宮沢賢治『銀河鉄道の夜』3分で分かる簡単なあらすじと感想&解説!

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

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『銀河鉄道の夜』は宮沢賢治童話の代表作で、漫画やアニメーションをはじめ、映画化やドラマ化、ミュージカルに舞台劇まで、非常に多くのオマージュ・スピンオフ作品が製作されました。

今回は宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』のあらすじ&感想とともに、本作で語られる「ほんとうの幸せ」がどういうものか?について紐解いてみたいと思います。

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『銀河鉄道の夜』作品詳細

著者:宮沢賢治
出版社:新潮社
発売日:1986年6月19日

概要

孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作の1つ。

独特の信仰心をベースに敷く形でそのストーリー展開は全体的に「しあわせ」を得ようとする主人公・ジョバンニの主観的な語り口調で、数々の停車場とされる星々での幻想的な奇譚が賢治特有の脚色によって描き出される。

晩年の作品とされ、推敲(書き直し)が本人により何度も繰り返されて発表されたことは有名。

映画化から電子書籍化までの略歴

●1985年制作の劇場用アニメ映画。同年7月13日公開。毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞作。監督:杉井ギサブロー。
●2007年9月27日の『BSアニメ夜話』で、2009年8月13日には『BS夏休みアニメ特選』でこの作品が放送された。
●80年後のKENJI〜宮沢賢治 映像童話集〜「銀河鉄道の夜」:2013年3月6日、NHK BSプレミアムで宮沢賢治没後80年を記念した映像作品による特別番組。
●〔ミュージカル〕2008年、劇団ひまわりによるミュージカル。脚本・演出:中島透。
●2004-2007年、劇団わらび座のミュージカル。台本:川森一、演出:中村哮夫。
●〔演劇〕東京演劇アンサンブル公演、ブレヒトの芝居小屋。世界で初めて上演権を経て上演。(初演1982年2月9日)。
●〔プラネタリウム〕銀河鉄道の夜―Fantasy Railroad in the Stars-:2006年制作。KAGAYA studio 制作、音楽は加賀谷玲。
●〔ドラマCD〕
VOICE LANDより1996年3月5日に発売。
モモグレより、宮沢賢治生誕111周年記念アルバムシリーズとして2008年12月25日に発売。
●〔電子書籍〕音楽絵本・銀河鉄道の夜:アップルが開発したiPad用、iPhone及びiPod touch用のアプリケーションとして2011年から市販されている電子絵本。

『銀河鉄道の夜』の主な登場人物の名前一覧

●ジョバンニ
孤独で空想好きな少年。歳は授業内容や仕事から思春期前とわかる。家は貧しく、母親が病気で寝込んでいるので、早朝には新聞配達、学校が終わってからは活版所でアルバイトをしている。

●カムパネルラ
ジョバンニの同級生で友。父親同士も親友だった。裕福で人気者の優等生として描かれている。彼の母親は石炭袋にいたことから亡くなっていると推察される。

●ザネリ
ジョバンニの同級生。「お父さんから、らっこの上着が来るよ」と言ってジョバンニをからかう。烏瓜のあかりを流す際に川に落ち、カムパネルラに助けられる。

●ジョバンニの母
病気で床に臥せっており、ジョバンニが幼くして働かざるをえない要因の一つとなっている。

●ブルカニロ博士
初稿から第3次稿まで登場したが、第4次稿では全てのシーンがカットされた。

●マルソ
第4次稿にのみ登場。
ジョバンニにカムパネルラが川に流されたことを伝えた人物。ジョバンニの同級生。

引用元:wikipedia


〈参考書籍〉

出版社:角川春樹事務所
発売日:2011年4月15日

【簡単】3分でわかる『銀河鉄道の夜』のあらすじ

9編のエピソードからなり、その各ストーリーで待ち受ける試練や出来ごとが主人公・ジョバンニに降りかかる。

―全エピソード―
{1}午后の授業
{2}活版所
{3}家
{4}ケンタウル祭の夜
{5}天気輪の柱
{6}銀河ステーション
{7}北十字とプリオシン海岸
{8}鳥を捕る人
{9}ジョバンニの切符

この9つの場面で展開される童話型のストーリーで、鉄道に乗って地球を離れ、宇宙へ旅立つ主人公・ジョバンニは、地球で過ごす平凡な日々では決して得られないような感動の数々を経験する。

宇宙にもジョバンニと同じような人がいて、9つのエピソードが鉄道の各停車場で繰り広げられ、そこで働いたり、ヒューマンドラマを展開したりする。

第1のエピソード「午后の授業」で、「銀河系の仕組み」をもとに生命がどうして誕生したかをジョバンニとカムパネルラは訊かれるも、二人とも答えられない。
この生命の誕生秘話をもとにして、その後のストーリーでもずっとジョバンニは「ほんとうの幸せ」について思いを巡らせていく。

銀河鉄道を草案した由来ときっかけ

宮沢賢治作品では、数々の童話や創作物を主流にしており、その幻想的な風景や情景を隈なく捉えて描写されます。

この銀河鉄道というフレーズも大変「空想的な感動を与える命名」であり、いえば宮沢作品従来の童話向けの作品をさらに色濃くしたような、補強的な工夫が見て取れます。

太古より、未だ解明できていない「宇宙」を舞台にすることで、より幻想とクラシカルな風情を醸し出すことを1つの狙いとしたのでしょう。


↓参考書籍↓

①『銀河鉄道の夜3作品読み比べ』

著者:宮沢賢治
出版社:サキ出版
発売日:2014年4月24日

②『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の物語構造』

著者:内田寛
出版社:文芸社
発売日:2012年12月

③『宮澤賢治「銀河鉄道の夜」の真実を探って』

著者:佐々木賢二
出版社:誠文堂新光社
発売日:2011年5月

『銀河鉄道の夜』の結末(ラストシーン)

9編のエピソードを潜り抜け、ジョバンニはいよいよ自分の母親が住む町中へと旅立ちます。

カムパネルラは、サウザンクロス(南十字)で銀河鉄道から下車したのち、そこで見かけた炭鉱夫に怯えながらも「あすこにいるの僕のお母さんだよ」とジョバンニに言い残し、そのまま姿を晦ませます。

少し意識が途絶えたあとで、牧場近くの丘の上で一人目覚めたジョバンニは、そこで牛乳をもらって川へ向かうと、「子どもが水へ落ちた」と知らされます。
カムパネルラは川に落ちたザネリを助けるべく川に飛び込み、自分が溺れて行方不明になりました(そうジョバンニは聞かされます)。

カムパネルラの父親(博士)は自分の子ども・カムパネルラの生還を諦めながらも、ジョバンニの父親から手紙の内容をジョバンニに伝えます。
「もうすぐ駅に着く」という父親の手紙の内容を知り、ジョバンニは大喜びで感極まりながら、父親の帰りを待ちながら母親のもとへ帰っていきます。

【考察・解説】銀河鉄道が語る「ほんとうの幸せ」とは何なのか?

本作『銀河鉄道の夜』ではジョバンニをはじめ、数多くのキャラクターが或る信念や信仰をもって生きていることが窺われる。
たとえば「七、北十字とプリオシン海岸」からちょくちょく出てくる「幸」というワードは、ジョバンニが慕う自分の母親の幸福を指し、その幸福のあり方がどんなものか、またどこにあるのかと、親友カムパネルラを連れて、その「幸せの行方」を探す旅に出て行く。

●「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸(さいわい)になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」

このセリフをが登場する前、ジョバンニは空を見上げながら、「ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのように見える橙いろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考えているんだった」と、半ば幻想的に回想していく。

この場面を見ていると、ジョバンニやカムパネルラの「母親のもとに幸福を見つけようとする行為」が遠いところにあるように思われて、「ほんとうの幸せ」と出会うまでにはまだまだな長い時間がかかってしまうような、そんな望遠的な気色が見え隠れしてくる。

●「どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちにくれてやらなかったろう……どうか神さま……この次には、まことのみんなの幸いのために私のからだをお使いください。」

「ほんとうの幸せ」を求めながらジョバンニが見つけた「蠍(サソリ)」が呟くセリフ。
このサソリのセリフは犠牲心から出たような、「人のために見つける幸福」というものを全面に押し出してくる。
そしてこのサソリを思いながらジョバンニが呟くセリフが以下。

●「僕はもう、あのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか、百ぺん灼(や)いてもかまわない。」

ジョバンニもサソリの犠牲心に釣られる形で、「自分の存在を人の幸福のために使って下さい」というような、なにか膨大な理想を掲げている。
ここまでを見ると、個人の幸せから他人の幸せを思うジョバンニとサソリのあり方が、非常に浮き立つ形で吟味される。

これは、賢治が読者(童話系という意味ではとくに児童)へ訴えかけたかった自分の思想や理想のようにも受け取れるが、ではなぜこの思想や理想を、宇宙を舞台にした『銀河鉄道の夜』で訴えたのか?

それは、「人間の世界―いわゆる俗世間」から作品舞台を引き離すこと(確立すること)で、その理想をより魅力的に仕立て上げようとしたからではないか?

人間界に見られる俗世間では、どの読者も皆、それまでの生活から得られた先入観により、「理想を見る目」が鈍ってしまうもの。
そこで、幻想を交えたいわば「何でもありの世界」でこそ、自分の主張をさらに強く印象付ける画策を練った、とも窺えてくる。

宮沢作品のほとんどが、この幻想譚により綴られている。
この『銀河鉄道の夜』は何度も何度も推敲を重ねて完成した、いえば賢治の渾身の一作と言ってよいほどの、集大成的な傑作だ。

また本作は賢治の晩年に書かれている。
その点から眺めてみると、賢治が自分の生涯において「最も自分が訴えたいとするべき、至高の(それ以上にない)理想と価値観」を、その晩年においてこそ書きたいとした作家魂のようなものさえ感じられる。

続いて本作で舞台にしている「宇宙」や幻想というものは、こと人間界から遠方にあるものとなる。
2017年現在においても宇宙の果ては未だ解明されておらず、また、自然の隅々までを人は把握できていない。
加えて幻想というものはまさに夢であり、「得体知れずのもの」に終わっている。

つまり本作で掲げた「ほんとうの幸せ」は、それほど「人間の世界から遠い地にあること」を暗喩的に表現し、人がいくら手近に求めても、すぐには得ることができない「儚いもの」の例えに映ってくる。

日常的に宇宙にはなかなか行けないし、幻想も形が無いからつかめない。
2つとも人が形として把握できないもので、「ほんとうの幸せ」はそこにあると言っている。

総じて本作で語る「ほんとうの幸せ」というものは、まず「人を思いやる犠牲愛の尊さ」にあり、そしてそれは人にとって遥か遠い地にあるものとなる。

「人のために自分を犠牲にする愛は非常に尊いけれども、その行為、またその行為から得られる幸せは、なかなか人は手にすることができない…」

本作の「ほんとうの幸せ」にまつわる主張とは、たとえばこのようなことを言っているのではないでしょうか。

↓参考書籍↓

①『アニメと生命と放浪と―「アトム」「タッチ」「銀河鉄道の夜」を流れる表現の系譜―』

著者:杉井ギサブロー
出版社:ワニブックス
発売日:2012年7月7日

②『銀河鉄道の夜メイキングブック ちいさな橙いろの三角標から』

著者:木野陽
出版社:密林社
発売日:2015年9月26日

③『宮沢賢治の真実:修羅を生きた詩人』

著者:今野勉
出版社:新潮社
発売日:2017年2月28日

『銀河鉄道の夜』書評

【評価:4.5】

読み応えがある作品という点では、本作は私的にイチオシです。
なにより創造力を養ってくれる傍ら、ストーリーが実にきれいで壮大であり、児童系の作品と言ってしまってはもったいないほどの「魅力の許容範囲が非常に大きい一作」です。
まさに「傑作!」のイメージが強い。

幻想文学が好きな方、またSFからヒューマンドラマ調のユーモアに魅了されたい方には、ぜひおすすめしたい一品です。
1つだけ難点を言えば、どうもキャラクターの全てが「児童系作品に登場するような、子供っぽさ」を持っているため、終始、仄々とした読感が続きすぎるところでしょうか。

まとめ&感想

ストーリーの本意には「非常に重いテーマ」が込められてあり、一読だけで読了してしまうのはもったいないです。
何度も読んでいるうちに、一読目では気づかなかった内容や、新しい感動の場面に遭遇することもありますので、ぜひ、二度三度は続けて読んで頂きたい作品です。

宮沢作品の中では「1番好きな快作」です!
何と言っても幻想の幅が半端ない!
もし今後、映画なんかでさらなるリメイク版が登場したなら、迷いなく観に行くことでしょう。

私的には、85年に放映された『銀河鉄道の夜』が、1番しっくりときました。
確か田中真弓さんが声優をされていたと思います。
ぜひ一度機会があれば、この『銀河鉄道の夜』(85年版)も楽しんで観て下さい。


↓さらなるおすすめ書籍↓

①『ジョバンニの島 みらい文庫版』

著者:杉田成道ほか
出版社:集英社
発売日:2014年3月5日

②『宮沢賢治の宇宙―『銀河鉄道の夜』の謎』

著者:清水正
出版社:鳥影社
発売日:2002年8月

③『世界でいちばん素敵な夜空の教室』

監修:多摩六都科学館
出版社:三才ブックス
発売日:2015年12月2日

〈アニメ「銀河鉄道の夜」CM〉

〈「銀河鉄道の夜」予告編〉


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