谷崎潤一郎のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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谷崎潤一郎のおすすめ小説ランキング:第10位~第4位

10位 瘋癲老人日記

出版社:新潮社
発売日:1968年10月29日

『中央公論』(昭和36年)に初出が掲載された半ば人情ドラマの仕上がりで、77歳の老人の男が歌舞伎を楽しむところからストーリーが始まる長編ドラマ。
フェティシズムやマゾヒズムが内容に加味された、偏愛のあり方が秀逸です。

【あらすじ】
卯木督助(77歳)はある日にふと歌舞伎を見たくなり、そこで得られた作風の妙味に「人間の本能が見せる性的魅力」を味わい、帰ってからも日々の悶々が浮き立っていく。
もともと督助は息子の妻である颯子に性的魅力を感じており、それへの興味がフェティシズムやマゾヒズムといった極端な愛憎を奏で始める。

平凡な老人と平凡な家庭の妻との日々の交流から、なぜか特異な世界が演出されていく谷崎特有の描写に「幾つかの感動の転機」のようなものが感じられるでしょう。

フェティシズムやマゾヒズムといった「人が共通して持つ性癖」を描くことにより、人の欲望が「ある目標」を定めて徘徊するその姿には「一種の論理」が際立つように窺えます。

谷崎文学に多く見られる「歴史的仮名遣いの駆使」から人情描写の移ろいが展開され、平凡が非凡に変遷していく「滑稽にも見える深い愛憎」の行方に、どうにも掴み取れない人間の姿が照り映えます。

日記仕立ての一作であり、表記はカタカナばかりの読みにくい体裁ですが、慣れていくと内容は掴みやすいかと思います。

その内容から非常に深みのある面白さが湧き立つことと思いますので、ぜひ谷崎に少しでも興味ある人には読んでもらいたい作品です。


9位 武州公秘話

出版社:中央公論新社
発売日:2005年5月25日

『新青年』(昭和6年)に初出が掲載された、戦国時代を舞台にした時代物語調の長編。
いわゆる女性崇拝を得手とした谷崎文学の脚色が冴えわたった、マゾヒズムを極限に再現した「空想的な官能仕立て」の特色を持つ。

【あらすじ】
時は戦国時代であり、主人公の武州公は幼少頃から「鼻のない顔」に異常な興奮を覚えるようになる。
戦(いくさ)が起きた跡に散らばる残骸や、刑場に晒された「鼻をそぎ落とされた首」などを見ると堪らなく興奮するようになり、そのマゾヒズムを表す性情は日常風景にも表れてくる。

「鼻がない顔」を持つ人にはある特異な性質が芽生え始め、それは「きちんと発音できないことによる、吃音を織り交ぜたような発音」であり、この異形をもじったような人の現れ方に、武州公は尋常ならぬ興奮を覚えてしまいます。
その興奮から官能が芽生え始め、その「個人的な架空を伴う官能の表れ方」が作中では異彩を放つ形で表現されます。

読んでいて『蓼食う虫』の人物描写や、また『痴人の愛』にも登場するサドとマゾとの境界を覗かされたようで、なんとも味わい深い「人の興味の移ろい」といったものを感じさせられました。

本作も挿絵付きで歴史的仮名遣いが散在しており、冒頭から漢文を置くなどした読みづらい作品に映るかも知れませんが、少し読み進めると平易な文章で終始が綴られてあり、内容把握には時間がかからないと思います。

谷崎の「時代小説もの」のうちではイチオシの一作であり、読了後には恐らく「もう一度読んでみよう」という特殊な興味を持たされることでしょう。
ぜひ読んでみて下さい。


8位 吉野葛(よしのくず)

出版社:新潮社
発売日:1951年8月14日

『中央公論』(昭和6年)に初出が掲載され、現代でも非常に多くの論評が寄せられる稀代の名作。
谷崎文学の純正の魅力が背景・人物描写に滞りなく発揮された、比類ない力作の中編小説。
「その一:自天王」「その二:妹背山」「その三:初音の鼓」「その四:狐噲」「その五:国栖」「その六:入の波」の全6章で綴られている。

【あらすじ】
主人公の「津村」は大和の吉野を過去に訪れ、そこで幼いときに他界した母の面影を追い求めていく。
父も同時期に亡くしているが津村は自分の母の面影・幻影しか追うことをしない。
そうしながら追想が段々現実へ返っていく頃、津村は自分を取り巻く自然のうちに恐ろしい神秘(あるいは不思議な感情)を発見していく。

構成や設定をはじめ人物・背景描写まで、非常にしっかりとした土台に据えられていますが、読んでいくと段々「神秘のベール」が1枚ずつ剥がされていくような、不思議な感想を覚えさせられます。

そしてその感想から主人公・津村に宿る特別な「官能への美意識」なるものに心を奪われ、その後の注目は恐らく「津村の母、あるいは津村が覚えた女性像」へと引き付けられるでしょうか。

この『吉野葛』に彩られた感情描写や幻想への脚色こそが、谷崎文学の至高の文芸を奏でているように思います。

「『吉野葛』を知らずして谷崎文学は語れない」とまで言わしめる本作を象る抜群の発想は、ストーリーの終始に脈打つ「幻想と官能の間で門雑する、人の極論的な美への探求」にあるのでしょうか。

本作は現代まで非常に多彩な論評・書評を交え、未だに論考が尽きない難解かつ興味深い作品です。

多少形容が折り重なる場面が連続する章もあり、少し読みづらいかも知れませんが、名作といわれる本作の妙味を少しでも多くの人に味わってほしいと思い、(この位置にとどめる形で)あげました。
谷崎作品のうちでも名作中の名作といわれた本作を、ぜひ読んでみて下さい。


7位 幇間(ぼうかん)

出版社:集英社
発売日:2010年9月17日

『スバル』(明治44年)に初出が掲載された、女性崇拝を美麗に謳った官能的な仕上がりで、男性・女性のあり方に脚色の骨子を織り交ぜた半ば「エログロナンセンス」の調子を併せ持つ。

【あらすじ】
主人公の「桜井」は主席で客の機嫌取りをする幇間(太鼓持ち)で、集った客の男女から一段立場を低く見積もられ、その延長で次第に可笑しがられる・馬鹿にされる対象に移り変わっていく。
その移り変わりに一種の恍惚にも似た快感を覚え始め、桜井はそうした集い客を眺めているうち、客の中の美しい女にマゾヒズムを秘めた恋情を抱いていく。

何気ない嗜好から段々深みにハマっていく男性の欲情から、谷崎文策に大きく彩られる「女性崇拝」の魅力がこの上なく発揮され、ある程度卑猥に映る「女性像」への歩み寄り方に「現代でも通用するのではないか?」と思わす男女模様が展開されます。

グループ交際で人づき合いの仕方が弱い、あるいは多勢の空気に身を任せることができないといった、どちらかといえば大人しい男性には、本作の深みが非常によく伝わるかも知れません。

本作もマゾヒズムを主軸に置きつつ半ば滑稽譚も用意された軽妙なストーリーですので、谷崎文学に少しでも興味がある・造詣がある人には読みやすい作品になるでしょう。

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6位 蘆刈(あしかり)

出版社:中央公論社
発売日:1985年9月10日

『改造』(昭和7年)に初出が発表された、「現在」と「過去」にまつわる脚本を二重構造で仕立てたやや「入れ子式」の中長編。

【あらすじ】
登場人物を「わたし」「愼之助」「お遊さま」「お静」の4人に固定し、その4人にまつわる生い立ちが、過去と現在とを隔てて1つのストーリーを綴っていく。
「わたし」は京都近郊の街並みを歩きながらうどん屋に入り、そこで「愼之助」と出会ったことをきっかけに、複雑に折り重なった特殊な過去が暴かれていく。

文体から描写は平易なものですが、内容には入れ子構造に見られる複雑さがあり、なかなか一読ではストーリーを掴みづらいかも知れません。
出来栄えとしては『細雪』や『異端者の悲しみ』などに見られた背景への脚色が目立つでしょうか。

私としては『細雪』に見られた人物描写と、その描写をしっかりと支えた美景の成果を思わされました。

各登場人物の1つ1つの表現に、この上ない谷崎文学の鬼才が漲っています。

谷崎作品に彩られた「至高の人間ドラマ」を見てみたいという人には、ぜひおすすめしたい一作です。


5位 蓼喰う虫

出版社:新潮社
発売日:1951年11月2日

「大阪毎日新聞」と「東京日日新聞」(昭和3年)に初出が掲載され、全14編からなる長編小説。
2つの家庭が交錯しながらドラマを織りなしていく、偏愛を基調にした盲目的なストーリー。

【あらすじ】
それまで一般的な夫婦であった要と美佐子は段々と関係が冷めていき、美佐子は不倫相手・阿曾に本格的な愛情を持ち始め、要は義父の愛人・お久に尋常ならぬ妄想と、妄想からなる愛情のようなものを持ち始める。
要はお久を「盲従的な存在」として惹かれていくが、美佐子と義父との禁制の交際から、理想とも悲惨とも映る夢遊の情景を実感していく。

本作はこれまでお伝えしてきた「女性崇拝」の像とは少し違い、男性が女性というものを盲従的に射止めていく悪辣な心理面の描写に依拠していて、その描写から繰り広げられる男女のあり方には、溺愛とも偏愛とも取れる異常な光景と情景が冴え渡ります。

『蓼食う虫』は谷崎作品のうちでも非常に有名な一作ですが、なかなかその内容を知らないという人も多いのが実際のようです。

谷崎文学の中で人間描写・関係描写がこれほど洗練されたものも珍しく、ぜひ多くの人に読んで頂きたい作品です。
本作を読んだあと『痴人の愛』も合わせて読むと、その内容に一層の深みが増すことと思います。


4位 人魚の嘆き

出版社:中央公論社
発売日:1978年3月10日

大正8年に春陽堂から刊行され、谷崎文学の初期に当たる「半ば屈曲したような人間像」を描き出した、異国の風景に彩られた美品。
水島爾保布が挿絵を描いている。

【あらすじ】
南京の良家に生まれた「貴公子」は、幼少時に亡くした両親の遺産を受け継ぎ、放蕩・無機な日々を送ったあげくに「異国の行商家」から「生け捕った人魚」の話を聞いてしまう。
貴公子はガラス細工のような水がめに生け捕られた人魚にすっかり心を奪われてしまい、ある非日常的な行動に走っていく…。

時間設定に「ただ昔である…」というようなレトロ調だけを写し出し、人と人魚の交流が幻想的に描き出されるその模様には、なかなか他の小説では見られない神話的な美調が冴えています。

本作も谷崎作品の中では珍しい、美景や輝かしい人体といったものに魅了される「男の従順」を描いた作品で、なかなか一読では終われない強靭な臭味が漂ってきます。

概略的には「神話・昔語り」といったレトロな響きが飛び交いますが、その骨子には「人の欲情」や「人の本能による正直さ」という人間臭さが横行しており、谷崎作品の中でも非常に読み応えのある作品の1つに数えられます。

いよいよベスト3です!


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