夏目漱石『こころ』3分で分かる簡単なあらすじと感想&徹底解説!

夏目漱石『こころ』

大正3年4月から8月にかけて連載された夏目漱石の長編小説『こころ』は、連載から1世紀が過ぎた2014年現在にて発行部数705万部強という、文学史上歴代1位を誇る長大傑作。
映画化・ドラマ化・漫画化・アニメ化から舞台化まで、これまで数多くのリメイクがなされている。

今回は、夏目漱石の小説『こころ』とはどんな小説なのか?をあらすじを交えて解き明かします。

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『こころ』作品詳細

著者:夏目漱石
出版社:集英社
発売日:1991年2月25日

〈映画化〉
・昭和30年、日活により映画化。監督は市川崑。
・昭和48年、近代映画協会より映画化。監督は新藤兼人。
・平成24年、BANANAFISHによりタイトル「蒼筝曲」として映画化。監督は天野裕充。

〈ドラマ化〉
・昭和34年TBSより「サンヨーテレビ劇場」枠でドラマ化。
・昭和43年、毎日放送より「テレビ文学館名作」枠でドラマ化。
・平成3年、毎日放送より「東芝日曜劇場」枠でドラマ化。
・平成6年、テレビ東京よりドラマ化。

〈アニメ化〉
・平成21年、日本テレビより青い文学シリーズ第7話と8話に挿入。
〈ドキュメンタリ〉
平成26年、NHKBSプレミアムにより特別番組『漱石「こころ」100年の秘密』が放送。

『こころ』の主な登場人物の名前一覧

私・・・「上 先生と私」「中 両親と私」の語り手であり、田舎に両親を持つ学生。
「先生の妻」ことお嬢さんが好き。父が大病を患っている。

先生・・・定職に就かず、東京でニートのように妻と暮らす隠遁者。
「下 先生と遺書」で、これまでの自分の生き方を反省する。

先生の妻・・・先生から「静」と呼ばれ、「下」の前半では「お嬢さん」と呼ばれている。

先生の妻の母・・・戦没軍人の妻で、物語上ではすでに他界している。
「下」の前半では「奥さん」と呼ばれる。

K・・・「下」に登場する。先生とは同郷で、同じ大学に通う浄土真宗・僧侶の次男。
親友は「先生」のみである。
「先生」の提案により、一緒に下宿先で生活することになる。

【簡単】3分でわかる『こころ』のあらすじ

語り手こと主人公が、上・中・下で変わります。上と中は「私」、下は「先生」。
時は明治。

未亡人の奥さんの下宿先に「先生」は住み、その奥さんの娘である「お嬢さん」はその先生をとても愛してしまう。
でも先生は半ばナルシストを気取る好青年で、あまり恋愛というものに貪欲を引き出せない少し奥手な男。
Kは純粋な男でやや直情型だが、礼節をわきまえる好青年。

モジモジしている静と先生の間にKが割り込み、Kは静を好きになる。
静がKの誘いに応じる姿を見て先生は、初めて嫉妬欲を覚え、また静を自分の物にしようと強く誇示する。

もともと先生が好きだった静に「思いが届かない」と悟ったKは、静のことを本気で好きだったぶん本気で落胆し、自殺する。

この「静と先生の出会い」から「Kの自殺を知った先生」の心情を、「上」「中」で「私」が客観的に描写し、「下」では「先生」「静」「K」を登場させる形のリアルタイムで描写する。

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『こころ』の衝撃の結末(ラストシーン)

Kに「お嬢さんが好きだ」と告白された先生は「先を越されまい」と焦り、お嬢さんの母親である「奥さん」に「お嬢さんを下さい」と婚約・結婚の約束を取りつける。

奥さんから承諾を得た先生は、それから一週間ほど平静に暮らすが、時同じくしてKが自殺する。
先生はKの自殺を反省しつつもお嬢さんと結婚するが、Kに対する罪悪感と、結局自分もKと同じく「エゴを通す形で自分の目的を得ただけの人間ではないか?」と自責の念に駆られ、この2つの嫌悪で板挟みになる。
そして明治天皇の崩御をきっかけにして先生は、お嬢さんを残して殉死を決行する。


↓参考書籍↓

①『100分de名著 夏目漱石 こころ』

著者:姜尚中
出版社:2014年5月22日
発売日:NHK出版

②『漱石を読みなおす』

著者:小森陽一
出版社:岩波書店
発売日:2016年7月16日

③『漱石の「こころ」』

編集:角川書店
出版社:角川書店
発売日:2005年8月25日

『こころ』のタイトルの意味とは?

こころは人の中で移ろうもの。
本作のストーリー描写も冒頭から結末まで移ろうように流れていきます。
ですので、一度決めた物ごとでも人の生活のうちでは必ず移ろい、変わっていくものという、「人の生活」に見られるあいまいな点を強調するために「つかみ所のない『心』というタイトルを全面に持ってきた」のではないでしょうか。


↓参考書籍↓
『夏目漱石『こころ』をどう読むか』

編者:石原千秋
出版社:河出書房新社
発売日:2014年5月20日

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『こころ』を考察、解説

本作の集大成的な巻である「下」より最も重要であり難解な箇所を3点取り上げ、その箇所と前後の文章から簡潔に考察し、『こころ』がどのような作品であったのかを解説します。


ポイント(1)

「Kが理想と現実の間に彷徨してふらふらしているのを発見した私は、ただ一打で彼を倒す事ができるだろうという点にばかり眼を着けました。 」

→Kの理想はお嬢さんと一緒になること。
この箇所のあとでKにより告白された「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」というセリフは、「自分の本能から生まれた希望に向かって努力しない者は駄目だ」とも受け取れる。

つまり、「自分が素直に欲したものを素直に手に入れようとしない人間は駄目だ」ということ。

この場合の「素直に欲したもの」とは「お嬢さん」、「素直に手に入れようとしない人間」は「先生」となる、Kによる遠まわしの「先生」への皮肉と取れる。

ポイント(2)

「私にはKがその刹那、居直り強盗のごとく感ぜられたのです。」

→居直り強盗とはそもそも、自分の悪事を無視して開き直った強盗のこと。
この場合は、「先生」と「静」の間に割り込んできてまるで我が物顔してKが「静」を奪い取ろうとする行為の形容とも取れる。
これも先述の「素直に欲するものを素直に手に入れようとすること」に通じる、ある見方からすれば純粋な行為に見て取れる。

ポイント(3)

「私の自然を損なったためか、または私がまだ人慣れなかったためか、私は始めてそこのお嬢さんに会った時、へどもどした挨拶をしました。その代りお嬢さんの方でも赤い顔をしました。 」

→先生の「お嬢さん」に対する奥手の様子の一片。
この「へどもど」を先生はKが「静(お嬢さん)」に近寄るまで、ずっと続けていきます。

「私の自然」とはこの場合、先生にとっての素直な行為であって、決してKを自殺に追いやるような悪意に満ちたものではない。
結果的にKは死んだのであり、そのKの自殺は先生の手から離れた「Kの素直な心の移り変わり(思い)によりなされた行為」であった。


この3点から考えられることはまず、終始、本作『こころ』のストーリーが「人の心の移り変わり」により描写されたものということです。
「私」は「上」と「中」の2巻で「先生」との思い出や回想から自分の心情を具に描写しつつ、はじめに感じたことと終わりに感じたこととの差に大きな違いを見ています。

その後、「下」で語られる「先生」「静」「K」との関係描写をリアルタイムで綴る中で、各登場人物の心理的描写を伝える間に、やはりそれぞれの心情の移り変わりを如実に表しています。

この中で「静」ことお嬢さんの気持ち・心情だけが、唯一、あまりピックアップされません。
これは恐らく著者自身が、男性の心理描写を女性を真ん中に立てることで男性心理の移り変わりをさらに詳細に描けると踏んだことと、本作のストーリー設定上「女性の心理」を描くよりも「男性の心理」を描く方が「人間の心理描写、つまり心の動き」をより鮮明に導き出せると信じたからでしょうか。

各登場人物はそれぞれが、自分の「素直な感情」にもとづいて行動しています。
「私」は「先生」に半生を語られるのを聞くまま随時に感情を揺さぶり、その都度、自分の心の赴くままに人への思いを告白しています。

「先生」は自分の性格にもとづくままに「奥手の自分」と「嫉妬に狂う自分」とを素直に使い分け、結果的に「お嬢さん」を自分の妻として迎え入れます。

「K」は自分の素直な感情を「お嬢さん」に伝えようと近づき、「先生」をそっちのけにする形で恋を射止めようとします。
ですが結局Kは「お嬢さん」に受け入れられず、そのまま自殺を選ぶというこれまた素直な感情にもとづき行動します。

皆、自分の心が向かう「素直な思い」の下に行動し、ストーリー上であげられているのはその経過と結果だけです。

しかし本作の「すごみ」は、この人の心がなさせる「素直な行動」の移り変わりにあります。
いえば「皆、自分の素直な思いのままで行動している」ので、誰も責めることができないのです。

Kが死んだのは確かに「先生が『静』を再び奪い取ったから」という見方もできますが、決して先生が直接的にKを死なせたわけでありません。
いえばKは、自分の意思にもとづいて自殺したわけです。

そもそも「静」は先生を元から愛していたわけで、先生はその「静」の気持ちに自分のペースに従って応えたに過ぎません。
つまり人の心の動きによりストーリーが進み、心の動きにより物語の初めと終わりが完結している点です。

心というものは誰にでもあり、一分一秒で移ろい変わり、そしてその心は人に見えません。
その見えない闇の部分で人はいろいろと画策し、人に言えないような自己中心的で残酷な企図を持つものです。

この『こころ』という作品は、この「普段なら見えない心の闇の部分を全面に押し出し、そしてその移ろいにより変わる人の裏表のすべてを写実したもの」といえるでしょうか。
つまり本作は「人の本性を暴露した小説」といえるでしょう。

結論として『こころ』という小説は、心を持って生きる人間そのものを表現した作品、といえるでしょう。

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『こころ』書評

【評価:4.0】

恋愛譚を綴る作品はたいていそうですが、登場人物はその心理の動きをはじめ、そこから展開される経過によって、「良い人」「悪い人」という印象を持たされます。

この『こころ』も一見「三角関係」だけの描写に見えますが、その実、人の善悪というのは心の動きによって表裏のように翻されるという、他の作品ではあまり見られないリアルタイムの描写が全面に来ています。
この「リアルタイムの表現」を支えているものが、「心の動き」です。

人の「心の動き」をここまで徹底して描いた作品はなかなか無いと思われ、終始一貫、「変動する人の心をそれでも追って描き続けた」という難解に配慮した上で、4.0の高評価にさせて頂きました。

ただ心というのは主観で変わるので、書き手・読み手によって価値観や認識のズレが窺われ、その点ではエゴに沿って「どうにでも書ける」というたやすさもあると思われる減点もあります。

まとめ&感想

夏目漱石『こころ』はズバリ言って「人間」を書いています。
それも日常風景に見られる平然とした情景です。

誰もが納得すると思いますが「三角関係」なんてどこにでもあるもので、特別変わったテーマではありません。
この「日常の風景」にこそ、本作が主張する「人間の奥行き」があるのでしょう。

「人は皆エゴで生きている」と言ってしまえばそれも普通に認められることかも知れなく、ただ道徳や理性という歯止めによって正義が謳われ、人の本来あるべき姿というのが見えてきます。
その一見決まった「理想的な人間のあり方」に真っ向から突き向かった作品が本作『こころ』ではないでしょうか?

その辺りを徹底して暴き出した(炙り出した)ような本作『こころ』は、やはり「人間」を描き続ける漱石の作品のうちでも秀逸の一作と言ってよいでしょう。


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