太宰治『女生徒』3分で分かるあらすじと感想&徹底解説!

女生徒

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小説『女生徒』は、1人の女生徒が思春期を生活する様子を描き、全体的に1日日記の体裁を取る。
太宰の生まれ故郷である青森県にて、「美少女の美術史」として展示企画(アニメ化)され、また、札幌国際短編映画祭2015大林宣彦審査員賞、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015奨励賞を受賞した。

今回は太宰治の小説『女生徒』のあらすじと感想を交えながら、「女生徒の心の移り変わりは、男子生徒にも十分通じる?」について紐解きます。

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『女生徒』作品詳細

著者:太宰治
写真:梅佳代
出版社:角川グループパブリッシング
発売日:2009年5月23日

概要

『文学界』(昭和13年)に初出が掲載された短編で、思春期の少女が持つ自意識の揺らぎと、その時期に陥りやすい、厭世的な心理を繊細な筆致で描き出し、当時の文芸時評で川端康成たちから激賞され、太宰の代表作の一つとなった。

タイトルは、当時太宰の机辺にあったレオン・フラピエ作、桜田佐訳『女生徒 他八篇』(岩波文庫、昭和13年)からとられたという。

アニメーション化

●青森県立美術館、静岡県立美術館、島根県立石見美術館が2014年に合同で実施した企画展「美少女の美術史」において、展示品として製作された。
原作が主人公のモノローグで書かれているため、出演は朗読の遊佐未森のみ。

・監督:塚原重義(弥栄堂)
・朗読:遊佐未森
・幻想デザイン・作画:アカツキチョータ
・原画:大野勉、鈴木信一、辻佳宏

引用元:wikipedia

『女生徒』の主な登場人物の名前一覧

●女生徒
主人公。
ちょうど思春期にさしかかった少女で、子どもから大人に移り変わるまでの微妙な空想なもの思いに浸っている。
自分の理想と現実とのギャップに悩み、半ば「いつまでも若々しく、きれいな女の子でいたい」と思い続けている。

●サラリイマン、おばさん、植木屋、中学生、小杉先生など
主人公・少女の身の回りで生活する人たち(少女の回想で登場し、主観的に行動はしない)。

●お母さん
主人公・少女の母親で、少女と一緒に暮らしている。
ごく平凡な母親。

引用元:青空文庫


↓参考書籍↓

1『女生徒/ろまん燈籠 朗読CD付』

著者:太宰治
出版社:海王社
発売日:2012年11月22日

2『女生徒 (デカ文字文庫)』

著者:太宰治
出版社:舵社
発売日:2005年12月1日

3『美しい表紙で読みたい 女生徒』

著者:太宰治
フォーマット:Kindle版

【簡単】3分でわかる『女生徒』のあらすじ

思春期にさしかかった少女が、毎日をもの思いにふけりながら過ごす。
その空想のうちで、自分の中の理想を膨らませ、現実で思うようにいかないことなどを思い思いに取り上げて、「どうすれば人は幸福になれるか?」などをたとえば考える。

そのうち、段々日常的な物ごとに思いが馳せていき、登下校中で見る光景や情景、家庭で見える普通の景色(これまで見てきたもの)についていろいろ考え始める。

自分が今生きていることの不思議を思いながら、将来設計するにおいて、「人が生きている意味」や「本来どのような生活の仕方が、人の理想的なあり方なのか?」などについて考えていき、やや哲学的な思想に踏み込んでいく。
そしてその思春期が「誰にでも一瞬で過ぎる」という結末をもってストーリーは終わる。


↓参考書籍↓

1『読んでおきたいベスト集! 太宰 治』

著者:太宰治
編集:別冊宝島編集部
出版社:宝島社
発売日:2011年7月7日

2『萌えで読む!「女生徒」』

製作:ラムゼス
著者:太宰治
フォーマット:Audible版

3『女生徒リライト』

著者:太宰治、忌川タツヤ
出版社:焚書刊行会
発売日:2016年9月14日
フォーマット:Kindle版

『女生徒』の結末(ラストシーン)

日記調でしめくくられるストーリーは、思春期の様子をリアルに伝えながらも、やがてはまた日常生活へ戻っていく少女の心情を描きます。

その末尾に表れる少女の心持ちは、どこか悲しく、おごそかで、「どこにでもいる少女」「誰も自分の悩みを知らない代わりに、自分も人の悩みを知れない壁のようなものへの悲しさ」「自分がこれだけ空想させられた思春期も一瞬で終わる」というような、なんとも感想の尽きない幕引きを選びます。

まるで少女が日記をつけ終わり、そのまま立ってどこかへ行って、読者は自分が置き去りにされたような、仄かな哀愁が立ち込めます。

『考察&解説】女生徒の心の移り変わりは、男子生徒にもじゅうぶん通じる?

本作『女生徒』は終始「一人称視点」で書かれたもので、その点では女子にも男子にも個人的な主観をもって読書できる。

つまり、自分が思春期にさしかかった頃のことを単純に想起でき、「思春期という特定の期間」における個人的経験に置き換えることができる。
こう考えれば、女子でも男子でも、同じ視点をもってストーリー、背景描写、人物描写を眺めることができるのではないか。

●朝は、いつでも自信がない

本作においてこの前述でも「朝」についての感想があるが、「朝は自信がない」というのは男女問わず、誰でも感じるふとしたもの。
昨夜までは対人においてあれほど自信があったのに、朝になると途端に勇気がなくなるというような、そんな感覚味ったことはないだろうか?

●蒲団を持ち上げるとき、よいしょ、と掛声して、はっと思った

「よいしょ」というかけ声が、まるで自分が老いたような感覚を与えると思い込み、少し嫌悪する場面。
これも男子・女子を問わず、「いつまでも若くありたい」と思い続ける人にはわかる。

男子は「格好よさ」を求めて若くありたい、女子は「美しさ」を求めて若くありたい、それぞれ思い方・感じ方は違うだろうが、「同じ経験をしたことがある」という人が恐らくいるだろう。

●眼鏡をかけないで、鏡を覗くと、顔が、少しぼやけて、しっとり見える。 (中略)眼鏡をとって人を見るのも好き。相手の顔が、皆、優しく、きれいに、笑って見える。それに、眼鏡をはずしている時は、決して人と喧嘩けんかをしようなんて思わないし、悪口も言いたくない。

男子でも女子でも、自分が眼鏡をかけ始める前後を思い出せば、この情景について理解できると思う。
これは半ば対人にデリケートな人に言える心情かも知れないが、人の心理に配慮する上で「誰にでも言える情景」と思い起こせる。

●眼鏡は、お化け

初めて眼鏡をかけたとき、あるいは、かけたくない眼鏡をかけたときに呟く言葉。
これも男子・女子に限らず、「眼鏡が嫌い」という人には実感できる。

●「あの、そこは私、見つけた席ですの」と言ったら、男は苦笑して平気で新聞を読み出した。よく考えてみると、どっちが図々しいのかわからない。こっちの方が図々しいのかも知れない。

町中で交わされる、日常的な人間関係の模様。
これも少し対人に敏感な人になら、自分がしたのと同じような経験としてわかるかも知れない。

●自分の気持を殺して、人につとめることは、きっといいことに違いないんだけれど、 無理に笑いかけたり、相槌うたなければならないのだったら、私は、気ちがいになるかも知れない。

主観の優先と、共存するルールを思う上で、やはり「素直に生きることがラクだ」と思い直す。
これも男女を問わず、人のうちに生きながら誰でも思うことである。

●お湯をじゃぶじゃぶ掻きまわして、子供の振りをしてみても、なんとなく気が重い。これからさき、生きてゆく理由が無いような気がして来て、くるしくなる。

落ち込んだときに無理して明るく振舞ってみても、決して気分が晴れないということをそのまま表している。
これも男女を問わず、誰もが共感できること。

●ほんとうにソロモンの栄華以上だと、実感として、肉体感覚として、首肯される

歴史上の人物と出来ごとを思い起こして、今の自分の気持ちに参照させる。
歴史というのは誰にでも平等に振り返ることができるものだから、この感覚も男女問わず皆に通用する。

●大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。誰も教えて呉れないのだ

思春期を過ごしながら、その感想を言った言葉。
これも思春期を通る人なら誰にも言えること。
「自分の人生の模範解答を書いた教科書がない」というのは誰でも同じに言えること。

●窓からお月様が見える。(中略)お月様に、そっと笑いかけてみる。(中略)ふと、この同じ瞬間、どこかの可哀想な寂しい娘が、同じようにこうしてお洗濯しながら、このお月様に、そっと笑いかけた、たしかに笑いかけた、と信じてしまって

夜に外へ出れば、月は誰にでも見えるもの。
その月を見ながらもの思いにふけることも、誰にでもできること。
つまりこの下りも男女に共通のもの。

●眠りに落ちるときの気持って、へんなものだ。(中略)なんだか重い、鉛みたいな力が、糸でもって私の頭を、ぐっとひいて、私がとろとろ眠りかけると、また、ちょっと糸をゆるめる。すると、私は、はっと気を取り直す。また、ぐっと引く。とろとろ眠る。また、ちょっと糸を放す。そんなことを三度か、四度くりかえして、それから、はじめて、ぐうっと大きく引いて、こんどは朝まで。

眠るときのリアルな形容。
人は毎日眠るものだから、これも共通の表現。
実によく描かれている。

●おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?もう、ふたたびお目にかかりません。

「(本作においてこれまで)いろいろ考えたり、もの思いにふけり、思春期特有の経験・体験をしてきた自分が、結局都会に埋もれて誰にも知られない」といった、少し哀愁をかもす場面。
誰にでも通用する思春期にまつわる思い出であり、また「思春期という期間が一瞬で通り過ぎる」という形容を持たせている。
「ふたたびお目にかかりません」というフレーズに、二度とは帰らない「思春期の一瞬ごと」が含められる。

ここまでを振り返って重点としてあげられるものは、「共通」「通じる」ということ。

男女を問わず、あるいは世代・年齢を問わずに、誰にでも言える心情描写をそのまま写しているリアルな形容は、読者の間に壁を作らず、全ての人がわかりやすい内容を掲げている。

ここで見えてくるものが「共感」ではないでしょうか。
共感できる内容であるからこそ、本作は「誰にでも通用し、共感され、実に体験が基軸にされた正直な作品」となるのでしょう。

太宰作品はこの共感を非常に巧く捉え、人それぞれが個別の感覚をもっているのに関わらず、たいていの読者に「わかりやすい」「これ、自分だ」と言わせてきます。

本作『女生徒』もその1つで、読んでいると「これ、あたしだ」「ああ、こういうときの気持ち、わかる気がする」というような、共感を湧かせます。

上記にあげた一文ずつの例は、全て「男女問わずに素直に思える・感じることができる情景」です(そのつもりです)。
このような「共感できる文章」の連続をもって仕上げられた本作は、「女生徒」というタイトルを冠しながらも、まさに「男子生徒・女生徒の心の移り変わりを『共感』を軸に読者へ伝えた普遍的な作品」と言えるでしょう。


↓参考書籍↓

1『女生徒』

著者:太宰治
イラスト:かつよし
出版社:オーズ合同会社
発売日:2014年1月22日
フォーマット:Kindle版

2『名作クラシックノベル 太宰 治』

著者:太宰治
出版社:宝島社
発売日:2008年11月25日

『女生徒』書評

【評価:5.0】

「日記」の体裁を取ったような本作は、たとえば読書感想文を書くには持って来いの題材になるでしょう。
思春期という、誰にも共通の話題を取り上げ、その思春期で思う数々の空想や想像…果ては哲学的な思想にまでテーマが延び、その話題からテーマまでの内容や展開はほとんどの読者に受容されやすいです。

まとめ&感想

私的に太宰作品の中で、ベスト3に入るお気に入りの作品です。
よく太宰は「女性的な視点をもって創作するのが上手い」と言われますが、本作ほどその妙味が活きているものはなかなかないと思います。

この『女生徒』は、ある女性の手紙を基にして書かれた(半ば)リライト的な作品と言われますが、それでも、男性である太宰の形容が多分に加味されているからこそ、「女性の視点だけでなく男性の視点から読んでも共感できる傑作」と称されるのでしょう。


↓さらなるおすすめ書籍↓

1『太宰は女である』

著者:太宰治
イラスト:宇野亜喜良、林静一、会田誠
出版社:パブリック・ブレイン
発売日:2010年11月11日

2『あなたの知らない太宰治(注釈付)』

著者:太宰治
出版社:ひろふみ
発売日:2013年8月21日
フォーマット:Kindle版

3『恋の蛍―山崎富栄と太宰治』

著者:松本侑子
出版社:光文社
発売日:2012年5月10日


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