中村文則という作家をご存知ですか?
2002年『銃』という作品で新人賞を受賞して以来、数々のミステリー小説を書き続けている日本の人気作家です。
また『悪と仮面のルール』の英訳(EVIL AND THE MASK)が2013年にウォール・ストリート・ジャーナル紙でベストミステリーの10作品に選ばれ、海外でもその実力が認められています。
そこで、中村文則さんのおすすめ作品5選と、
「どんなストーリーなの?」
「主人公はどんな人?」
「どうしておすすめなの?」
これらをご紹介したいと思います!
ファンの方はもちろん、
中村文則という作家をご存知なかった方、
名前は聞いたことがあるけどまだ読んでいないという方、
ミステリー小説が大好きだという方、
必見です!
中村文則の人気おすすめ小説ランキングトップ5
第5位 『掏摸』
【あらすじ】
東京にある一人のスリ師がいた。
腕の立つ彼の前に、少年が現れた。
貧相な母親の言いなりになり、不器用に万引きをする少年。
そんなつもりはなかったはずが、万引きGメンに目をつけられていた少年を救ったことをきっかけに、親子を気にかけるようになった。
そんなある日、スリ師の彼の前にある男が現れた。
東京で最も関わってはいけない男、木崎。
木崎の仕事を失敗したら、少年と母親は殺される…。
失うものがなかったはずの彼が、二人のために、ある困難な仕事を引き受けた。
【「僕」の主人公像】
中村文則さんの小説の主人公は、何か暗い過去を持っています。
『掏摸』の主人公は幼少時代から盗み癖がありました。
そして、よく失敗をしました。
他人のものは手の中で「異物」という感覚があり、手に馴染まず、落としてしまったそうです。
そして盗んだことが周りにバレて今います。
そんな幼少期を抱えていた主人公ですが、今では一人前のスリ師。
誰を狙えばいいのか、わかっているのです。
そして、どんな身なりをしなければならないのか、細心の注意を払う、抜け目のない男です。
【おすすめのポイント】
中村文則の作品の世界観の要素の一つに、「緊張感」があります。
これは読み手が主人公となって、自らの手で、物語で起こる行為を行なっているような、そんな臨場感を生んでいます。
ものを盗む、という犯罪、とりわけスリという行為をテーマにしているだけあり、読んでいて強い緊張感を覚えます。
そして犯罪をテーマに扱っているはずなのに、読んでいるといつの間にかそのスリルに引き込まれてしまいます。
第4位 『遮光』
【あらすじ】
恋人の美紀を失った「僕」は彼女の事故死を周囲の友人に隠し続けている。まるで過去を否定するかのように。そして彼はいつも、不気味な黒いビニール袋に覆われた謎の瓶を携帯していた。
虚言癖のある彼の異常な行動は純愛なのか、それとも狂気なのか。
【「僕」の主人公像】
主人公の亡くなった恋人への愛情は明らかに正常の域を脱しています。
それは黒いビニールに覆われた謎の瓶にも現れていますが、それだけではありません。
美紀という恋人は、ある意味で交換可能だったのです。
別の女性でもよかったのです。
重要なのは、典型的で、誰しも恨むような、幸せなカップルであることでした。
謎の瓶を抱えて、「普通の幸せ」を奪われた彼の行動は、次第にエスカレートしていきます。
そういう意味では、主人公はとても虚無的な人間だと思います。
【おすすめのポイント】
中村文則作品の世界観を構成する「緊張感」に加え、ここには「狂気」も見て取ることができます。
この作品でいう狂気は主人公の言動に加え、瓶の中身がしばらく何かわからないことです。
わからないとなると、読み手はあらゆる想像をしてしまいます。
そして中身が何かわかると、今度は主人公の周囲の人物にその瓶の中身がバレてしまうのではないか、という緊張感が生まれます。
その二つの要素に駆り立てられて、先が気になってしまいます。
[ad#ad-1]第3位 『銃』
【あらすじ】
大学生である「私」は昨日あるものを拾った。それは銃だった。
銃の奇妙なまでの美しさに魅了された「私」は、残酷なまでの妄想を膨らますようになっていった。
現実の世界からかけ離れていく「私」。
そしてその先の結末は…。
【「僕」の主人公像】
主人公はごく普通の大学生です。
ごく普通の友人を持ち、ごく普通に女の子をナンパします。
しかしどこかに虚無感を抱えていたようです。
死んだ男の物とみられる銃を拾って以来、現実の一切が頭に入らなくなり、その銃の魅力に虜になってしまいます。
その異常なまでの銃への執着心は、退屈な日常から逃れようと必死になっているようでもあります。
【おすすめのポイント】
この作品は中村文則の第1作目なのですが、主人公の軸が私たち日常の常識的感覚から外れていて、衝撃を受けます。
しかしその軸は、ずれたまま全然ぶれません。
そしていつのまにか読み手の私たちの軸もずれていきます…。
中村文則の世界観は、そういう魅力があります。
なぜでしょう…。
第2位 『あなたが消えた夜に』
【あらすじ】
とある街で連続通り魔殺人事件、通称「コートの男連続通り魔事件」が起こった。
警察官の「僕」は目撃情報を収集するも、集めれば集まるほど、犯人像は「コートの男」からかけ離れていく。
捜査が暗礁に乗り上げたと思った時、この事件はある未解決事件と関係があることがわかった。
中村文則の世界観を持ちつつ最後まで犯人のわからない、シリアスなサスペンス小説。
【「僕」の主人公像】
主人公の過去は、彼の警察官という職業に相反しています。
そのくらい過去は悪夢となって思い出され、うなされます。
そんな矛盾を抱え、隠しながらも仕事をする彼。
そんな彼が警察官を務めるのは、犯人の心理を誰よりも抱えているからではないか、と自分でも気が付いています。
そんな矛盾に戸惑っています。
【おすすめのポイント】
タイトルを読むと男女の恋愛物語かと思われがちですが、この小説は長編ミステリーです。
もちろん恋愛沙汰にはなっているのですが、途中までタイトルの意味がわかりません。
ここがミソです。
さてこの作品はこれまでの中村文則作品の中でもとりわけ登場人物が多く、途中で見失ってしまうことさえあります。
ですが、中村文則の世界観と掛け合わさったという点では、類のないミステリー小説なのではないかと思います。
登場人物一人ひとりの人物や背景の設定、心理描写が細かく、さすがだ、と感心していました。
内容はシリアスですが、随所に笑いの要素も含んでいるところもオススメのポインントです。
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第1位 『何もかも憂鬱な夜に』
【あらすじ】
刑務官を務める「僕」は、未決囚の少年・山井を担当している。
少年の頃犯した殺人の控訴期限も残すところあと一週間。
彼の死刑はほぼ確定している。
心を閉ざす山井は「僕」にだけ言い残した何かを言おうとしていた。
山井の言葉が「僕」の記憶を呼び覚ます。
施設で育った少年時代、自殺した友人、恩師とのやりとり…。
犯罪と死刑制度、生と死という重大なテーマを含んだ長編小説。
【「僕」の主人公像】
心を閉ざした山井少年が「僕」にだけ心を許すのは、彼に自分と似ているところがあるからでしょう。
施設で育った彼にはある恩師がいます。
その恩師の正体については最後までわからないのですが、恩師は「僕」の精神的な拠り所です。
きっと、「僕」が山井のようにならなかったのは、恩師の存在があったからなのではないでしょうか。
おそらくそれほどまでに「僕」と山井少年は共通するものがあるのだと思います。
【おすすめのポイント】
中村さんはこの作品に「水」のイメージを持って書かれたそうです。
冒頭の文章や、恩師という正体の明かされない人物、それから主人公の目線など、どことなく水面の下の、手の届かない物を眺めているような感じがしました。
また山井と「僕」の関係性は生と死を象徴しているように思えました。
それだけ重要なテーマを扱っているのです。
そして巻末には又吉直樹さんの解説が収録されています。
ここからも又吉さんの文章力がみて取れます。
まとめ
それでは、中村文則のおすすめ小説ランキングのおさらいです!
第1位 『何もかも憂鬱な夜に』
第2位 『あなたが消えた夜に』
第3位 『銃』
第4位 『遮光』
第5位 『掏摸』
いかがでしたか?
ネタバレをしないようご紹介したので、曖昧な箇所もあったと思います。
もっと知りたいな、と思った方は是非読んでみてください。
きっとあなたも中村文則の世界観に魅了されてしまいます。
蛇足ですが、中村文則さんはお笑い芸人の又吉直樹さんや、役者の綾野剛さんとも親交が深いそうです。
なんだかますます、中村文則作品が読みたくなりませんか?
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