是我聞』は、太宰の本音が余すことなく独白された“直接攻撃”を秘める作品にあげられるでしょう。

当時の志賀直哉の生活を俯瞰すると、氏の周りで流行っていた文壇形成・作家と編集者とのあり方に、太宰が根底から嫌っていた“談合の厚み”が窺えます。
つまりその辺りを批判した作品で、いえばノンフィクションのような、とてもリアルな仕上がりになっています。

実際、太宰が川端や志賀を嫌っていたかどうかはわかりませんが、「思ったことを正直に書くことを美徳」(『弱者の糧』より)にしていた太宰の心境から見て、その創作理念には少なくとも当時の文壇の様子への反発と、他作家への不満のような懸念があったことが窺えます。
太宰の人間交流と文学への主義に興味のある人にはおすすめの一作です。


第2位 惜別

出版社:筑摩書房
発売日:1989年3月28日

中国の思想家・魯迅を登場させて、「私」を含めた他の登場人物との人間模様を描いた架空のストーリー。
太宰は、魯迅の随筆「藤野先生」をテーマに立て、仙台医学専門学校に留学していた周樹人(後の魯迅)が医学から文学に転じ、仙台を去るまでを描いている。

魯迅と聞けば「堅苦しいイメージ」をする人も多いかも知れませんが、全くそんなことはなく、この史実をまとめたような「架空のお話」は、終始、太宰独自の柔軟な表現をもって描かれています。
ですので誰でもその物語の光景や情景をリアルタイムな感覚をもって把握でき、かえって難解だと思える表現は「真面目から転じる滑稽への演出」として捉えられるかも知れません。

読了後は後味よい感触で、太宰の「史実をからめた独創の面白さ」を痛感すると思います。
本作を読まれる前に1つか2つ、魯迅について書かれた書籍や資料を読んでおくとよいかも知れませんね。
とくに藤野先生と周君とのやり取りは、あとからじわじわくる「喜劇要素」が垣間見られ面白いです。


ランキング
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第1位 水仙

出版社:筑摩書房
発売日:1989年1月31日

洋画家・林倭衛の夫人だった秋田富子が太宰に送った手紙をヒントに本作品は書かれています。
戦後の担当編集者の一人であった野原一夫は、本作品と『メリイクリスマス』は秋田富子への「清潔な愛情が生んだ作品である」と述べました。

洋画家である静子と、「少しは絵について理解がある」と自負する骨太画家の「僕」が、ほのぼの日常風景を展開してゆくシリアス&ペーソスストーリーの形です。

もともと純粋だった女流画家が、世間の流行や批評に影響されて、だんだん本来の生粋性を失っていき、果ては精神分裂を起こして何も描けなくなってしまうという悲壮の結末。
描けたはずの絵が、世間から学んだ故に何も描けなくなってしまう。この点に、知識と才能との無関係性が裏打ちされています。

成功すると思っていた自分の将来が、自らの手によって破滅に導かれてゆく。
これにより静子は精神を病み、絵を描くのを諦めてしまいます。

そうしてぼんやり微笑む静子を見ながら、「僕」は「(彼女が描く絵は)いい絵だ、すばらしくいい絵だ」などとそわそわし始め、それまで静子の絵を嫌っていたのにかかわらず、「僕」はどうでも静子の絵を見たくなります。
この辺りの“視点の切り替え”が絶妙でした。

あと、言葉をまともに話せなくなった静子との筆談シーンもうっとりするほど哀しい感じ。
一人の人間が個の内側へ失われてゆく静かな描写に、恐らく読者は心を揺さぶられることでしょう。

次点紹介

以下、今回のランキングには入れませんでしたが、私のおすすめする次点作品を紹介します。

次点 犯人

出版社:筑摩書房
発売日:1989年5月30日

本作「犯人」を発表した当時、世間では「いきなり人を殺傷する残虐な事件」が頻発していました。
某地方の肉屋の主人が、強盗に入られ、いきなり刃物で切り付けられたというニュースが当時の新聞でも取り上げられています。

本作品はこのような「突発的な事件」が下敷きになっており、いわゆる社会性をお反映させた“大衆文芸”の切り口も加味されています。

鶴というサラリーマンと、その同僚・OLの森ちゃんとの純愛物語が描かれています。
鶴はこの森ちゃんとの将来設計をするため部屋を借りようとしますが、実の姉に猛反対されて、結局その姉を刃物で殺傷してしまいます。
そしてそのまますたこらさっさ、東京から京都へ逃げて行く展開です。

物語のオチがなんとも悲しく滑稽で、若者の恋愛もバカにできないと念押しさせられる印象でした。
冒頭にプーシキンの一句がありますが、それはまるで本作のストーリーを一行で表したような力強い引用になっています。

物語全般の語り調はリアルタイムで場面を見るようにスピーディなもので、「手っ取り早く太宰を読みたい!」という人にはもってこいの一作です。

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まとめ

ここまで読んで頂きありがとうございます。
以下に、私がおすすめする太宰治著作の作品ランキングを纏めます。

・1位 水仙
・2位 惜別
・3位 如是我聞
・4位 佐渡
・5位 晩年
・6位 皮膚と心
・7位 黄村先生言行録
・8位 もの思う葦
・9位 ろまん灯籠
・10位 饗応夫人
・11位 黄金風景
・12位 道化の華
・13位 女生徒
・14位 小説の面白さ
・15位 玩具
・16位 人間失格
・17位 待つ
・18位 風の便り
・19位 駈込み訴え
・20位 富岳百景

太宰治の作品は多くの読者から根強く支持されていますが、その魅力はいったい何なのでしょうか?

「太宰の魅力は?」と聞かれてたいてい即答はできないかも知れませんが、恐らく私は、その魅力は「自分の主張を代弁してくれることによる共感」ではないかと思っています。

私は氏の作品の論評をそれなりに多く手掛けてきましたが、その際によく太宰ファンの方から、「太宰の書く文章は、自分の心底にある感情を包み隠さず言ってくれる。
だからまるで図星をつかれたような感覚に襲われる」ということを聞かされました。

この“図星をつくという点”が太宰作品に人が引き込まれる原点だとすれば、やはり太宰は「人の心象を非常に巧く描ける高等な技術を持った小説家」だと言わざるを得ません。
『犯人』の鶴の衝動や『人間失格』の「私」の人生への感想、また(ランキングには入れていませんが)『きりぎりす』に出てくる「妻」の心象などを紐解けば、男女問わずに“各キャラクターの心の機微”のようなものがおのず感じ取れるように思います。

太宰作品は多く読めば読むほど、その作品に内在されている求心力のようなものに中毒性を覚えてしまいます。

ぜひこれを機会に、一度、太宰作品を手に取って、あなたの文学コレクションに加えてみて下さい。
あなたの素敵な小説との出会いを願っています。


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