こんにちは!
今回は「童話から夢を描いたような、メルヘンに溢れる作品」をたくさん世に送り出してきた作家、宮沢賢治のおすすめ作品をランキング形式でご紹介します!
宮沢賢治の作品といえば、詩集からはじまり、数々の童話要素に富んだ「子供から大人までが楽しめる非常に多彩の作品を描いた作家」と言われますが、今回はこの宮沢賢治の隠れた逸材ともいえる「掘り出し物の作品」をメインにして、詩集・小説を問わず、できるだけバラエティに富んだ読み応えのあるランキングにしてみようかと思っています。
宮沢作品の魅力をいえば、まず「懐かしさを秘めたまま、奇想天外を面白おかしく浮き彫りにしたストーリー展開が多彩な点」でしょうか。
宮沢賢治といえば、やはり名作の『銀河鉄道の夜』や『雨ニモマケズ』、また『風の又三郎』や『注文の多い料理店』などで有名でしょうが、彼の作品にはまだまだ多くの“隠れた名作”があり、その著作の1つ1つにも宮沢文学ならではの純朴な魅力がたくさん詰まっています。
宮沢賢治の作家としての「すごみ」は、難解な内容の小説でも童話のように身近に想わせる、優しい語りかけの口調でしょうか。
その「口調」が行き届いた「隠れた傑作」が、まだまだ彼の作品にはごろごろしています。
そこで今回のランキングでは、有名作品よりもどちらかといえば「あまり知られていない作品」に焦点を当て、宮沢文学の魅力をご紹介してみたいと思います。
今回は私が自信をもって皆さまに「宮沢作品に仕上げられた涼風のような魅力」をご紹介するとともに、「これだけはぜひ読んで頂きたい!」と願う「宮沢賢治のおすすめ作品」をお伝えします。
お気軽に目を通して頂ければ幸いです。
では、いってみましょう!
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宮沢賢治のおすすめ小説ランキング:第20位~第11位
20位 ツェねずみ
出版社:岩崎書店
発売日:1989年10月1日
『校本 宮澤賢治全集』で本作は「クンねすみ」「鳥箱先生とフウねずみ」は同じ巻に並ぶ形で掲載されており、いずれもねずみを擬人化したストーリーをモチーフとした童話的な仕上がり。
生前未発表の作品であり、本作が描かれた正確な年月日は不詳とされている。
【あらすじ】
自分の前に現れる相手に好意(自分に都合のよい言動)ばかりを望むツェねずみは、やがてはじめに対峙したイタチからも他のねずみからも嫌われるが、同じく周囲から嫌われていた一人の人間に、親友めいた気持ちを覚える。
やがてその人間の持ち物である「ねずみ取り」とも仲良くなるが、最後はそのねずみ取りに捕まって、ツェねずみはこらしめられる。
童話的な要素を多分に用いたストーリーですが、内容はごくシンプルな風刺にも近く、読んでいくと半ば『グリム童話』に多く見られる惨劇の末路を辿っていくような、そんな悲惨な結末が見え隠れします。
実に宮沢作品らしい「擬人法」を熱かった作品ですが、少し物足りない点は、「オチがすぐにわかってしまう点」でしょうか。
読みやすい短編サイズなので、宮沢作品にまだ触れたことのない人におすすめします。
19位 谷
出版社:春陽堂書店
発売日:2008年11月20日
『新編 風の又三郎』新潮文庫に収録された作品で、文庫本サイズで8ページ足らずの掌編で、制作発表年月日は不詳。
【あらすじ】
キノコ採りに行った2人の主人公は(メインの主人公は「私」ですが、その役割の重要度からみて「理助」も主人公としています)、そのキノコ採りに奔走する内に、さまざまな自然現象から超常現象に遭い、当の目的を忘れて2人で入った山から「谷底の見えそうな崖」を通って逃げ帰る。
冒頭はほのぼのとした風景描写から、人間模様の詳細を描いていく宮沢文学独特の書き出しですが、そのうち自然に埋れるようにして超常現象が現れてきて、2人の主人公は半ば恐怖を覚える形で山を下ります。
そのとき崖から底の見えそうな谷間を覗きながら帰るのですが、この辺りの描写で「恐怖を描いているのか、ただの勘違いを描いているのか」わからなくなっていく辺りの展開が秀逸です。
はじめはやはり童話を読むような感覚で読み始めたものですが、そのうち段々と「スリル」のようなものが顔を覗かせてきて、気付いてみるとその結末では、ただ「恐怖に通じるサスペンス的な展開」が口を開けて待っていた、そんな感覚を受けました。
宮沢作品に珍しい「恐怖」を覚えてみたいと言う人には、ぜひおすすめしたい一品です。
とにかく後半の仕上がりが奥深いです。
18位 注文の多い料理店
出版社:新潮社
発売日:1990年5月29日
宮沢文学の中でも児童文学の代表作として知られる本作は、彼の生前に出版された唯一の短編作品とされ、杜陵出版部と東京光原社を発売元として1000部が自費出版同様に出版された。
初版年は1921年11月10日とされている。
【あらすじ】
西洋風の身なりをした青年紳士が狩猟をしようとある山奥に入ったが、獲物を一匹も得られず、そのうち山の空気はおどろおどろした黒い空気に巻かれていき、連れてきた2匹の猟犬もろとも遭難してしまう。
している内に「西洋料理店」と看板が出された料理店に辿り着き、そこでいろいろな注文を受けながら料理を待つことに…。
あまりにも有名な本作ながら、あらすじはごく簡略化しました。
ですがあらすじでストーリー全部を言ってしまっても、本作が持つ奇妙な描写展開の奥底に眠る火種は、恐らく全ての読者に「なかなか消えないスリルへの興味」を残すことでしょう。
宮沢作品には童話から「ある一定の恐怖を抽出する」という半ばコンポラ的な描写法が垣間見られるものですが、本作もその一作であり、何気ない風景の中から急に「恐怖の世界」を演出するという、彼ならではのタッチが活き活きしています。
著名作品のためにこの位置づけですが、ストーリー描写の奥底に秘められたまるで老獪な奇妙さは、読了後もその魅惑を奏でる稀な傑作に窺えます。
ぜひ宮沢作品を読むときには、手近な作品として置いてほしい一品です。
関連記事⇒【あらすじ&感想】宮沢賢治『注文の多い料理店』をもっと詳しく知る
17位 種山ヶ原(たねやまがはら)
〈小説版〉
出版社:ゴマブックス
発売日:2016年7月20日
〈スタジオジブリ版〉
出版社:スタジオジブリ
発売日:2006年6月
岩手県奥州市から遠野市にかけてまたがる物見山を頂点とする高原地帯を舞台に、宮沢の愛着が示される光景や自然の美しさを題材に描き出した詩篇を交えた短編小説。
半ば日記風な構成から、地方独特の方言が入り混じる紀行作品としても名高い。
同じくこの種山ヶ原から、『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』をはじめ、多くの詩や短歌が生まれたとされる。
【あらすじ】
種山ヶ原を実際に訪れた宮沢本人の私見から冒頭が描かれ、当地の四季の移ろいから見られる、さまざまな美しくも懐かしい光景と情景が織りなされる。
「達二」の少年時代から青年期に渡る成長の一枠を捉え、その周りで展開される両親との関係模様や、また他の大人と交わしていく成長記録の一部始終が次々に映し出されていく。
果てに出会う「山男」とのドラマから、「達二」にやや神秘的な風景が訪れる。
本作は日記調に仕上げられている半ば「記録の物語」としても読め、まさに宮沢自身が本当に実体験したようなリアルな描写がふんだんに描かれています。
とても朗らかで緩やかな運びを見せており、宮沢文学の生粋にあるともいえる純朴なドラマが前面に打ち出ています。
ストーリーそのものに無理がなく、自然にすらすらと読めてしまう優しい内容ですが、文体には方言を交えた独特の言い回しも冴えてあるため、読解には少し難しいかも知れません。
ですが描写が実に端麗で、中に潜んだユーモアも楽しめるので、気分転換に読んでみたいと言う人にはおすすめです。
16位 土神と狐
出版社:筑摩書房
発売日:1986年5月27日
宮沢が他界した翌年(昭和9年)に発表された短編童話で、愛した女性のために嘘をついてしまう狐と、狐への嫉妬に苦しむ土神とが悲しい結末を迎えるまでを描かれた神話調のアンソロジー。
【あらすじ】
8月のある霧深い夜に、樺の木の近くに来て腰を落ち着けた土神は、自分が好意を持っている狐が西洋美学について話しているのを間近に聞く。
ちょうど人間から土神への供え物が少なくなっていた頃で、その人間の女性を好きになった狐の声を聞くだけでも、土神は狐に嫉妬の念を募らせる。
結局土神はその狐を殺してしまうが、狐には土神が未だ知らない秘密があった。
本作も神秘的な語り口と、擬人化で脚色されたやや神話のようなストーリーですが、内容はまるで人間ドラマに見られるような感情の往来が多分に描かれ、描写は結末へ行くにつれて濃いものになっています。
さらっと読める内容ではなく、半ば心情の移り変わりが複雑な場面もありますので、じっくり腰を落ち着けて読むことをおすすめします。
本作の妙味は恐らく中盤から結末部にあり、「土神」や「狐」といった擬人化されたキャラクターをそのまま人間に置き換えて読み進めてみれば、比較的解釈しやすいかと思います。
15位 風の又三郎
出版社:新潮社
発売日:1989年3月1日
本作も『土神と狐』と同じく宮沢の他界した翌年に発表された短編小説で、『銀河鉄道の夜』や『セロ弾きのゴーシュ』などと並ぶ、宮沢文学の代表作として名高い。昭和6から8年頃に、すでに大正年中に書かれていたいくつかの先駆作品をコラージュしながら書き上げられており、『風野又三郎』というタイトル表記のものがあるが、内容は別物である。
【あらすじ】
高田三郎という小学5年生の少年が、尋常小学校に転校してきたのを機に、幻想と現実が交錯したような、奇妙な展開が繰り広げられる。同小学校の級友である一郎(6年生)や、嘉助(5年生)、耕助(三郎をいじめる級友)らとともに、又三郎の正体をあばくためのいろいろな作戦を試みていく。
まず「又三郎」の存在というものが複雑怪奇の興味を与え、登場する少年らの心に宿る「神というか悪霊」的なあり方に、本作を読んだ中学校当時の私はとても魅力を感じてしまったものでした。
終始、その姿をストーリーの奥深くに伏して隠されてあり、転校生と又三郎とのコラージュというか絶妙の交錯的演出が、ストーリー全体に絶妙なバランスを取り入れています。
学園ものですが、冒頭から結末部までを読み終えてみると、なにか所々に「意味ありげな魅力のツボ」が隠されてあり、又三郎の正体を読者側でも追及したくなる「魔力」のようなものを感じさせられます。
まさに宮沢文学の傑作とも言える一品で、宮沢作品に触れようと言う人には必ず読んでほしい名作です。
14位 イギリス海岸の歌
出版社:筑摩書房
発売日:1986年6月24日
宮沢が農学校在学中に、「イギリス海岸」と名付けた川岸で綴った日記調でありポエム的な、自叙伝風の短編小説。
【あらすじ】
宮沢自身が実際に通っていた農学校近くの川べりで、そこの学校の昼下がりによくそこへ来ては思うことや起きた出来ごとを綴り、また友人らとともに夢見たことや将来設計のことを語り明かした夏をテーマにしたストーリー。
出だしから口調が柔らかく、まるで本人の日記を読まされているような「何気ない風景や情景」が赤裸々に綴られています。
とてものんびりしたテンポでストーリーが進んでいき、ストーリーがあるのかないのか、よくわからないところも「少し変わった小説」を思わす体裁です。
さらっと読みこなすには打ってつけの作品です。
[ad#ad-1]13位 ある恋
出版社:筑摩書房
発売日:1986年6月24日
「新修宮沢賢治全集第六巻」(筑摩書房、昭和55年)に収録された宮沢独特の詩文で、単調なポエムに美しい旋律を奏でた一品。
文体は詩文そのもので僅か6行のポエムですが、内容は日常の恋愛・恋情のあり方に彼特有の形容が折り重ねられ、そのあり方が実に清々しく冴え渡る気持ちのよい一作です。
詩が好きな人や歌などの作詞をする人に恐らく「ウケるだろう」体裁で、一目で読めてしまうところにこの作品の良さがあります。
宮沢作品は主に童話調の作品が多い中、こうした恋情を詠った一作はとても貴重にも映り、読む人にはそれなりの感動や衝撃を与えるかも知れません。
「宮沢賢治のポエムが好きだ」という人には、ぜひおすすめの一品です。
12位 ひのきとひなげし
出版社:筑摩書房
発売日:1985年12月4日
初期形と本文型とがあり初期型では仏教説話が主に挿入され、本文型ではその調子がほとんど払拭されて、花を擬人化したような宮沢ならではの脚色が取られている。童話調の短編作品。
【あらすじ】
ひなげしの環境の様子から冒頭が始まり、そのひなげしを囲む形で揺らめく風や太陽、けしの花、黒斑の花など、それぞれの生命に感情を持たせて1つのストーリーができている。
地上の何気ない風景の描写からとたんに宇宙で光る1番星の様子を描き、やや幻想チックな締めくくりで閉じる。
宮沢賢治といえば幻想ロマンの大家でもあり、その幻想への脚色が非常に秀逸な小品です。
サイズはショートストーリーの体裁ですが、内容はなかなか一読では読み取れない「深い奥行き」のようなものを醸し出します。
『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』、『火の鳥』(ポエム)などに込められた「幻想風景」にしてやられた人には、ぜひ本作も読んで頂きたいです。
素直なロマンスが飾られています。
11位 星めぐりの歌
出版社:筑摩書房
発売日:1986年6月24日
初出は『宮沢賢治全集抜粋・鏡をつるし』(編集発行:宮沢清六、昭和8年)に収録。
「双子の星」チョンセ童子とポワセ童子が銀笛で吹く「星めぐりの歌」の歌詞であり、『銀河鉄道の夜』にも出てくる(重要な場面での進行に効果を発揮していた)。
本作も宮沢のポエム(歌詞)であり、星座を喩えに用いた独特の形容で仕上げられています。
『銀河鉄道の夜』など、彼の作品内でも宇宙をもじったような膨大なロマンを詠い、その中で人と自然との協和を巧く結びつけようとするような、珍しい懐古調の言い回しも垣間見られます。
本作も『ある恋』と同様にさらっと読めるポエムの一作で、彼の作品を読んで素直にロマンスに浸りたい、素直に感動したい、という人に超おすすめの一品です。
私としては彼のポエムの中で1番好きな作品かも知れません。
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