安部公房のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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安部公房のおすすめ小説ランキング:第3位~第1位

3位 壁

出版社:新潮社
発売日:1969年5月20日

「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」(「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」)の3部(6編)からなるオムニバス形式の作品集。

言わずと知れた安部公房が掲げる全霊的な作品であり、いわば公房が持つあらゆる「本能からなる正直」というものがふんだんに詰め込まれた至高の傑作。

私は本作を読み始めた頃、ちょうど「現実と人との壁」、あるいは「自分と他人との間にある壁」というような“壁”をワードにした妄想に取り憑かれてこともあり、本作の妙味は実に鮮明に私の正直を打ち震わせ、今でもはっきり「本作が持つ教科書のような絶対さ」とでもいった前例のない“痛快的魅力”を覚えています。

ある名前を忘れた男が人の生活を送る上でその本質的な技術を失い、他人や世情と交際していても何かに追われるような“不安と恐怖”を連続して感じるようになります。

公房得意の“虚無性”と“冒険性”が人から自然に向けて飛び立ってゆくような「痛快的な発見」が目白押しで、読んでいるうち「名前に逃げられた男」がどんな「人間らしさ」を成長させてゆくのかという斬新な興味に打ちのめされます。

たとえば筒井康隆作品を読んで感動を覚えた人には本作の妙味はたやすく伝わるでしょう。

安部公房を読むにはまず“避けられない一作”ですので、ぜひ一度手に取って読んで頂きたいです。
テーマ、表現、脚色・形容そのどれもが素晴らしく、私の本作から得た未到の衝撃は未だ冷めていません。


2位 第四間氷期

出版社:新潮社
発売日:1970/11/27

公房中期に描かれたSF長編で、「序曲」「プログラムカードNo.1」「プログラムカードNo.2」「間奏曲」「ブループリント」の5章から成るプロット形式の重厚なパラドックス小説。

ある中年の男が以前から温存してきた夢を暴露するように、電子科学に人類の未来予想図を予測させ、そのうちで自分の未来図も知って運命を受容してゆくSF傾向の強い作品です。

長編なのでもう少し順位を下げようと思ったのですが、表現が平易であるのと内容の骨子が掴みやすい作品でもありますので、そのテーマの面白さを取ってこの位置につけています。

ハプニングに次ぐハプニング、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続で、ストーリー性が静かなのに対しその結末は恐らく誰も予測できない驚愕の代物です。
まず“神秘的…”と言ってよいほどです。
私は本作を恐らく30回は読んでいます。


ランキング [ad#ad-1]

1位 笑う月

出版社:新潮社
発売日:1984年7月27日

安部公房の随筆集で17編の断片的な随筆・小品で仕上げられるオムニバス形式の作品です。
公房が幼少の頃から見続けてきた“月に追いかけられる夢”を存分に生け捕り平面図化し、「笑う月」そのものの内実を自分本位に解き明かしてゆく。
いえば幻想小説に近い作品と言えます。

・「夢は意識されない補助エンジンなのかもしれない」
・「夢というやつは、白昼の光にさらされたとたん、見る見る色あせ、変質しはじめる」
・「ぼくは枕元にテープ・レコーダーを常備して待つことにした。
見た夢をその場で生け捕りにするためである」
・「つまり肝心なのは、笑う月の身元や正体などではなく、笑う月そのものなのである」
(安部公房『笑う月』より)
このセンテンスの並びを見ただけで察しがつくことと思いますが、氏は夢日記をつけており、その夢で見続けてきた「笑う月」の正体を“睡眠”と“感覚(いしき)”という二項を軸にして、意識下において論証しようと試みます。

本作はすでに作品というよりも「図解析絵本」のような感覚を読者に与え、恐らく読者はそのプロットの果(さ)きに“自分の夢”を二重写しにする形で感動と共感を得ることだと思います。

私もずいぶん前から自分の『夢日記』をつけているので、本作を読んだときには脅威を感じるほどその面白みを味わいました。

随筆ですがそこは公房独自の文体により非常に“評論”に近い表現で、内容把握も実にたやすく、さらに短編サイズですので読むのに時間も労力も比較的要らないと思います。

本作を読めばまるで公房の思考回路を網羅できるほどの出来栄えで、公房作品の内では「実に手ごろな傑作」と言えそうです。

次点紹介

以下、今回のランキングには入れませんでしたが、私のおすすめする次点作品を紹介します。

次点 箱男

出版社:新潮社
発売日:1973年3月-1974年2月

民主主義の理念をシニカルに綴った長編小説で、『燃えつきた地図』の後続作品です。

ダンボール箱を頭から腰まですっぽりとかぶり、覗き窓から外の世界を見つめて都市をさまよう「箱男」の記録の物語。

本作もドラマ化・映画化されたもはや“伝説化”している作品ですが、内容は公房の独創世界が活き活き漲っている重厚の代物で、『壁』や『砂の女』に次いでその傑作性を思わせられる現代風刺の大衆作です。

表現もさることながら、そのテーマやストーリーはすっと心に解け込むような仕上がりで、読んでいて“素直に感動できる公房の一作”そのものにあげられる作品です。

詳細に言えば、従来の公房作品の出来とは少し異質な部分が垣間見られます。

『箱男』は恐らく映像化されたものがより世間に浸透していると思われますので、小説版を知らない人にはぜひ読んで頂きたく、次点にあげさせて頂きました。

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まとめ

ここまで読んで頂きありがとうございます。

以下に、私がおすすめする安部公房著作の作品を纏めます。

・1位 笑う月
・2位 第四間氷期
・3位 壁
・4位 おまえにも罪がある
・5位 子供部屋
・6位 カーブの向う
・7位 無関係な死
・8位 ごろつき
・9位 砂の女
・10位 IS・カルマ氏の犯罪
・11位 カンガルー・ノート
・12位 榎本武揚
・13位 方舟さくら丸
・14位 虚構
・15位 他人の顔
・16位 水中都市
・17位 人間そっくり
・18位 燃えつきた地図
・19位 友達
・20位 R62号の発明

ランキングに入れた作品には(私的感想や見解)が多分に含まれていますが、恐らく全ての読者に“壮大な発見と感動”を与える傑作ばかりだと自負しています。

私が安部公房を本格的に知ったのは恐らく高校生頃で、そのときには「なんて論理的・専門的に小説を書く人なんだ…」と、それまでに見てきた有名作家が書く作品とは一風違った味わいを楽しめたものでした。

安部公房の作品の魅力には主に3つの点があると思います。

・論理的説明によるはっきりとした解析
・突拍子もない斬新なアイデアをもって“灯台下暗し的な発見”を与える
・人として可能な限りの「本能と自然」に対する無限の冒険性

どれも純粋に感動できるものばかりですが、私は最後にあげた「人として可能な限りの「本能と自然」に対する無限の冒険性」というのに、公房が読者に与える最大の魅力があると思っています。

その公房が奏でる実に独創的なアイデアをもって、読者は恐らく“それまで知らなかった、考えもしなかった新しい発見”を得ることができ、その「発見」はやがて自己啓発や、人の自然に対する未知の冒険譚を綴らせる契機になってくれる。

この辺りに、公房作品の威力というか、“すごみ”のようなものが隠されていると思います。

いえば論理的思考をもってまず読者を納得させ、次に斬新な発想で読者の興味を「未知のフィールド」へ向かわせ、さらに人が本能的に覚える「生への正直な感想」を連続して描くことで読者に“新しい概念”を植え付けるという、3つのパターンによって作品が描かれたのではないかと、公房作品を通読するうち思わされます。

きっと公房作品を読み続けてゆくうち、あなたはその描写の内に“自分の姿・正直”を何度も垣間見ることと思います。

ぜひあなたの文学コレクションに、「安部公房の特異な世界」というやつを加えてみて下さい。

あなたの素敵な小説との出会いを願っています。


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