川端康成のおすすめ人気小説ランキング:第3位~第1位
3位 山の音
出版社:新潮社
発売日:1957年4月17日
戦後日本文学の最高峰と評価され、本作をもって野間文芸賞を受賞するとともに、川端文学の神髄を世に知らしめた至高の傑作。
生き物の死を初めに想定し、その「生き物の死」がまるで自然と調和してゆく描写には、川端独自の夢想の非凡が活き活きと現れている。
はじめ『山の音』と聞いて読み始めた頃には、ただ敗戦後の日本の風景を脚色し、その中で“人間描写が羅列されている…”程度にしか映らなかったのですが、三度目に読んでみたとき、段々と本作の奥底に潜む人の哀しみがまず現われてきて、次に自然を背景に敷くことで大きく得られる「生き物と自然物との不思議な同化」を想像するようになりました。
また本作の構成は、自然と生物との調和を基調にして描かれてある様子で、その点から言えば『不死』や『感情装飾』で取り上げられた作品、また『水晶幻想』などに見られた骨子部分に共通している場面があると思われ、ぜひ本作を読まれる前後には、それらの作品も一読してみて下さい。
本作の結末はハッピーエンドでもバッドネスエンドでも継続型の幕引きでもありません。
ぜひあなた自身で、読後の神秘的な感想を味わい下さい。
2位 雀の媒酌
出版社:新潮社
発売日:1971年3月17日
『掌の小説』に収録されている僅か三ページの作品で、他のどの作品よりも“一話完結性”が色濃く浮き出た奇抜の幻想小説です。
川端特有の夢想を生かしたストーリー展開で、一人の男が現実の世界からある支点をきっかけに夢想・幻想の世界へと埋没していきます。
「結婚の相手を選ぶと言ったって、つきつめて考えてみれば、結局のところおみくじを引くような、銀貨の表か裏かを判じるくらいのものだわ」
この台詞を念頭に男は、お見合いした娘との結婚にあまり乗り気でなく、いつしか瞑想にでもふけるように自己の空想の世界へ走っていきます。
走っていくのですが、それが現実の世界での出来ごとなのか、空想の世界での出来ごとなのか、判別し辛い設定と脚色がストーリーの内面を広げています。
最後の場面で見られる、「擬人化されたような雀」と男とのやり取りには、恐らく全ての読者に訴えかける“異性と結ぶ、理想の絆”のあり方が描写されます。
非常に読みやすい作品ですので、「幻想ジャンルが嫌い!」という人でも一読の価値アリです。
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1位 不死
出版社:新潮社
発売日:1971年3月17日
川端文学の真骨頂、その威力が最高に漲った作品と言ってよいでしょう。
本作も『掌の小説』に収められた短編ですが、ごく短い内容において、川端テイストがふんだんに敷き詰められた絶品です(断言)。
ある老人と若い娘が大樹を囲んだ空間で出会い、二人は「知らないようで既知の空間」をさまよううち、予め決められていたような終点へ到着します。
(その到着点すら読者にはっきり明示しません)。
しているうちに少女の生死、老人の生死について解き明かされていき、作品タイトル「不死」の許容にだんだん受け入れられてゆくような、そんな結末のストーリーです。
川端作品には時折り見られますが、「ゼロ人称視点」に立つ上で誰の視点で何について言っているのか、あえて明るみに出すことをしない特殊な描写法が取られます。
この点で読者は幾様にも解釈を持て、1つの作品が十人十色に分身するわけです。
この『不死』もまさにその描写法により描かれた作品で、そうして完成された結末においては「いつまでも得体の知れない不思議な感覚」が漂ってきます。
川端作品における幻想小説の内で、本作はその最高傑作であると私は思います。
気づかないうちに「この作品世界に入ってみたい!!」と強く強く思わされる自分がいました。
「この作品1つを読めば、川端作品の骨頂を知ることができる」そう言えるほどに川端テイストが充満している作品です。
次点紹介
以下、今回のランキングには入れませんでしたが、私のおすすめする次点作品を紹介します。
次点 骨拾ひ
出版社:新潮社
発売日:1971年3月17日
『掌の小説』に収録された川端の自伝的作品で、川端を「葬式の名人」と言わしめた肉親の埋葬シーンから物語は始まる。
川端は実際に次々に自分の周りで肉親が死に、果ては天涯孤独の身のようになりますが、そうした特異な環境がこのような「極めて独創的な生死観」を養ったように思われます。
あらゆる批評家が川端作品を論評するとき「末期の眼」というキーワードのような言葉を用いますが、本作も結果的にはその「末期の眼」により描かれたのではないかと、私は感じました。
タイトルは有名かも知れませんが、その内容まではあまり知られていない作品に思われますので、ぜひこれを機会に、一度読んでみて下さい。
[ad#ad-1]まとめ
ここまで読んで頂きありがとうございます。
以下に、私がおすすめする川端康成著作の作品を纏めます。
・1位 不死
・2位 雀の媒酌
・3位 山の音
・4位 舞姫
・5位 笑はぬ男
・6位 片腕
・7位 古都
・8位 禽獣
・9位 浅草紅団
・10位 千羽鶴
・11位 家庭
・12位 神の骨
・13位 弱き器
・14位 眠れる美女
・15位 雪国
・16位 イタリアの歌
・17位 有難う
・18位 伊豆の踊子
・19位 名人
・20位 乙女の港
川端作品はどの作品から読んでもすっと解け込める“魔性のような魅力”があり、これをもっていえば、川端作品を読む人に「どれだけ作品を読みこなしてきたか?」いうようなキャリアの有無は全くないと言ってよいです。
川端作品には「生と死」という人にとって共通するテーマをふんだんに掲げたものが多く、たとえば次点に入れた『骨拾ひ』などは、その「生と死」について川端が描き始めた実質上のデビュー作としてもよいほど、自身にとっての悲壮な出来ごとが集約的に描かれています。
この辺りに、生き物の生死を結論から俯瞰するような「末期の眼」の成果が存分に飛び交うのでしょうか。
川端作品の魅力は、人が持つあらゆる脚色を削ぎ落とした「人の極論的な姿や姿勢」が浮き出ている点だと思えます。
つまり、人をはじめ「生き物」について語るときにはたいてい様々な知識や経験からなる脚色が付されるものですが、川端作品はそれについての空想だけを残し、知識による脚色の部分はほとんど削ぎ落としています。
いえば感覚で文章を書いている感じです。
この点に「全ての人が共有できる思想の根源」が反映されているように感じられます。
川端作品の魅力はズバリ、
“この世の物ごとを死の向う側から覗いたような主観と脚色の成果”
でしょうか。
川端作品を読み進めていくうちに、恐らく、あなたが心底で眠らせてきた感情表現の具体性を目の当たりにすることと思います。
「作家・川端康成の真骨頂は、短編にこそ表れる」といいます(私もそう思います)。
その点で言えば、『掌の小説』などは傑作の連続といってよいかも知れません。
初めて川端作品を読むという人には、やはり『掌の小説』をおすすめしたいです。
小編ばかりが綴られていますので(ほぼ全てが一話完結です)、とても読みやすいはずです。
ぜひこれを機会に、一度、川端作品を手に取って、あなたの文学コレクションに加えてみて下さい。
あなたの素敵な小説との出会いを願っています。
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