宮沢賢治『注文の多い料理店』あらすじをどう解釈?感想&解説!

宮沢賢治 注文の多い料理店

宮沢賢治の『注文の多い料理店』は、大正13年に、盛岡市の杜陵出版部と東京光原社を発売元として1000部が自費出版同様に出版された。
宮沢賢治の生前に出版された唯一のものであり、童話としても『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』などとともに賢治の代表作として知られる。

今回は、『注文の多い料理店』のあらすじから結末を解説し、「本作が持つ恐怖はどこからくるのか?」について紐解きます。

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『注文の多い料理店』作品詳細

著者:宮沢賢治
出版社:講談社
発売日:2008年10月16日

概要

本書の出版は賢治のほか、発行人となっている近森、および近森の出版業を手伝っていた及川四郎(近森とは盛岡高等農林で同窓)の3人で進められた。
出版されてからこれまで、何度も派生作品が生まれており、映画化からテレビ化、また紙芝居やCD・DVD収録作品まで、数多のオマージュ・スピンオフ作品がある。

映画化からテレビ作品までの略歴

―映画作品―
●『注文の多い料理店』(人形アニメーション、昭和33年)
製作:学研人形部/人形操作:高山良策
●『注文の多い料理店』(台詞無しのアニメーション、平成5年)
製作:桜映画社、エコー社/監督:岡本忠成(完成前に没)/監修:川本喜八郎
●「注文の多い料理店」(オムニバス映画『BUNGO〜ささやかな欲望〜』の一篇、平成24年)
登場人物や設定は大きくアレンジされている。

―テレビ作品―
平成2年12月10日、テレビ東京「月曜・女のサスペンス」の「文豪シリーズ」の一編として放映された。登場人物や設定などはかなり変更されている。
・製作:テレビ東京、出海企画
・脚本:吉田秀穂/監督:下村優/音楽:野田晴彦/助監督:辻野正人
・キャスト:岡田奈々、西岡徳馬、鶴見辰吾、北見敏之、駒塚由衣 ほか

引用元:wikipedia

『注文の多い料理店』の主な登場人物の名前一覧

●青年紳士A
イギリス紳士風の身なりで猟銃を携え、山奥に狩猟に来ている。
純朴で誠実な心の持ち主で、人の言うことなら何でも聞いてしまう素直な青年。

●青年紳士B
青年紳士Aと同じく、イギリス紳士風の身なりで猟銃を携え、山奥に狩猟に来ている。
性格も青年紳士Aとほぼ一緒で、二人はいつでもともに行動をする。少し臆病。

●猟犬2匹
ストーリーの冒頭に登場するが、不思議と途中からその姿を消してしまう。
ラストシーンでは重要なキーパーソンに。

●山猫
「RESTAURANT 西洋料理店 WILDCAT HOUSE」と看板を掲げた料理店を経営している。
はじめ青年2人を快く店に迎え入れるが、だんだん奇妙な行動に移り始める。
料理店に入った青年2人に、料理を作るにあたっていろいろな注文をしてくる。


↓参考書籍↓

1『版画絵本宮沢賢治 注文の多い料理店』

著者:宮沢賢治他
出版社:子どもの未来社
発売日:2010年3月3日

2『宮沢賢治の世界 注文の多い料理店と風の又三郎』

著者:如月翔悟
フォーマット:Kindle版

【簡単】3分でわかる『注文の多い料理店』のあらすじ

紳士風の青年がある日、狩猟をしに、とある山奥に猟犬2匹を連れて入っていった。
けれど獲物がとれず、猟犬2匹を連れて右往左往しているうちに、山奥には場違いな身なりの西洋料理店にたどり着く。

店先には看板が掲げられてあり、その看板には店の案内が書かれていた。
お腹を空かせた青年2人は案内通りに店へ入っていく。

すると、店奥からいろいろな注文をする声が聞こえてきた。
2人は注文通りにしていくが、その注文は段々「自分たちが料理されるための注文」へと変わっていく。
そして気づいたときには、2人を食べようとしていた山猫の正体が店奥から暴露される。


↓参考書籍↓

1『宮沢賢治童話全集 新装版(4) 注文の多い料理店』

著者:宮沢賢治
編集:宮沢清六他
出版社:岩崎書店
発売日:2016年10月6日

2『清水正・宮沢賢治論全集 童話集「注文の多い料理店」を読む』

著者:清水正
出版社:D文学研究会
発売日:2007年1月

3『「注文の多い料理店」研究〈1〉』

著者:続橋達雄
出版社:學藝書林
発売日:1989年8月

『注文の多い料理店』の結末(ラストシーン)

青年紳士2人は最初から店主の言うことをよく聞き、信じ、およそラストシーン手前まで注文を聞き入れますが、途中で「おかしいぜ」とその注文の奇妙さに気づき、その店から逃げ出そうとします。
けれど、2人がいる部屋のドアは開かなくなっており、2人はそこから逃げ出せません。

そして店奥にいた化け物にあわや食べられそうになった瞬間、それまではぐれていた猟犬2匹が勢いよく店の中へ飛び込んできて、そのままドアを蹴破り、店の内外の空間をつなげて2人を助け出します。

そして青年2人は山から東京へ帰り、日常の生活に戻ろうとします。
ですが、あのレストランでの恐怖が忘れられず、恐怖にひきつった2人の顔は元通りにはなりませんでした。

【考察・解説】本作が持つ恐怖はどこからくるのか?

本作はホラー的要素やサスペンス要素を兼ね揃えていると言われていて、その恐怖とスリルはじわじわとくる、サイコチックなものに窺えます。
『注文の多い料理店』の本文からいくつかのセンテンスを抜粋し、本作が表す恐怖の出どころを探ってみます。

●玄関には RESTAURANT 西洋料理店 WILDCAT HOUSE 山猫軒

はじめにこの看板が出てきます。
これがいわゆる伏線です。
この出だしから、恐怖の館への案内が始まります。

●君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか。

看板を見て、2人の青年は素直にレストランへ入ります。

●どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。

2人のお客への、店主の快い案内の声が続きます。
これは日常で見られるお客と店主のやり取りと何ら変わりません。
むしろかなり親切な案内です。

●君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。

日常のやり取りから、青年は素直に「自分たちが歓迎されている!」と思い込みます。
これも自然の成り行き。

●作法の厳しい家だ。きっとよほど偉い人たちが、たびたび来るんだ。

お客である2人の青年は、自然のやり取りの中でいろんな空想をします。
これも日常的な光景と言ってよいでしょう。

●鉄砲と弾丸(たま)をここへ置いてください。

店の案内で、急に変な案内をされます。
ここでちょっと急な展開です。
でも少し考えればこれも自然の流れといえばそうなるでしょうか。

●どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。

丁寧で快かった案内が、少し厚かましく、奇妙になってきます。
加えてお客の自由も、やや規制されかけています。

●クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか。

厚かましい案内が、より厚かましくなってきて、気づけば「かなり変な注文」になっています。
自然の流れから、いつのまにか奇妙な流れに変わっています。

●ここの主人はじつに用意周到だね。

お客である2人の青年は、未だに店主の言うことを信じ込んでいます。
つまり店主は、疑いを持たせない流れで案内したわけです。
注文があからさまに変なら、2人はそこで逃げたかも知れません。

●料理はもうすぐできます。十五分とお待たせはいたしません。すぐたべられます。

自然の流れにも奇妙な流れにも、どちらにでもとれる案内です。
この曖昧さがまたスリルを引き立てます。

●早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。

注文の調子が次第に命令口調に変わってきました。
なにか、お客は「逃げられない雰囲気」のようなものを味わわされます。

●いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。

店主からきわめつけの最後の案内。
これまで口うるさく言ってきた注文の総仕上げといったところでしょうか。

●「どうもおかしいぜ。」「ぼくもおかしいとおもう。」

初めて2人は疑いをあからさまにします。
店主に疑っているのがバレてもいいといった調子です。
ここでストーリー展開は完全に「おかしさ」を露呈し、それまでの真面目な注文の積み重ねをひっくり返しています。
ストーリーのオチへの伏線といってよいでしょうか。

●「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。

これまで自分たちにされた注文は、自分たちが食べる料理への注文ではなく、自分たちが食べられるための注文だという事実を知って、2人は途端に震え出します。
このストーリーのオチ、あるいは物語の終着点と言ってよいでしょうか。

●それともサラドはお嫌いですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。

恐怖の親玉である店主が、両手を大きく広げて待ち構えています。
いわば恐怖の正体が思い切り暴露された瞬間です。

●早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。

一歩間違えれば死ぬ、そんな状態でしょうか。
死の恐怖が、もうそこまできています。
食われるという「想像を絶する恐怖と苦痛」が、もう目の前にいます。

ここまでを見て言えることは、「恐怖の正体」とは、自然の流れの変調にあると解釈できます。
そしてその変調から、一気に恐怖が姿を現すところにあります。

無理のなかった「自然な展開」から、気づけば「恐怖につながる変な展開」にいつのまにかなってしまっているところに、この恐怖への引き金が隠れています。

そしてこの恐怖を引き立てる重要な要素が、立場の逆転が使用されている点にあります。
料理を食べるはずのお客が、いつのまにか自分が料理にされて食べられる立場へ変わっています。

つまり本作『注文の多い料理店』の恐怖とは、

自然で無理のない流れがいつのまにか奇妙な流れに導かれ、その変調は立場の逆転を引き起こして致命的な恐怖を表している点からきている

と解釈できるでしょう。


↓参考書籍↓

1『注文の多い料理店』

著者:宮沢賢治
出版社:新潮社
発売日:1990年5月29日

2『まんがで読む世界の名作オペラ10 注文の多い料理店 黒船 夕鶴』

著者:梅本さちお
出版社:メトロポリタンプレス
発売日:2012年2月25日

『注文の多い料理店』書評

【評価:4.5】

ストーリーはみやすく、スリルもそれなりにあり、最後まで退屈せずに読了できると思います。
まずオチが「面白い」という点で高評価です。
ショートショートに近い短編なのもよい。

恐怖やサスペンスへの誘因もしつこすぎず、かと言ってインパクトが足りなくもなく、適度な調子で展開を追わせます。
「オチが読めるけど面白い」と言わせる本作は、作品としてはかなりの出来栄えと言えそうです。

減点は、少しショートショートすぎて、結末部の奥行きが物足りないところかも知れません。

まとめ&感想

私は小学校のときに本作を読みましたが、小学生時分にもその面白さを堪能できました。
つまり、それだけ「わかりやすい感動がある」ということ。

普通に読んで面白く、また精読すると「解決のつかない疑問」が残ります。
はぐれていた犬は、なぜ、どうやって、2人の窮地に間に合う形で現れたのでしょうか?

一説には、「レストランでの恐怖の出来ごとから犬が現れる場面まで、奇妙で夢のような出来ごとは延長してつながっている」と見る視点があるらしいですが、きちんと読んでみると、この辺りがよく理解できません。

「童話だから、小説だから、何でもアリ」とすればそれまでですが、まともに本作への理解を得る場合、冒頭から結末までの展開に「疑問」という形で奥行きは残ります。


↓さらなるおすすめ書籍↓

1『脳を鍛える大人の名作読本 (3) 鼻・注文の多い料理店』

監修:川島隆太
出版社:くもん出版
発売日:2004年6月

2『「注文の多い料理店」伝』

著者:高橋康雄
出版社:春秋社
発売日:1996年7月

3『齋藤孝のイッキによめる! 小学生のための宮沢賢治 新装版』

編集:齋藤孝
出版社:講談社
発売日:2016年7月1日

4『新書で入門 宮沢賢治のちから』

著者:山下聖美
出版社:新潮社
発売日:2008年9月1日


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