この世にたやすい仕事はない 原作小説5つの仕事のあらすじ&感想

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「この世にたやすい仕事はない」とはよく言われること。
楽して稼げるほど世の中甘くないと……

仕事の中身というのは多種多様。
一般的に営業であるとか、事務であるとか、まあまあイメージしやすい職業というのはありますね。

しかし、『この世にたやすい仕事はない』で扱われているのは、あまり知り合いがやってると聞いたことがないような、メチャクチャ渋いお仕事なのです。

少し前TVを見ていたら、お笑い芸人さんが売れないころにした仕事というので、“流木拾い”というのがあって、感心したことがあります。
なんでも河原へ行って、味のある形の流木を拾い集め、芸術家に買い取ってもらうというの。

世の中は「知らない仕事」で溢れかえっているのですね。
普通に暮らしていたら、一生知らないであろう「レアな仕事」を、芥川賞作家の津村記久子が面白おかしく、あざやかに書いています。

「こんな仕事があったのか」と目からウロコが落ちること間違い無しの小説『この世にたやすい仕事はない』のあらすじ&感想をご紹介します。

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この世にたやすい仕事はない 作品説明


著者:津村 記久子
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2015/10/16

【ドラマ化決定】
チャンネル:BSプレミアム
放送日:2017年4月6日(木)スタート PM11:00~11:29
キャスト:真野恵里菜、塚本高史、浅野温子ほか

第1話 みはりの仕事

シンプルすぎる題名に、探偵か!?と即断するのは早とちりというものです。

実際は、机の上にモニタを2台並べて、要注意人物を1日中監視するという仕事です。
「私」が担当しているのは、女性作家のみはり。
作家は、知人からそれとは知らず密輸品(ブツ)を預かっているらしく、家にカメラを仕掛けて、ブツを知人が取りに来るのをみはっているのです。

ブツの内容も知らされぬまま、ただみはる。
自宅が仕事場の作家は、基本家にいる、それをみはる。
非合法だし、雇い主は誰だ?って感じ(笑)

結果、モニタ越しに作家の動向を推理するという「私」の機転で、ブツは確保されるのですが……

モニタとにらめっこする女。
なんて退屈な題材と思いきや、めっちゃ笑ってしまいました。

だって、「私」が作家のネット宅配の買物に触発されて、商品を探してしまうとか、監視対象のお部屋のセンスに感化されるとか……
PC越しに作家の作品を読んで、下手くそな文章にツッコミを入れるとか……

登場人物がひとりのドラマを一日中見るなんて、わたしにはムリだわ~。

第2話 バスのアナウンスの仕事

「私」が仕事を選ぶ基準は、「コラーゲンの抽出を見守るような仕事」。

なんでも、14年間頑張った前の職場で心身ともにボロボロになって退職したため、がっつり会社組織の一員になりたくないので……ということ。

「みはる」という「見守る」に限りなく近い仕事も長続きせず、次に就いた仕事は、町の循環バスに流れる、アナウンスの原稿を書くというもの。
実際は正社員の補助をするだけなのですが。

アナウンスする対象は、肛門科から老舗の菓子屋、フラメンコセンターまで。
地域活性、集客が目的の裏方的なお仕事です。

ある時、「私」はアナウンス原稿の謎に気付きます。
原稿が書かれた時点では、対象のお店はなく、アナウンスが流れると店が出現する、
試しにアナウンスを止めてみると、店がつぶれるという現象。

ね、不思議でしょう。
調べるしかないって思った「私」が、歩きまわって店の所在を確認したり、聞き込みにまわったり、いつの間にか仕事に入れ込んでしまっているのがおかしいです。

「そこまで要求されてないのに!!」っていうことをしてしまう「私」。
止められない好奇心に、共感してしまいます。

第3話 おかきの袋の仕事

アナウンス原稿の仕事が一段落して、次に就いたのが、中堅のお菓子メーカー。
ここで「私」にまかされたのが、個包装のおかきの袋裏に“役立つ豆知識”的な情報を書くという仕事。
言わばコラムニスト。

主力商品全てのおかきの袋裏に【読んで得した、家族が豆知識の話題でもりあがった、果ては、受験勉強にも役立った】と思えるような情報を、厳選して書くのです。
(ありえない、頭がどうにかなりそう)

例えば「ふじこさん おしょうゆ」という名前のおかき。
半透明の袋裏には、「ふじこさん」と思しき女性が吹き出し付きで書かれています。
「ふじこさん」の人物像は、親切で世話好き、そしてオッチョコチョイだという設定。

そんな人物にどんな豆知識をしゃべらせようか。
考えるだけでめまいがしそうですね。
もっと簡単な仕事がしたかったのに!!という「私」の悲鳴が聞こえそう。

相談もなく、ふじこキャラを設定され、社長からは好きなように書いてねと軽く言われ、書いたら徹底的にダメ出しされ……

個人的にこのお話が一番好きです。
ネタ作りの「私」の苦悩、苦闘がガンガンに伝わってくるのです。
気の毒でありながら、いっぱい笑ってしまいました。

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第4話 路地を訪ねる仕事

デスクワークに懲りた「私」が次に就いたのは、町内にポスターを貼ってまわるという仕事。
単純な仕事を!と切望した結果でもあります。

「町内緑化」「節水」などの市民にうったえかけるポスターを、すでに貼っているお宅を訪問して、貼り替えの許可をもらうというもの。

デザインの個人事務所が発注している仕事で、ポスターはなかなかのセンスです。

ポスターを貼っている家の特徴として、「節水」などと同時に、多くの家に「さびしくない」というポスターが、対になって貼られていることがあります。

そして、この地区に【さびしくない】という、謎の組織が存在していることを知ります。
【さびしくない】の活動は、さびしい住民をみつけ出し、集会所に誘うというもの。

「私」は、【さびしくない】に不正の匂いをかぎつけて、潜入捜査よろしく集会所に乗りこむのですが……

「私」はどうも、余計なことに首を突っ込みすぎるみたいです
頼まれた、期待されている以上の仕事をしてしまう。
だから、おもしろい出来事に遭遇しちゃうのですが……

作者が大阪人であるせいか、大阪のオバちゃん的好奇心があちこちに出ていて楽しいです!

最後に、デザイン事務所と【さびしくない】の因果関係が判明するなど「ほぉー」っと感心するようなオチもついていますよ。

けっこう活動的な「私」、外回りが向いてそうですね。

第5話 大きな森の小屋での簡単な仕事

通算5つ目は、デスクワークと外回りを兼ねた仕事です。
西から東まで、歩いて3時間という広大な土地を持つ、大森林公園の一角が「私」の職場。

何をするかと言うと、公園の「森の恵み」という食べられる木の実なんかが、多数しげっている地域の小屋(詰め所)に1日居るというもの。

そして、時間があれば(いっぱいあります)森林を散策し、「森の恵み」の地図を埋めてゆく
移動は専用のカート、ひとりで自由行動ができ、小屋は居心地良く、全てはうまくゆくはずでした。

でした、というのは気になることが一つあって……
基本ひとりぼっちのお仕事なのに、そこここで人の気配を感じてしまうのです。

「私」は「気配をかもす人」の性格を予測し、わなをしかけ、大森林公園の侵入者を追い詰めるのですが……

お仕事小説の枠をずいぶん越えて、もはや探偵小説の域です。
こう言ってはなんですが、スリリングでアンビリーバボーです。

「私」が事件を呼び寄せていると言っても、いいくらい。
またもや、仕事の範疇をこえて活躍してしまいます。

いつまでたっても簡単な仕事に出会えないのは、当人のこういった性格のなせるワザなのでしょう。
仕事と相思相愛になって、ズブズブにはまり込む。
それが良くないって自己分析ができているのに、やめられない。

常に本気を出すのって、疲れが増すのですよね。

まとめ

『この世にたやすい仕事はない』は、いっけんつまらなさそうな仕事でも、ある程度の熱を持ってやることで、おもしろくなるということが書かれた小説。

「たやすい仕事」とは「たやすそうに見えている仕事」だけであって、いざ足を踏み入れてみると、思いがけずに深いものだよ、と作者が語っているような気がします。

いろんな種類の仕事にあたってくだけるのも良いのかな?
意外な適性に気づいたりして……

いつの間にか「たやすくて、たやすくない仕事」が、アナタの天職になっているかも(笑)


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