今年春(2017年4月)より毎週金曜日、TBSでドラマ化されているので観ている方も多いかと思う『リバース』です。
今回は小説を読んでみて、私なりの気付きや、小説『リバース』の楽しみ方を紹介してみたいと思います。
—がんがんネタバレを含みますのでご注意下さい—
「リバース」作品詳細
著者 :湊 かなえ
出版社:講談社
発売日:2015年5月20日
【ドラマ化決定】
放映日 :2017年4月14日スタート
キャスト:藤原竜也、戸田恵梨香、玉森裕太(Kis-My-Ft20)、小池徹平、三浦貴大、門脇麦、市原隼人
主題歌 : Destiny(シェネル)
Destiny
シェネル
J-Pop
¥250
provided courtesy of iTunes
小説「リバース」というタイトルの意味とは?
「リバース」ってどういう意味なのでしょう?私がまず思い浮かべるのは巻き戻すということ。言わば「逆・裏側・戻す」を表すreverseです。
しかし、リバースは再生・復活を意味するrebirth「再生・再誕」でもあります。
全然違いますよね! それがタイトルの狙いでもあるのです。
読み終わって、「さすが湊さん、うまいこと言葉を扱っているなぁ」っていうのが正直な感想。
ぐいぐい「再生」を予感させながら、たどりついた答えが「裏側」だったとは。
あらすじも交えながら、リバース・原作のストーリー(あらすじ)と感想を書いて行きます。
深瀬和久は人殺しだ
事務機器メーカーに勤務する深瀬和久、彼の目線によって『リバース』は語られます。
この深瀬という人物。性格は優柔不断、優しいと言えば聞こえが良いけれど、万事控えめで傷つきやすいタイプです。
彼の唯一の特技は“美味しいコーヒー”を淹れること。
豆を厳選し、そのこだわりぶりは職場の仲間たちに一目おかれ、重宝されています。
コーヒー豆の調達に訪れるのが「クローバーコーヒー」
小じんまりとして、カウンターだけのくつろげる喫茶でもあります。
マスター夫婦にも可愛がられ、人生初の恋人、越智美穂子と知り合ったのも「クローバーコーヒー」です。
今まさに、幸せのさなかにある深瀬でした。
しかしある日、恋人美穂子のもとに【深瀬和久は人殺しだ】という告発文が届くのです。
「どういうこと?」と問い詰める美穂子に、深瀬はポツリポツリと、ただ一つ思い当たる過去の過ち、大学時代に親友を死なせてしまった“ある出来事”を語りだします。
話した結果どうなったか?
美穂子に嫌われてしまいます。
美穂子ってどんな性格なんだろ? めちゃくちゃ嫌な性格だと思いました。
自分の傷口が開くのを承知で、自分の弱さをさらけ出して、必死に過去のできごとを打ち明けた深瀬に、追い打ちをかけるように「信じられない!」「見損なった」なんて。
美穂子にだけは嘘をつきたくないと、過去の出来事を話した深瀬を思うと、彼女のとった行動はかなり違和感を感じさせます。
ここら当たりが、美穂子が何者かを知るヒントだったりしますが……
過去の出来事 親友の死
大学4年の夏、深瀬はゼミの仲間に誘われて5人で信州を旅行することになります。
メンバーは深瀬、彼の大親友の広沢、あとは取り立てて仲の良くない村井・谷原・浅見です。
宿泊するのは村井の別荘なのですが、村井は都合で遅れてくることに。
別荘では、村井の両親が気をきかせて用意してくれていた焼肉を4人で先に食べ始めることになります。
楽しく食事は進み、谷原・浅見は缶ビールを飲み、お酒にアレルギーのある深瀬に付き合ってお酒を飲まなかった広沢でしたが、飲まないことで宴会の雰囲気がぶち壊しになることがイヤで、広沢もビールを飲むことになります。
そこに村井から電話があります。「何がなんでも、駅まで迎えに来い」と。
深瀬は免許が無いので迎えには行けず、広沢・谷原・浅見はお酒を飲んでいます。
でも結局、引き受けたのは広沢。
彼は、運転経験もあまりないのですが、昼間に仲間と別行動をとって、ご飯(広沢はカレー、残る仲間はお蕎麦)を食べたなどという経緯があり、これ以上勝手なことを言うのを控えたのです。
(ここポイントです)
曲がりくねった山道を、運転歴も浅く飲酒もしている広沢が行くことを心配し、深瀬は甘党の彼に“蜂蜜入り”のコーヒーを入れたポットを持たせます。
(蜂蜜の甘さがコーヒーによく合うということなので、私も試してみたいです)
別荘に来る途中たちよったお店で買った、深瀬オススメの、蕎麦の蜜だけで出来た特別な蜂蜜入りコーヒーです。
しかし、急な山道で運転をあやまったのでしょうか、車は事故を起こし炎上。
広沢は死んでしまいます。
お酒を飲んでいるのを知った上で、無理に迎えを頼んだ村井には腹が立ちます。
それ以上に、就職が決まったから警察に捕まると内定が取り消される(谷原)とか、教師になりたいから飲酒運転がキズになる(浅見)とかっていう、谷原や浅見の自分勝手さには、あきれてしまいます。
(しかも事故後、広沢がビールを飲んでいたことは隠します)
深瀬にとっての広沢は「はじめて自分を理解してくれた人」という大きな意味を持つ大親友でした。
それだけに、その死は不甲斐ない自分を責めるできごとだった上に、大きな喪失だったのです。
深瀬の中で、親友を死に追いやったことが大きな負い目となりました。
広沢ってめちゃめちゃ良いヤツに書かれています。
良いヤツだから、死ななくちゃならなかったわけですが……
事故から3年後
告発文が届いたのは深瀬のもとにだけではありませんでした。
残るゼミ仲間のもとにも、【人殺し】と書かれた紙が送りつけられます。
犯人は何が目的なのでしょう?
「いったいあれは事故だったのか?」
「誰かが広沢を殺したと、疑っている人物がゼミ仲間にいるのではないか?」
「誰が告発文を書いたのか?復讐しているのではないか」
「そう言えば、第一発見者は谷原だったよな!」
そんな中、谷原が線路に突き落とされるという事件が起こります。
疑心暗鬼がゼミ仲間の中に広がってゆきます。
犯人の決め手のないまま、深瀬は広沢という人間について、過去を手繰り寄せるように調べ始めます。
死なせた広沢に罪滅ぼしをするように。
深瀬が思っているように、広沢も深瀬を大親友だと思っていたのだろうかという疑問から。
告発文の犯人
そして高校時代に、広沢が親友と読んでいた古川という人物にたどり着きます。
地味で大人しくて、「なんであんな人が広沢の友人?」なんて陰口を叩かれてしまうような男子。
人気者の広沢とつるんでいることで、自分のランクを一つあげたかったと発言します。
(スクールカーストはコワイなぁー)
深瀬は、古川と自分を重ね合わせます。
もしかして、古川が犯人? 復讐したいと思っている?
また、広沢の高校時代のアルバムに1人の良く知った女性をみつけてしまいます。
それは木田瑞希。
浅見が教師とて勤める高校の同僚です。
事務機器の卸し先として、深瀬は瑞希の顔をよく覚えていたのです。
しかし、この2人の登場人物は、謎解きにおけるミスリードですね。
古川はもう広沢との付き合いはないし、瑞希はどっちかというと浅見に好意を持っているし。
そして、もう1つ良く知った女性がいました。
それこそが、深瀬のかつての恋人、越智美穂子でした。
美穂子は大学時代に広沢と付き合っており、広沢の死の真相を知りたくて、深瀬・谷原・村井・浅井に近づいたのです。
ここで、深瀬が事故の打ち明け話をした時、彼を責めた理由が、はじめてわかるわけです。
美穂子が告発文を送った犯人?
そうです。(きっぱり)
しかし、美穂子が送ったのは深瀬以外の4人に対してです。
美穂子あてにおくられてきた【深瀬和久は人殺しだ】は、美穂子と深瀬の急接近を良く思わない、美穂子のストーカーが送りつけたものでした。
(ただし、このストーカーは本筋に絡みません)
自分のストーカーを真似て美穂子は、告発文を送ったのですね。
そし4人の様子を観察していたのですね。
彼女は、大好きな広沢が突然、この世からいなくなった事がずっと受け入れられなくなっていたのです。
深瀬の通う「クローバーコーヒー」を探したのも、谷原の野球チームのマネージャーになったのも、全て計算ずく。
浅井は特に、木田瑞希の同僚であるので、近づきやすかったのですね。
なんと、執念深いこと。
では谷原が、線路に突き落とされた事件の犯人は?
それも美穂子です。
谷原の野球チームのマネージャーだった美穂子が、飲み会でビールを飲んで、美穂子を家まで送ろうとした時、車を使おうとしたのです。
そして結局、美穂子を電車で送ったとき、大学時代の事故について「運が悪かっただけ」と発言しました。
しかも、彼女に抱きつこうとまでしたのです。
そして、無我夢中で谷原を線路に突きとばしたのですね。
幸い、谷原が生きていたから良かったものの、コワイ!
「再生」
ここまでのストーリーで、広沢の死因については一件落着ですね。
「飲酒運転」です。
ただ、それでは済まない美穂子の心情が綴られています。
飲酒に関しては、それぞれに悔いてはいても、その加減が深瀬と谷原では全然違います。
その後、深瀬は「クローバーコーヒー」で美穂子と再会します。
彼が調べた広沢の人となりが書かれた、1冊のノートを持って。
ノートを作って、はじめて広沢をわかりだしたと感じる深瀬。
ノートを見た美穂子は、これから「ノート」を2人で書き足してゆこうと言います。
そして、広沢の思い出を胸に、2人は前を向けるような気がします。
ここでお話は完結して、彼らに「再生」rebirthのきざしが見えて来たわけです。
深瀬と美穂子は、以前「クローバーコーヒー」で話していた時も、今もお互いに好き同士だと分かり合います。
これから、またクローバーコーヒーでデートする平穏な日々が続くはずでした。
……でした、と言うのはビックリするような結末をこの後、迎えるからです。
意図せぬ殺人「逆・裏側」衝撃の犯人をネタバレ
湊かなえさんも変わったなぁ、「再生」で終わるのでは、彼女特有のイヤミスとは言えないけれど、それはそれでOK!
……と思いながら、あと少しで本を閉じようとしたところ……
美穂子の口から、広沢に関する意外な事実が語られます。
(まだ秘密があったんです)
なんと、広沢は蕎麦アレルギーだったというのです。
別荘から駅に村井を迎えに出る広沢に、心をつくして持たせたコーヒー。
蕎麦の蜜が入ったコーヒー。
それこそが、広沢の直接の死因だったのです。
普通に考えれば、蜂蜜の成分が必ず書かれているはずですから、深瀬はそれを知らなかったのだと思います。
昼間、みんながお蕎麦を食べに行こうとしているのに、一人だけ「俺カレーが食いたい」と、広沢が別行動をとった理由がやっと解かります。
その場の、空気が淀まないように人一倍、気をつける広沢ならではの、心遣いだったのですね。
飲みたくないビールを飲んだのも、みんなが嫌がる山道の迎えも、同じことが言えるのです。
全てが、広沢がいい人過ぎるから。
結果、広沢はショック死。
お酒が回って、運転を誤ったという結果より衝撃です。
善意と謙虚と、優しさのかたまりのような深瀬が犯人だったこと(意図せぬことであったとしても)にも度肝をぬかれました。
……というか、広沢の死においやった原因を深瀬に負わせるような、そんな結末が待っているとは思いもしなかったです。
一気にリバースの持つ意味が、「再生」から「逆・裏側」に。
広沢にコーヒーを手渡した、あの瞬間に話は巻き戻るのです。
深瀬はどうやって、これから自分の罪に向き合ってゆくのでしょうか。
その心中を察すると、つらくて悲しいです。
美穂子にどうやって打ち明けるのでしょうか?
また秘密を抱えながら生きるのでしょうか?
ラストの大どんでん返しが、読者をしばらく呆然とさせるだけの力があります。
紛れもないイヤミスでした。
そして、『リバース』を読んで言えることをもう一つ。
それは、「コーヒーが無性に飲みたくなる」ということ。
極上の豆から挽いた美味しいコーヒーをです。
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