愛を乞うひと、原作のあらすじと感想を語る!母から娘の凄絶虐待地獄絵図

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「愛を乞うひと」が篠原涼子主演でドラマ化されるにあたり、原作のあらすじと感想を語ってみたいと思います。

妻と離婚後、男手ひとつで育ててくれた、台湾人の優しいパパに先立たれた幼い「私」は施設から、いきなり、パパが別れた妻、つまり実母にお引き取りされます。

本来、施設の子どもたちにとって、お引き取りはとても羨ましい憧れの儀式。
でも、このヒロインには、それはそれは筆舌に尽くしがたい、おっそろしい壮絶な虐待地獄の幕開けでした!
こわこわ!鬼女だ鬼女だ!と思って読んだ次第です。

「愛を乞うひと」母から逃げて平和に暮らしてた主人公は…

主人公が現在、娘と二人暮らし。
そこに、長く離れて暮らしていた、どこでどうしているか分からなかった実の弟が警察に捕まってますから、身元引受人になって下さいね、と連絡が来る、それがきっかけで、逃げ延びていた鬼の実母との過去と、再び向き合うことになるんですね。

弟も、とうに母のもとを離れてます。

主人公は弟には悪意はない、憎悪もない、でも母に関わる全てから逃げてるから、あんまり関わりたくないです。
でも、娘は、今まで聞いたことがなかった自分の母親である主人公の成育歴を知りたい。なんで弟と縁を切ってたのか、自分の祖母に当たる人が、母に何をしたのか。

主人公は、幼い頃に亡くした優しい父の遺骨が見つからないことをきっかけに、過去の壮絶な地獄体験と向き合います。

ま、最近ではね、実母による乳幼児の虐待死とかザラですよね。
でも、自我がある子、それが成長して就職するまで続く、これが怖いですよ。

男と暮らして子どもを作ってた母の理不尽攻撃

母は、男と再婚してます。
いわば、あたらしい「オトウサン」です。
弟もいます。

最初から虐待を受けたわけではないんですが、ある夜、友だちとお祭りに行きたいと母に言う、それを母も、夕飯食べてから行きなさい、と普通に承知します。

なのに、友だちが誘いに来ても、お小遣いくれません。
お祭りに行っても、なんにも買えないですよね。
これが、気付いてなかったのか、わざとなのか、そりゃどうでもいいです。

が、いつまでも娘、つまり主人公がお祭りに行かないでぐずぐず自分の側にいることで、母のスイッチが入った!
すんごい猛々しい口調になって、殴り飛ばす蹴り飛ばす!
友だちフリーズですよ。

目の前で、同級生が、女親にふっ飛ばされるなんて光景、いきなり見せられたら、そりゃビビります。

それからは、もう何が気に入らないとか、全然わからない、とにかく弟は何もされないのに、主人公だけが理不尽な暴力にさらされるわけです。

もうね、本のこっちから手突っ込んで助けてやりたい衝動でいっぱいになるんです!

母の暴力を受けながら、主人公が死んだ父に、「呑気に死んでないで助けてよーっ!」と心の中で叫ぶ場面がありますが、そうだよなー、と思います。

なんで、こんな女を選んだんだ、父親!
で、娘を残して死んじゃうなら、養女にでも出せばよかったのに!

男をとっかえる母 「オトウサン」は新しい「オトウサン」に

ある日いきなり、母は現「オトウサン」を捨てます。
いない間に、主人公と弟を連れて、引っ越し、新しい男のもとで暮らし始める。

この義父は、最初、母の虐待を咎めるんです。
女の子になんてことするんだ、恐ろしい、と主人公を守ってくれる。

だから主人公には地獄の中の光明で、義父を大好きになる。
でも、義父は若くて魅力的な妻に面倒見てもらわなきゃいけない、その負い目から、すぐ見て見ぬふりをしちゃうので、主人公には結局味方はいなくなってしまうんです。

この時期って、児童相談所とか、どういう仕組みになってたのかな?と読みながらチラホラと疑問に思いました。

虐待防止法は平成12年からだから、ちゃんとした制度としては最近としても、子どもを守る、近所の人が何とか助けてやる手だてってないのかな?
「親の躾」で」虐待がまかり通っていた悪しき時代が長く続いてたから、そういうもんかなあ…。

妻の暴力には見て見ぬふりをしても、この義父は悪い人ではなく、主人公が卒業を迎えるときに、就職活動に入る、それに対して、「決まらなかったらおとうさんに言いなさい」とコネだか伝手だかを利用して手伝ってあげる、のニュアンスで相談に乗ってます。

自分を「おとうさん」と言うあたりも、義理でも連れ子の父親で、責任を持ってやろうという思いやりはある人だろうな、というホッとした温かさは、ここで感じる、だからこそ、何でこの人、こんな冷酷無比なオンナと暮らさなきゃいけないんだろうなー、もっと普通の生活を営める結婚できたんじゃないの?という疑問がすごかったです。

主人公の就職、そして母からの逃亡、「大人は優しい」

主人公の就活は、波乱万丈。
戸籍を提出して、家族構成を説明すると、面接担当者が、変な顔して驚くんですよね。

この意味は分からないまでも、とにかく主人公は、母が再婚しまくって、親が義父で弟も父親が違うから戸籍が汚れてるんだ、と母を心の中で責め、やっと見つけた就職先は、志望動機で、「戸籍(提出)いらないからです」
と言ったことを大笑いした社長の会社でした。

私服もなくて、制服で出勤し続け、真面目に働く素直な主人公は、社内で可愛がられます。
だから主人公は、初めて世間を知ります。

「世の中の大人は優しい」

鬼母しか大人知りませんもんね。
優しいパパの記憶は幼すぎて薄いし。

母のもとから逃げるには、お給料貯めて家借りるしかない。
お昼もケチって、制服で仕事を続け、やっと初任給…となると、母が半分取ってしまう。
家に入れるという一般常識に無知だった主人公が友だちに訊くと、まあ、様々ですが、半分入れるというのは、やっぱり多すぎ。

だから、家を出る予定日は計算が狂ったけど、ようやくこれで、という額が貯まった給料日に帰宅するなり、母からいきなり暴力を受け、主人公はそのまま家から逃げ出します。

翌日出勤してる主人公に、
「社長に言って辞めさせてやる!」
と母からの電話。

なんで、そこまで娘を思い通りにしたいんかわからん。
娘が憎いなら出ていかせればいいじゃん?手元に置いてうっぷん晴らしに暴力振るう、そのために出ていかせたくない、それだけ?

だけど、やっぱり「大人は優しい」んです。

社長は、本人が辞めたくないなら、誰が何と言ってきても辞めさせないよ、と普通に言ってくれる。
主人公はそれきり、母と会わず、逃げ切ったわけです。
万歳ですね。

娘と始めた亡き父の遺骨探しは難航

亡くなった大好きな父の遺骨だけは探したいのに、全然見つからない。
役所を歩き回って調べ、死亡診断書とか戸籍とか…そして驚愕の事実、父には戸籍がない!

簡単なことでした。
父は台湾人ですから、日本の戸籍がない、ま、外国人として登録されてます。

役所で全てを半泣きで探し、閉庁間近の窓口職員が一斉に動き出す場面は、もうね、胸の奥から何かが強くこみ上げてくる、強すぎる感動ですよ。
動き出した!来た来た来た!という感動!

そう、ここでも大人は優しいんです。って、主人公も高校生の娘の母で、大人ですけど。
いわば、人は優しい、ですね。

父の遺骨の安置場所を見つけてくれた役所の人の
「あるってー!」
という大声と、その場にいた職員の祝福の声に、もう涙ボロボロです!
人ってなんて優しいんだろ!と思っちゃうんです。
あんな鬼母に地獄を見せられた分、帳尻を合わせてもらったと思うんですよ。

母のその後 愛する気持ちを求める主人公

娘は、祖母である母の居所を主人公に教えました。
彼女は彼女で、ひとりぼっちで可哀そうな気がする、と。
自業自得な生き方をしたと思うんですけどねー。
普通なら絶対許せないし、顔も見たくない、存在してることさえ認めたくないですよね。

でも、主人公は、会いに行きます。
会いに…うーん、ラストではちゃんと会った描写がありません。
ただ、夢で母の介護をしながら母をぶっている、それを思い浮かべてます。
人を愛する気持ちを知れ、それまでは死なせない、と繰り返している主人公は、自分を愛乞食だった、と娘に話してます。

あんな母にでも愛してほしかったんですね。虐待の恐ろしさがテーマじゃないんです。
いつも、愛してほしいと思ってたんですよ。
こういうストーリー、琴線に触れませんか?

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