浅田次郎の小説「輪違屋糸里(わちがいやいとさと)」は、京都島原の天神糸里が主人公の幕末の新選組物時代小説です。
主に、女性達の生き様とともに、新選組初期に起きた芹沢鴨暗殺の裏面を描いた作品として人気で、上戸彩主演でテレビドラマにもなりました。
ここでは、原作小説「輪違屋糸里」のネタバレを含みながら、あらすじと感想を語っていきます!
輪違屋糸里(わちがいやいとさと)作品詳細
概要
新撰組については数々の作家が作品を書いていますが、小説輪違屋糸里は新撰組の面々と、関係にある女性達の生き様と、芹沢鴨暗殺の裏面を描き出した作品です。
略歴
2004年5月文芸春秋社刊単行本
2007年3月10日 第1刷 文春文庫
<女たちの新撰組>
TVドラマ2007年 上戸彩主演でTBS系にて放映
2017年冬 <京女たちの幕末>タイトル名で映画化
「輪違屋糸里」の主な登場人物の名前一覧
糸里:島原 輪違屋の芸妓
音羽:輪違屋の太夫
吉栄:島原 桔梗屋の芸妓
太兵衛:西陣の太物問屋菱屋の4代目
お梅:太兵衛の妾、芹沢鴨の愛人
八木源之亟:新選組の屯所八木家の主
おまさ:源之亟の妻
お勝:八木家の分家で前川家の女房、実家は菱屋で太兵衛は実の弟
芹沢鴨:新選組筆頭局長
近藤勇:新選組局長
土方歳三:新選組副長
平山五郎:芹沢派の隊士
平間重助:芹沢派の隊士(勘定方)
近藤派隊士:山南敬助、沖田荘総司、永倉新八、斎藤一、井上源三郎他
※島原:京都にある花外街
※輪違屋:今でも現存営業をしているお茶屋、創業1688年
輪違屋糸里 あらすじ
いと(糸里)が母親に死に分かれ、女衒に買われて京に上り輪違屋連れて来られたのは6歳の時だった。
島原で芸妓名がいる「いと」は、おかあちゃんから貰った名前だけは変えたくないと輪違屋の女将言い張る、それから糸里と呼ばれるようになった。
時が経ち、糸里は太夫につぐ天神になっていた。
輪違屋の太夫音羽は島原一の太夫だが、自分の後継者は糸里しかいないと可愛がる。
音羽太夫惨殺
ある日突然、音羽太夫が揚屋の前で切り捨てられた、門口に運び込まれた音羽は袈裟がけに切られ血に染まっていた。
糸里は、血に染まり変わり果てた音羽の顔を抱いた。
音羽は、かすかな声で、(いと、恨むのやない、だあれも恨むやない、御恩だけ胸に刻め、わてと約束しいや)音羽は見まみれの指を糸里の指に絡ませて息絶えた。
新撰組局長の芹沢鴨の暴挙に同行していた隊士の平間は慌てふためいた。
そこに土方歳三が表れ事態を収拾した、全ては新選組に非難が集まるのを避ける為である。
糸里は、かねてから土方歳三を憎からず思っていた間柄であるが、土方歳三の余りにも音羽の死を蔑ろにする振舞いに糸里は土方の手を叩いた。
音羽の臨終の声、恩を胸に刻め、の声が蘇った、
糸里が恩を蒙った人は姉とも慕う音羽だけだった。
芹沢鴨は日頃からの非道の振舞いに怨嗟の声が巷から多々あったが、音羽惨殺の件も有耶無耶となってしまった。
新撰組
新撰組は壬生の郷士八木家と前川家を隊の屯所としており、壬生浪士隊と呼ばれた頃から居座られていた、八木家の女房おまさ、と前川家の女房お勝は迷惑していたが、普段の浪氏達は意外に礼儀正しく親切で、芹沢鴨も素面の時は折り目正しい武士であった。
芹沢鴨の愛人、お梅は最初から愛人ではなく、呉服商菱屋太兵衛の妾であった。
無能の正妻を追い出し、自分で店の切り盛りをしいく育ちは悪いが出来る女だった、遊び人の亭主太兵衛は江戸から一緒に京都迄来た当初は太兵衛に愛情も湧かなかったが徐々に太兵衛に愛情を感じていく。
新撰組屯所に呉服の掛け売りの集金に行って芹沢鴨に手籠めにされ、それ以来の、腐れ縁と言うか、身寄りの無い、お梅を芹沢鴨は以外にも優しく大事にしてくれる男だった。
桔梗屋の天神吉栄は、糸里の島原での数少ない友人の一人で、新撰組隊士芹沢鴨の腹心平山五郎と恋仲で吉栄のお腹には平山の子を宿していた。
平山は吉栄を身受けしたいと考えたが、吉栄は莫大の身受け金が掛り平山に出来るわけもない事も承知していたが、平山と所帯を持つ事を夢みてた。
糸里は音羽の件があっても、土方歳三は下手人でもないし憎む気持ちもなく、土方と逢引を重ねていたが、土方は糸里を子供扱いしていて、男と女の仲にはなっていなかった。
糸里は周囲には隠していたが近眼のようで、ある日土方は糸里を伴って眼医者にいって眼鏡を作らせる。
土方は糸里を妹のように思っていた。
壬生浪士隊は新撰組となり、京都守護職会津肥後守(松平容保)のお預かりの身分になる。
[ad#ad-1]芹沢鴨暗殺事件
芹沢鴨等はある日、生糸問屋大和屋を焼き討ちする暴虐舞人振舞いを働いた、同じ日に近藤勇や土方歳三は壬生で相撲興行を開いており、これが気に入らない芹沢鴨の意趣返しである。
御所近くの大和屋は、燃え京は騒然となる京都守護職松平容保は現場に駆けつけて激怒する。
火事を近くで見物していた、お梅は、これで芹沢鴨もただではすまない筈と思う。
数日後、近藤勇、土方歳三らの近藤派の幹部が松平容保に呼ばれた。
輪違屋で隠れて裃に着替える近藤らを、糸里は怪訝な気持ちで見ていた。
芹沢鴨暗殺の日が来た。
同日、近藤勇は芹沢鴨と連れ立って島原で飲んで帰りに八木家で飲みなおしの手筈となる、新撰組発足当時からの頭であり、別格の人である近藤勇の手を汚すわけにはいかないので、実行は、沖田、土方、山南、井上、原田、藤堂の6人で打ち込みする。
全てのお膳立ては土方歳三の策略である。
土方は、可愛がっている糸里を説き伏せて、芹沢鴨の酒に痺れ薬を仕込ませる。
八木家に帰っての飲みなおしの酒席では吉栄が企みに慄き動けないので糸里は一人で酒席で酌をして回る。
芹沢鴨は泥酔しているところに、お梅が表れる。
打ち込みした6人は芹沢鴨、平山惨殺、一緒にいた、お梅も刺殺する。
糸里も吉栄もその場に居て、土方は二人も切り捨てようとするが、糸里の鋭い口調で、百姓で終わるのか侍になるのか、の言葉を投げつける。
糸里の気迫に押された土方他の隊士は、そのまま糸里と吉栄を置いて立ち去る。
その後、芹沢鴨等の弔いを終えた数日後、京都守護職松平容保の御前に近藤勇以下役付け一同と輪違屋の糸里は召された。
守護職の屋敷の大広間で、土方歳三と同列に並び、松平容保侯お言葉を頂く、
その席上、糸里は吉栄とお腹の子に対する扱いえお良しなにとお願いする。
松平容保が土方と糸里の関係を問うと、糸里は歌をもって松平容保に返答する。<<君がため 惜しからざらむ身なれども 咲くが誉や 五位の桜木>>
短冊を受け取った容保は、糸里に対して、花のある名前、桜木太夫と名乗るよう伝える。
土方は芹沢鴨等暗殺の一連の騒動に責任を痛感して、糸里に夫婦になってくれと、と頼むが糸里は自分の道を行くから、土方も侍の道に邁進して、と断る。
輪違屋糸里を読んでの感想
幕末の京都は開国を目前にして、武家社会の衰退期にあり、武士としての線引きが曖昧になってきた。
近藤勇や土方歳三等試衛館道場のメンバーは、所謂本物の武家ではなく、サムライになりたい者や生家に居れない者の集団。
芹沢鴨は水戸藩の郷士や脱藩者だが本物の武士集団。
いずれにしろ各々目的は何か確たるものを求めたりしていたが、取り敢えず尊王攘夷を標榜して、芹沢鴨、近藤勇、の基にスタートしたのが新撰組。
武士になりたい者、武士でありたい者、の集団。
島原天神の糸里や吉栄も、お梅、おまさ、お勝、等女性も置かれている環境や立場は違うが自分の生い立ちに縛られていく人生を送っていく。
この物語は、「武士と武士になりたい者の対決」
言ってみれば、旧い体制が崩れ新しい体制になる前触れとも取れる。
男の打算と女の真っ当な心の対決。
しかし、この世は男と女しかいない。
芹沢鴨暗殺の段取り等の場面は、沖田総司の言葉として語っている。
隊士の各々の立場を他の隊士がそれぞれ語っている。
永倉新八と斎藤一の一触即発の場面は、リアルで漲る緊迫感がある。
浅田次郎氏の輪違屋糸里は、過去の新撰組を題材にした作品と趣が異なり、人間の心の葛藤や欲望、男女の愛憎等を余すところなく描写されている、何回読んでも女の凄さに男は敵わない!
映画にするなら、糸里だけでなく、出て来る女性一人一人で物語が出来そうな秀逸の作品です。
読まなければ損。
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