川端康成のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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川端康成のおすすめ人気小説ランキング:第10位~第4位

10位 千羽鶴

出版社:新潮社
発売日:1989年11月17日

『雪国』や『山の音』と同様に、最初から起承転結でまとめられる長編の形ではなく、後に書かれた断続的な連作が折り重なって完成した作品で、幻想・美麗的かつ、人の生々しい肉体的描写も加味された、複雑な構成を持つ長編小説。

本作の続編として『波千鳥』が執筆されていますがこれは未完の作品で、それでも本作はこの『波千鳥』と合せて解説・解釈されることがほとんどです。

非常に芸術的な作品と裏打ちされる傍ら、本作の骨子は俗悪から生れた人の「肉体的隷属」にあるとされ、まるで“人の臭味”が漂ってくるような、実に重苦しい展開が見え隠れします。

本作の主張は恐らく「人間のエゴイズムが建前を崩壊させていく点」にあると私には思われ、その描写をもって当時に見られていた“人の表面的な偽善”に、何らかの皮肉を表現したのでは…?なんて単純な感想を持たされました。

比較的、本作は氏の後年の作品にあり、往年に見られた「日本の美への探求」からは少し遠退く「人の本能のあり方を断面的に見せた作品」と言えるでしょうか。

川端のグロテスクな部分を覗いてみたいという人には、本作をおすすめします。


9位 浅草紅団(あさくさくれないだん)

出版社:講談社
発売日:1996年12月10日

全61節から成るメッセージ性の多い作品です。
川端が30歳から31歳にかけての執筆作で、昭和初頭の浅草の人間模様が見聞記風・叙景詩風に描かれています。
昭和モダニズム文学とも呼ばれ、この作品の影響で、浅草を訪れる人々が増えるという浅草ブームが起きたほど反響性の強い一作。

男女の抒情的な生活を描く延長で、交際の果てに姉を捨てた男に「私」が、浅草に存在する不良少年少女軍団と協力しながら復讐をしてゆくストーリーです。

一見ただの復讐劇のようですが、当時の世間に横行していた“人のあり方”を見事に描いており、エログロ・ナンセンスをはじめ、ありとあらゆる裏世界の流行を伴った上、その復讐劇には川端独特の発想が生むリアル感が加わります。
この辺りの描写がなかなか卓越で、思わず恋愛における普通の破局や、また恋愛そのものにさえ恐怖を覚えてしまうほどの「具体的な人災への脚色」を明かしています。

本作はそのストーリーの進行上、谷崎潤一郎の『鮫人』や添田唖蝉坊の『浅草底流記』をはじめ、当時に流行していた歌謡曲の歌詞などが多分に引用されていて、その背景には「しぶとく残る人の欲望」が渦巻いているように見えます。

私としては、読み進めてゆくうち“よくある破局のストーリー”から“異性同士の衝動的な言動のあり方”というものに注目させられ、「究極の点で、人間にとって恋愛とは何なのか?」というような哲学的な視点を持たされました。

もし川端の『禽獣』や『散りぬるを』を読んで“ある痛快”を覚えたなら、本作の面白さにもすぐ解け込めるだろうと思います。


8位 禽獣

出版社:講談社
発売日:1992年4月3日

人と動物とに焦点を当て、それぞれの心の動きの相異を“川端なりの無情の表現”で綴った短編小説。
動物から見た人の滑稽と虚無を解き明かし、「無心の動物」への賛美に裏打ちされたデカダンスの要素も組み込まれている。

動物の単直な心の動きを俯瞰する上で、「人がどれだけ欲望により他人を苛むか?」という人の本性への非難が、この作品の最も重いテーマに感じられました。
ストーリーは終始「悲哀」に満ちたようなペーソスを絡めた運びに思われ、どのような視点からでも「作品の意図」を掴めるといったところにこのテーマの魅力が備わっていると言えます。

川端作品はどちらかといえば、「日本の美を徹底して描いた」と謳われているように抒情的で散文調にまとめられたものが多いのですが、本作はその一線から抜けたような“あまり見たことがない川端の世界”をふんだんに描写しています。

多少の虚無感に捕われてしまうかも知れませんが、少し意気込んで「川端作品の哀愁の部分」に触れてみたい人にはおすすめです。


7位 古都

出版社:新潮社
発売日:1968年8月27日

古都・京都を舞台に、生き別れになった双子の姉妹の数奇な運命を描いた川端作品屈指の傑作長編。
本作の発表がノーベル文学賞受賞へのきっかけをなした。

京都の美しさを背景に男女の悲壮な恋愛を描き、終結は「恋愛成就」と「破局」の瀬戸際を連想させる「とてつもない奥行き」を見せる一作です。

川端作品はことに「短編がその真髄を射抜いている」とい言われがちですが、本作は長編なれどもその“レッテル”を覆すほどの成果を収めた稀な傑作と言えます。

「千重子さんの幻」から経過を伴い「身がわり結婚」を想定させ、人の心情が空中を漂うように“ある決まった終点”に辿り着くまでの展開には、どれだけ周到なストーリー構成があるか知れないほどの「底抜けの完成」が窺えてきます。
その終局は少々“乱暴”と言ってよいほど。

「こんな終わり方があるのか…」とうならされたのは、川端作品を読んできて初めて味わった感想でした。

恐らく一読では“つかみどころのない作品”に映るでしょうか。
けれど、二度、三度、読み進めてゆくうちに、きっとそれなりの“凄み”のようなものが浮き立ってくることと思います。
ぜひ本作を読む前後には、『山の音』もご堪能下さい。
系統は少し違うでしょうが、違った角度からの“凄み”を味わえます。

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6位 片腕

出版社:新潮社
発売日:1967/11/28

「わたしの片腕を一晩お貸ししましょう」とある女性のこの台詞で始まる『片腕』は、まるで男の本能が或る極限において表現された“官能的美談”の絶品です。

「恋愛小説」は世間にあふれていますが、本作はその「恋愛小説」そのものをこと細かく輪切りにしたような、非常にシュールな妖しさを持つ怪作です。

女性のある部分に恋をした男が得体の知れない女から片腕を借りて持ち帰り、自分のアパートでその片腕を観賞する一夜の場面では、端的に言えない男の屈折した煩悩の仕上がりと、それでも諦めきれない欲情への失踪のようなものが垣間見られます。

本作も非常に川端らしい世界観と新感覚が生きた特性を持ち、形容は静かながらも完成された抒情の中味は、恐らく読者の心を大きく小さく揺さぶるでしょう。

始めから幻想小説の運びなので、もしかするとすんなり受け入れられないという人もいるかも知れません。
けれど私はこの「川端独特の奇怪な幻想」に打ちのめされました。


5位 笑はぬ男

出版社:新潮社
発売日:1971年3月17日

脳病院で精神を煩った患者に崇高な面をつけて笑わせようと試みる。
その柔和な笑いをもって少しでも“人の苦痛”から逃れさせようとする、作者の慈愛を綴った憐情憚。

本作も『掌の小説』に収録された短編小説ですが、扱うテーマは非常に重いです。
人が今日まで背負い続けてきた“苦痛”に対する作者の憐みが、いかんなく発揮された“ややハッピーエンド”の仕上がりです。
掲げたテーマが人に解決を与えないため、どうしても「さっぱりしたハッピーエンド」にならなかった模様。
この辺りに作者の本意があると窺えます。
またこの結末に至った作者の憐情は、ストーリーの終始に漂っています。

本作を読んだ感想として、どうしても「人の理想」と「現実」の間に漂う空白のようなものを連想させられ、「人が生きる上で“最大の励まし”とはいったい何なのか?」という副産的なテーマを想像させられました。

テーマは濃厚ですが文章表現はとても平易ですので、すんなり読めると思います。
川端作品に少しでも興味のある人にはぜひ読んでほしい作品です。
本作はその昔、マキノ・プロダクションから映画化され、当時においてかなりの反響を得た人気作品の内の一つです。

本作にヒントを得て書かれたという三島由紀夫著『仮面の告白』も、機会があれば読んでみて下さい。
本作とは正反対の結末を綴っています。


4位 舞姫

出版社:新潮社
発売日:1954年11月17日

夢を諦めた元プリマ・ドンナの一家の孤独な人間関係を描いたストーリーで、川端が作中で初めて「魔界」という言葉を用いた作品。

舞台に敗戦後の日本の背景を敷き、その世情に潜む人の虚無や絶望といったものを屈託なく描き切ったヒューマンドラマ調の仕上がりです。

“敗戦”をきっかけにそれまでの生活から全ての目標を失った「娘」が元舞姫の母親に夢を託され、その虚脱の生活から未来へ羽ばたく“孤独”と“乱舞”の協奏作です。
加えて「娘」の活性を軸にしたまま、「敗戦国に生きる全ての人々」にも本能的に夢を持たせる臨場描写が象徴的です。

川端はこの作品で「魔界」というワードを初めて扱い、その根幹には仏教や禅でいわれる「煩悩」があり、人の美意識や救済への目標を「自然主義」からなる写実の一手で表現してゆく奇抜な造型を試みています。
この「魔界」の様子は後に発表される『みづうみ』や『眠れる美女』でさらに踏み入って明かされるので、ぜひそちらの2作品も読んでみて下さい。

タイトルにある華やかなイメージとは異なり、その作品表現にはほとんど際立つ脚色がなく、非常に簡素な単文・散文の形で描かれています。
私としては非常に好きな作品で、もう少し順位を上げたかったのですが、本作は300ページ以上からなる長編ですので「おすすめ小説」としてはこの順位に留めておきました。

いよいよベスト3です!


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