宮沢賢治のおすすめ小説ランキング:第3位~第1位
3位 革トランク
出版社:春陽堂書店
編集者:宮川健郎
発売日:2008年11月20日
『名作童話 宮沢賢治20選』において「毒もみの好きな署長さん」「雪度り」「谷」「やまなし」「氷河鼠の毛皮」「シグナルとシグナレス」「イギリス海岸」などと収録された、人間ドラマを主柱に置きながらも、やや幻想を含めた日記調の仕上がり。
【あらすじ】
斉藤平太という青年が農学校や工学校の入試を受けて失敗し、革製のトランクを片手に郊外から都会へ出て来、そこでさまざまな人間ドラマに遭遇していく。
そうしながら平太は成長していき、都会へ送り出してくれた田舎の村長と語らいながら、自分の苦境を飾った青春期を回想する。
人間ドラマに織り込められた人情のあり方や、1人の青年の成長記録の傍らでさまざまな世情の移り変わりと自然の流れとが見事にコラボを魅せます。
読んでいる内に懐かしい田園風景が広がるような、ノスタルジックな空想がイキイキし始め、読了まで彼得意の美談に吸い込まれていきます。
本作の脚色も美景の織り成しと人間ドラマが見事な対照で浮き彫りにされ、その脚本の魅力に裏打ちされた作品の妙味には、点在されるいくつもの幻想譚があるようです。
ぜひ「宮沢文学の美談に触れてみたい」という人は、本作の美しさを味わってみて下さい。
2位 セロ弾きのゴーシュ
出版社:角川書店
発売日:1969年2月24日
宮沢の没後(昭和9年)に発表された作品で、宮沢が生前、実際に体験したチェロの演奏をモチーフにして、ある青年の生活譚を如実に描き出している。
彼が独習本(平井保三著『ヴィオロン・セロ科』)から抜粋した筆写が現存する。
【あらすじ】
動物に好かれたゴーシュはある夜から動物たちによる楽器のコーチを受け、そのときから楽器の腕前が上達する。
ゴーシュは町の活動写真館の楽団「金星音楽団」でセロ(チェロ)を弾く係。
しかし演奏がまだ下手なときにはいつも楽長に叱責されていた。
そんなある日、音楽会本番で「第六交響曲」の演奏は成功し、司会者が楽長にアンコールを所望したところ楽長はゴーシュを指名すると…。
人間との交流ではなかなか楽器の腕前が上達しないゴーシュでしたが、動物との交流・コーチを受ける頃から超然的な色濃さがストーリーを占領していきます。
そのきっかけと変遷のあり方がとても魅力的で、その幻想がかった展開が実に爽快な底力を発揮します。
『セロ弾きのゴーシュ』は彼の作品の内でもかなり絶賛を浴びた名作でもあり、ご存じの人も多いかと思います。
ですが本作の魅力は何度か読み直していくと得られるものと思いますので、ぜひ「1度読んだ」という人にも、再読して頂きたいと思います。
作品に隠された本物の魅力をどうぞ吟味(あじ)わい下さい。
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1位 銀河鉄道の夜
出版社:新潮社
発売日:1989年6月19日
大正13年ごろ初稿が執筆され、晩年の昭和9年頃まで推敲が繰り返され、賢治の没後には草稿の形で遺された。
初出は昭和9年刊行の文圃堂版全集。
「午后の授業」「活版所」「家」「ケンタウル祭の夜」「天気輪の柱」「銀河ステーション」「北十字とプリオシン海岸」など、全9編で構成されている。
【あらすじ】
父親のことで同級生たちにからかわれている孤独な少年ジョバンニは、ある夜、1人で星空を眺めていた。
すると「銀河ステーション」というアナウンスとともにまぶしい光に包まれ、気が付くとカムパネルラとともに銀河鉄道に乗り込んでいた。
2人は銀河鉄道に乗って、星を巡る旅を楽しみ、そこでさまざまな考えや生き方をする人々に出会う。
童話作品ながら短編にも受け取れる重厚な内容が内在され、宮沢賢治童話の代表作の1つとされます。
作中には多くの造語も使用されていて、読者側でもいろいろな解釈を試みることができ、尽きない空想・幻想を垣間見させるところも本作の膨大な魅力といえます。
派生作品は映画・アニメーション・演劇化をはじめ、他にも何度もオマージュ作品にまで広がっています。
「銀河…」というタイトルにあげられたワードの通りに、本作には壮大なスケールの空間的魅力があり、その魅力の片りんを味わうだけでも価値はあると思います。
私としては本作を初めに映画で観ましたが、そのノスタルジックな幻想風景に心底から魅了された記憶があります。宮沢作品の中でやはり「イチオシの名作」としてあげました。
「宮沢文学に触れる」というよりは「1つの文学作品・傑作を読んでほしい」という姿勢でおすすめします。
関連記事⇒【あらすじ&感想】宮沢賢治『銀河鉄道の夜』をもっと詳しく知る
次点紹介
以下、今回のランキングには入れませんでしたが、私のおすすめする次点作品を紹介します。
次点 シグナルとシグナレス
出版社:好学社
イラスト:小林敏也
発売日:2016年1月29日
大正12年の5月頃から岩手毎日新聞に掲載された、短編童話。
彼にしては珍しい生前に発表された作品。
彼が実際に居住していた岩手県花巻市の花巻駅には本作に登場する2つの路線が乗り入れており、そこで着想を得たといわれる。
【あらすじ】
路線の音を聞きながら、静かながらも幻想的な空間の中で2人の男女が交流していく。
けれど男女が男女ともわからないやや奇抜な形容を取られながら、「シグナレス」と「愛する人」との浪漫譚が展開される。
宮沢文学に代表的に見られる「幻想の極致的な描写」で、本当はランキングの上位に入れたい作品でしたが少し脚色が奇抜すぎて、この位置につけました。
宮沢作品の中ではやや中級から上級の作品と思います。
本作も幻想がかった短編サイズですので、気晴らしでも「じっくり読み」でも読める柔軟な体裁の作品といってよいでしょう。
「何人称で描かれてあるかわからないような特殊な小説」を読みたい人には超おすすめの一作です。
まとめ
ここまで読んで頂きありがとうございます。
以下に、私がおすすめする宮沢賢治著作の作品を纏めます。
・1位 銀河鉄道の夜
・2位 セロ弾きのゴーシュ
・3位 革トランク
・4位 蛙のゴム靴
・5位 カイロ団長
・6位 泉ある家
・7位 雨ニモマケズ
・8位 チュウリップの幻術
・9位 山男の四月
・10位 北守将軍と三人兄弟の医者
・11位 星めぐりの歌
・12位 ひのきとひなげし
・13位 ある恋
・14位 イギリス海岸の歌
・15位 風の又三郎
・16位 土神と狐
・17位 種山ヶ原
・18位 注文の多い料理店
・19位 谷
・20位 ツェねずみ
宮沢賢治の作品にはとても多くの幻想譚をはじめ、動物や昆虫を扱った「擬人化タイプの作品」がありますが、彼の執筆の魅力はまさにその辺りの「特殊な形容描写」にあると思われます。
私が初めて宮沢作品と出会ったのは、主に映画作品や絵本が多いものでした。
そのノスタルジックな幻想から温かみのある空想談話の特徴が、私の興味をとても引き、今でも彼ならではのその実力に魅力を覚えています。
初めて宮沢作品を読む人にでも、恐らく『銀河鉄道の夜』や『セロ弾きのゴーシュ』、また『風の又三郎』などは非常に読みやすく、また内容もすっと心に解け入る秀作でもあり、多分「一生思い出に残る名作」に映ると思います。
それだけ彼の作品には「人の心底に宿らせる貴重な感動」が内在され続けているのでしょう。
宮沢賢治の魅力をズバリ言うと、
「ノスタルジックな幻想と臨場とを加味させながら、全く異質の世界にでも『懐かしさ』を思わせる極端な衝撃」
だと思います。
宮沢賢治の作品は現代をもって実にさまざまな分野で取り上げられていますが、それぞれの作品に共通しているのは、全ての人に共有される「純朴な空想の成果」でしょうか。
非常に素朴な描写がストーリー展開に上手く引き込まれていくのが特徴的で、本当に誰にでも愛され続ける彼の作品は「永久欠番の名作アルバム」と謳われるでしょう。
ぜひあなたの文学コレクションに、「宮沢賢治の神秘的でありスリルも含めた世界」を加えてみて下さい。
あなたの素敵な小説との出会いを願っています。
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