くちびるに歌を 映画とは違う感動が原作本に!あらすじ&感想

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映画化もされた中田永一氏(乙一氏)の青春小説「くちびるに歌を」。
読まれました?
映画のほうだけですか?
もったいないですよ!
中田氏(乙一氏)独特のユニークさ、そして深い文章でなきゃ味わえないあれこれが、原作に溢れています。

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ガサツな美人産休教師に釣られる男子生徒の合唱部入部騒ぎ

舞台は長崎離島の中学校。
産休に入る合唱部顧問ハルコの代わりに、ハルコの友人で「神童」たる美人ピアニストの柏木ユリが産休顧問としてやってきます。

めんこかー、とデレデレになる男子生徒たち、気持ちはわかる!

中田氏の登場人物設定は特徴があって、柏木ユリは、ガサツでオンボロ軽トラに乗ってるし、神童と呼ばれながら、Wiiのリモコン振ってる自称ニートという、いい加減な性格であるあたりが、物語に入り込みやすいですから、読みやすいのは保証付きです。

とりあえず、オトコにとって、重要なのは見た目。

女子だけの美しい花園であった合唱部に、男子の入部希望者がゾロゾロ。
反対する女子部員とは裏腹に、柏木ユリは、それを受理します。

兄の世話が仕事のサトルは成り行きで入部

サトルには、発達障害の兄がいます。
発達障害であるから、毎日決まった時間に、決まった行動を取らなきゃ恐慌状態になるし、送迎がなければ職場にも行き来できません。

サトルは、両親が自分亡きあとの兄を心配し、その世話をするために作られた弟、といっていい。
計画出産というにはむごい、あんたはにいちゃんの世話で一生を費やすんだよ、と子どもの時から決められてる子って、普通はどう思うんかな?反発するのが当然ちゃう?と。

でも、サトルはそれを自然に受け入れてるように見える、これがなんか、最初重く辛く感じてしまったし、いいの?それでいいの?とか本を握って問いかけましたよ。
まだ十五歳の男の子が、自分のことをできない兄の一生を背負う人生って。

そのサトルは成り行きで合唱部に入部し、自然に才能を発揮し、好きなクラスメイト、長谷川コトミと意外な出来事で近づいてしまったり。

でも、天使と思ってたコトミは、実は結構怖い。
口が悪くてそれをサトルが寝たふりして聞いてしまうシーンが、ウケすぎるんです!

信仰心が大いに薄れた

という描写!
乙一氏らしいじゃないですか!
そうだっけ、この地方はクリスチャンだなー
とね。

荒れて荒れて雨降って地固まる合唱部

やる気も歌唱力もない男子部員の歌は、課題曲の「手紙」も「呪いの手紙」にしか聞こえないし、練習もいい加減。
合唱部分断の危機!

だけど、もう一人の主人公、ナズナの家の複雑な事情を男子生徒がからかったことがきっかけで、次第に嵐は治まったりしていくんです。
この辺、やっぱり青春ぽいねー。

課題曲が「手紙」であり、十五歳の君へ、であるから、柏木は、十五年の自分に手紙を書かせます。
別に誰に読ませなくてもいい手紙だけど。

十五年後の自分への手紙はどう届く?

でも、そこには、十五歳の心にも体にも背負いきれない現実が書かれてたんですね。

サトルが、これでいいんだ、と思ってるようにみえた兄を背負っていく自分の人生についてもそう。
サトルは、時々兄を疎ましく思い、自分のように計算からでなく、純粋な愛情から生まれた友人たちをうらやましく思ってた、と書いてる、この言葉に、泣いた、泣いた、もう涙がボロボロでした!

同じ十五歳の子どもたちは純粋に、子どもがほしいという親の愛情から生まれてきたのに、自分は、兄への愛情と心配から計算で作られた子って、重すぎるよ!

自分がそうなら…ああ、でもそういう世代だからなあ…生んでおくもんだから生んでおこう、男子ならいいな、ちっ、女だったか、仕事しなきゃいけないから面倒だし一人でやめておこう、いずれ親を見させるために育てておこう、そんな計算から生まれた世代ですから、この部分が、すごく沁みてくるんですよ。

サトルの兄が救いを呼ぶラスト

サトルの兄はなぜ発達障害という設定だったか?
意味なかったのか?
サトルに重荷を負わせそれをサトルに昇華させるため?
だけじゃありません。

ナズナは小さい頃に亡くした母のかけてくれた言葉が思い出せずにいた。

それを、一度聞いた言葉を繰り返す、サトルの兄が、ナズナの前で言うんです。

「ナズナ…泣かんとよ」

もう、ぼろ泣きですわ。

人が救われる物語を書きたい
そう言い続ける中田氏(乙一氏)の公言通りではないですか。

くちびるに歌をもて

「くちびるに歌を」を読んでアンジェラ・アキさんの課題曲を改めて聴いたんですが、しみわたりますねー。

全力で歌いたくなるし、全力で聴きたくなる歌です。
そして、十五歳という子どもたちに贈りたい歌ですね。
これを取り上げて作品にされた中田氏に敬礼です、すごい!

十五歳…大昔すぎるな…受験生でしたがずいぶんと無駄に生きてました。
でも、大切なものがたくさんありましたよ。
愛したペットとか、好きな友だちもいた。
思い出させてくれて、ありがとう、と、歌が聴こえる「くちびるに歌を」に敬礼したい気分です。

くちびるに歌を (小学館文庫)

中田 永一 小学館 2013-12-06
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