学生のころは、夏休みなどで「読書感想文」の宿題が出されることが多いことでしょう。
文章を書くのが苦手だったり、そもそもどの本を選んだらいいのか悩むこともあるかと思います。
ここでは、そんな高校生のあなた向けに、読書感想文で書きやすいおすすめの本を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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『明日の夜明け』
著者:時無ゆたか
出版社:角川書店
発売日:2001年11月30日
【簡単なあらすじ】
一週間後に文化祭を控えた夜見月高校。
早宮功も展示の準備を終え帰宅しようとした時、校舎を大地震が襲った。
崖崩れのうえに電話も不通、さらに触れただけで激痛がはしる霧のため校舎は陸の孤島に。
功たちは脱出方法を探すが3年生の松原や教師尾造を死体で発見してしまう。
この校舎の中に殺人鬼が!?パニックに陥る生徒たち。
しかしそのなかで、ある少女の姿を思い浮かべる女生徒がいた。
次々とおこる殺人は蘇る死者のしわざか?学校をとりまく悪意の正体とは?
【おすすめの理由】
学園モノのミステリー小説です。
ヒューマンドラマの仕上がりですが、よほど緻密に練られたスリリングな展開が読者の目を繋ぎ止めて離さないでしょう。
舞台は、濃霧のような霧に現実世界と遮断された学校。
その隔離された薄暗い学校の中で、1人ずつ消えてゆく級友たち…。
時計を見れば時間が止まっている。
「殺人鬼が学校の中にいる」と疑心暗鬼に駆られだす仲間たちは、次第に互いを疑い始める。
その級友の中で唯一「魔女」と呼ばれる綺音の存在が、ストーリーが進むにつれて、とても好いバランス取りになってきます。
展開を読み進めていくうちに推理したり、キャラクターそれぞれの立場に自分の身を置き換えてみるだけでも、感想を書くネタは次々にあふれ出すことと思います。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
基本的にミステリーなので、推理しながら読み解く上で疑問に思えてくる描写や場面をピックアップし、素直に感じたことをそのまま書けば一通りの感想文になるかと思います。
展開を追いながら「ここの描写はムリがあるんじゃないか?」とか、「こういう出来ごとが起きても、やっぱりこうはならないだろう」といった不条理に思える場面について思うことを書いてもよいし、「ああこの場面は確かによく書けてる」や「このギミック(しかけ)は面白い」などといったほめる点をあげても、魅力的な感想文ができあがると思います。
ストーリー自体がいろいろ空想させてくれるので、あなた自身が「こういう展開の推理も面白い」と思うところがあれば、その点を書いてみるのもよいでしょう。
『涼宮ハルヒの憂鬱』
著者:谷川流
出版社:角川書店
発売日:2003年6月1日
【簡単なあらすじ】
『涼宮ハルヒの憂鬱』(すずみやハルヒのゆううつ)をはじめとする、谷川流によるライトノベルシリーズ。
「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」高校入学早々、この突飛な自己紹介をした涼宮ハルヒ。美少女なのだが、その性格・言動は変人そのものであり、クラスの中で孤立していた。
しかし、そんなハルヒに好奇心で話しかけた「ただの人間」である、キョンとだけは会話をするようになる。ゴールデンウィークも過ぎたある日、校内に自分が楽しめる部活がないことを嘆いていたハルヒは、キョンの発言をきっかけに自分で新しい部活を作ることを思いつく。
引用元:wikipedia
【おすすめの理由】
独特の世界観を駆使した「日常」を描き、いろんな出来ごととともにキャラクターが成長していく育成型ドラマ。
ストーリーはヒューマンドラマの仕上がりです。
なかば地に足のついたストーリーでありながら、それでもやや幻想に富んだ面白い作品を読みたい人におススメ!
構成や展開がわかりやすく、心理面の描写にもおそらく納得いく場面が多いので、感想文も書きやすいかと。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
何といっても「涼宮ハルヒシリーズ」はキャラクターの魅力がウリなので、各キャラクターの気持ちに陶酔する形で読み進めることをおススメします。
そして主人公やヒロイン役のハルヒ、また周りで立ち回る魅力的なキャラクターの動きを押さえておいて、誰か1人について感想を書くというのも、すらすら書ける秘訣になるかと思います。
↓参考DVD↓
『涼宮ハルヒの憂鬱 ブルーレイ コンプリート BOX』
出演:平野綾、杉田智和(他)
販売元:角川映画
発売日:2010年11月26日
『愚者のエンドロール』
著者:米澤穂信
出版社:角川書店
発売日:2002年7月31日
【簡単なあらすじ】
「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。
その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。
誰が彼を殺したのか?その方法は?
だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。
続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した。
さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。
【おすすめの理由】
角川ミステリー作の1つにじゅうぶん入る、構成が実に見事な1作です。
映画の世界から、急に現実の世界に事件が飛び火していく展開は、まるで本物のドラマを観ているような気分になれて、いろいろ感情が揺さぶられると思います。
いい刺激がいっぱい詰まった作品です。
そこで覚えた疑惑や想像のタネをもとに感想文を書いていけば、それだけで「あなた独自の魅力的な感想文」が仕上がるでしょう。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
ミステリーものというのは基本、人の感情を小さく大きく揺さぶるもので、その感情の揺れから、さまざまな感想を覚えさせるものです。
ですから、ストーリーを読んでいって覚えた感想・感動をそのまま書けば、それだけで一応の感想文にはなるものです。
とりあえずアドバイスとしては、あなたが気に入った(または気になった)場面を1つ1つピックアップしてみて、そこで感じたことがらをメモ書きし、そのメモをもとに構成しながら1つの文章にしてみて下さい。
きっと書いているうちにまた、別の感想が芽生えることだと思います。
そうして派生する思いを書いていけば、けっこう長文の感想文にもなるでしょう。
『増補新訂版 アンネの日記』
著者:アンネ・フランク
翻訳:深町眞理子
出版社:文藝春秋
発売日:2003年4月1日
【簡単なあらすじ】
1926年、ドイツで裕福なドイツ系ユダヤ人家庭の二女として生まれたアンネはナチスの迫害を逃れ、一家でオランダのアムステルダムに移住。
1944年、姉マルゴーの召喚を機に一家で隠れ家生活に入る。ついに1944年、ナチにより連行され、最後はベルゲン=ベルゼン強制収容所でチフスのため15歳で亡くなった。
ナチスに捕らわれる前まで書き続けていた日記には、自分用に書いた日記と、公表を期して清書した日記の2種類がある。
本書はその二つを編集した「完全版」に、さらに新たに発見された日記を加えた「増補新訂版」。
ナチ占領下の異常な環境の中で、13歳から15歳という多感な思春期を過ごした少女の夢と悩みが瑞々しく甦る。ユネスコ世界記憶遺産。
【おすすめの理由】
実話をもとにしたドキュメンタリの作品です。
文学ジャンルでは、日記文学に分けられます。
ナチスドイツが台頭していた第二次世界大戦当時、アンネという1人の少女が、劣遇に見舞われながらさまざまな思いを記述していきます。
なかば悲哀に満ちた、残酷なドラマも待ち構えていますが、それよりも「人のあり方や、愛情というものは、どのように扱われてあるべきか?」という、人間存在の極限について描かれる辺りが秀逸です。
少しヒューマンドラマ調のドキュメンタリとしてはテーマが重厚で、内容解釈には難しい場面があるかも知れません。
ですが、このような史実にもとづく傑作が、この世に確実に存在するということを知って頂きたく、今回紹介させて頂きました。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
まずドキュメンタリ作品は皆そうですが、当時資料(同時代の資料)を先に読んでおくが大切です。
どういう背景や世情があって、登場人物をはじめ作中の出来ごとはどのような扱いや、成り立ちをしていたのかという、その骨子の部分を土台にして下さい。
そしてその当時資料を読んでみて「どのように感じたか?」、「もっとこうあるべきではないか?」、「この部分は今後においても課題といえる」というような、自分で解釈できる考えを先に持つことです。
その「当時の世情や出来ごとに対する、自分自身の考えや感想」を別に持っておき、本作のストーリー描写を読んでいくと、本作の意図がはっきりわかる上で「自分の主張」をしっかり植えつけた深みのある感想文が書けるでしょう。
↓参考書籍↓
【1】『アンネ・フランク―短い生涯を日記に残した少女』
著者:アン・クレイマー
出版社:BL出版
発売日:2008年6月1日
【2】『アンネ・フランク(学研まんがNEW世界の伝記)』
監修:石岡史子(他)
出版社:学研教育出版
発売日:2015年7月1日
【3】『アンネ・フランク』
監修:高橋数樹(他)
出版社:ポプラ社
発売日:2011年8月1日
『斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇』
著者:太宰治
出版社:文藝春秋
発売日:2000年10月1日
【簡単なあらすじ】
今回おススメするのは『人間失格』です。
没落貴族の家庭を背景に、滅びゆく高貴な美を描く『斜陽』。太宰文学の総決算ともいうべき、小説化された自画像『人間失格』。ふたりの若者の信頼と友情を力強く表現した『走れメロス』など、20世紀の日本が生んだ天才作家の名作11篇を収める。奥野健男氏のくわしい年譜、臼井吉見氏のこまやかな作品案内と作家評伝付き。
【おすすめの理由】
太宰治の作品は、おそらく思春期辺りにいる青年に多大な影響力を与えます。その影響力は、その後の人生を変えるほどに大きく、恐らく何をするにせよ楽になれるでしょう。そう太宰作品には、麻薬のような一種の快楽を与える不思議な力が存在するようです。
とくにこの中でも、『人間失格』をおススメします。本作中の言葉1つ1つに、作者・太宰の本音のようなものがいくつも並んでいて、たいていの読者は「そのとき思っていること・悩んでいること」の図星を突かれます。このとき、感想のネタは個人十色(こじんといろ)で自然に沸きあがってくるでしょう。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
太宰作品を読むときは、まず陶酔して下さい。自己陶酔して読み進めていくうちに、随時に思うこと・感じたことを、何でもいいのでメモしていって下さい。
感想文を書くときには、このメモがそのまま骨子になってくれる場合があります。この感想文を書くときでも、陶酔力による執筆を忘れずに。まずは心に涌き出ることをそのまま書いてみて、あとで文章や文体の構成を図るとよいでしょう。この太宰作品を読むときも、太宰が生きた当時の同時代資料を読むことをおススメします。
↓参考書籍↓
【1】『太宰治 新潮日本文学アルバム〈19〉』
著者:太宰治
出版社:新潮社
発売日:1983年9月
【2】『読んでおきたいベスト集! 太宰治』
著者:太宰治
出版社:宝島社
発売日:2011年7月7日
『掌の小説』
著者:川端康成
出版社:新潮社
発売日:1971年3月17日
【簡単なあらすじ】
唯一の肉親である祖父の火葬を扱った自伝的な「骨拾い」、町へ売られていく娘が母親の情けで恋人のバス運転手と一夜を過す「有難う」など、豊富な詩情と清新でデリケートな感覚、そしてあくまで非情な人生観によって独自な作風を打ち立てた著者の、その詩情のしたたりとも言うべき「掌編小説」122編を収録した。
若い日から40余年にわたって書き続けられた、川端文学の精華である。
【おすすめの理由】
幻想文学の真骨頂とも言われる、川端文学の神髄的作品です。
「ちょっと変わった感覚の小説を読んでみたい」という人には超おススメ!
「普通の小説には飽きた!」と言う人には、それまで味わえなかった感動が押し寄せるでしょう。
本作は122編のショートショートの作品からなり、そのどれもが非常に短く区切られた掌サイズの小説です。
このうちで特におススメしたいのは、『神の骨』、『弱き器』、『雀の媒酌』、『不死』でしょうか。
どれでもよいので、あなたが「これ!」と気に入った作品を選んで読んでみて下さい。
どれも先述の通り短いのですぐ読めます。
短いストーリーの中に、非常に濃厚なテーマや表現が満載なので、読みやすい上に感想文を書く都合のよい作品になると思い、ご紹介しました。
加えて川端作品というのは、読者に空想させやすい箇所がいくつもあるので、感想文を書くときの題材に非常に適しています。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
まずは自分が気に入った作品を選んで下さい。
川端作品は「新感覚」と言われるほど、非常に「訳の分からない表現」も並んであるため、自分がしっくりくる1作を選んで吟味しないと、感想文を書くのでさえままならないことがあります(それでも何となくで、ありていには書けますが)。
お気に入りの1作を選んだあと、その作品に書かれた内容の裏側まで読む勢いで、精読することをおススメします。
「精読」というのは、文面をあらゆる角度から読み解いて、作者の主張をあれこれと探す作業をいいます。
精読することで、川端作品はその妙味(魅力や隠れた主張)を発揮してきます。
そのあなただけが知ることのできた、精読によって得られた解釈をもとに、あなたが思うこと・感じることをそのまま書いていって下さい。あとは校正をして感想文のできあがりです。
[ad#ad-1]『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション』
著者:江戸川乱歩
出版社:角川グループパブリッシング
発売日:2008年5月24日
【簡単なあらすじ】
貧しい椅子職人は、世にも醜い容貌のせいで、常に孤独だった。
惨めな日々の中で思いつめた男は、納品前の大きな肘掛椅子の中に身を潜める。
その椅子は、若く美しい夫人の住む立派な屋敷に運び込まれ…。
椅子の皮一枚を隔てた、女体の感触に溺れる男の偏執的な愛を描く表題作ほか、乱歩自身が代表作と認める怪奇浪漫文学の作品「押絵と旅する男」など、傑作中の傑作を収録するベストセレクション第1弾。
【おすすめの理由】
おススメするのは『人間椅子』。
乱歩ミステリー(ホラー)の中でも、とくに際立った名作です。
じわじわとくる恐怖の戦慄が、ページ越しのあなたにも届くほどでしょう。
先述しましたが、ミステリー系・ホラー系作品というのは、それだけで人の感情を揺さぶり、とても心を鋭敏(えいびん)にしてくれます。
したがって、心が鋭く、機敏になったぶん、いろいろな感想・想像を沸かせてくれるのです。
この沸き上がる感想をもとに、あなた独自の魅力的な感想文を書きあげて下さい。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
視点は2つ、でしょうか。
1つめは、椅子を買い、その椅子に座って、やがては恐怖を覚えることになる夫人の心情に焦点を当てる。
2つめは、世にも醜い容姿を持ち、それでも女体の感触を味わいたいと深く切実に希望した、椅子職人の立場と心情。
どちらの視点・立場を追っていっても、面白い感想文が書けると思います。
もし自分がその椅子に座っていたら…(この場合、あなたが男性なら、ストーカーを働く女性を思い浮かべるとよいでしょう)。
もし自分がその椅子にもぐり込んだ椅子職人なら…(この場合は、どうしてもあなたがほしいと願う、理想の男性/女性を思い浮かべるとよいでしょうか)。
突っ込んで突っ込んで書いていくほど、面白い、独創的な簡素文書けるように思います。
↓参考書籍↓
【1】『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』
著者:江戸川乱歩
出版社:光文社
発売日:2004年7月14日
【2】『江戸川乱歩の迷宮世界』
洋泉社MOOK
出版社:洋泉社
発売日:2014年6月2日
『壁』
著者:安部公房
出版社:新潮社
発売日:1969年5月20日
【簡単なあらすじ】
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。
以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。
自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。
他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。
そして…。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。
【おすすめの理由】
哲学的、思想学的な1作です。
日頃から、人生や人間について深く考える人にはおススメできるでしょうか。
少し難解な表記や表現がありますが、高校生時分からこのような作品に当たっていれば、その後の読書も比較的たやすく読めるかと思い、あげてみました。
しっくりくる人には、日頃から漠然と思っていたことが紐解(ひもと)かれるように、するするするする感想としてあがってくることでしょう。
その思いや感動をもとに感想文を仕上げていけば、短時間でかなりの分量の感想文を書けると思います。
つまり、感想を書くのが早くなる作品です。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
すぐに感想文に取りかからずに、まずはじっくり読み説いて下さい。
本作はこの「読む時間」をできるだけ多く取ることで、感想を書かせる題材をさらに与えてくれるでしょう。
本作は3部からなる章立てのストーリーで、その1部ずつに非常に興味深い内容が詰め込まれています。
ですので、あなたが気に入った(気になった)章をピックアップしてみて、その内容の中から「感動した箇所」をさらにピックアップして感想を書いてもぜんぜんOKだと思います(それだけでもかなりの感想を書けると思います)。
できれば本作と並行して、『燃えつきた地図』(新潮社、昭和42年)も読んでみて下さい。
構成や本意の辺りが密接に絡み合って通底してくるようなので、それでも独特な感想を書けるでしょう。
↓参考書籍↓
【1】『燃えつきた地図』
著者:安部公房
出版社:新潮社
発売日:1980年1月29日
【2】『安部公房とはだれか』
著者:木村陽子
出版社:笠間書院
発売日:2013年5月20日
【3】『戦後前衛映画と文学:安部公房×勅使河原宏』
著者:友田義行
出版社:人文書院
発売日:2012年3月5日
『こころ 坊っちゃん』
著者:夏目漱石
出版社:文藝春秋
発売日:1996年3月1日
【簡単なあらすじ】
今回おススメするのは『こころ』です。
3部立ての長編小説。
―上 先生と私―
語り手は「私」。時は明治末期。夏休みに鎌倉由比ヶ浜に海水浴に来ていた「私」は、同じく来ていた「先生」と出会い、交流を始め、東京に帰った後も先生の家に出入りするようになる。先生は私に何度も謎めいた、そして教訓めいたことを言う。
―中 両親と私―
語り手は「私」。腎臓病が重かった父親は、ますます健康を損ない、私は東京へ帰る日を延ばした。実家に親類が集まり、父の容態がいよいよ危なくなってきたところへ、先生から分厚い手紙が届く。手紙が先生の遺書だと気づいた私は、東京行きの汽車に飛び乗った。
―下 先生と遺書―
「先生」の手紙。「先生」の手紙には謎に包まれた彼の過去が綴られていた。「K」や「お嬢さん」らとの関係とその顛末、「先生」が「私」に語った謎めいた言葉たちの真相が明かされる。
【おすすめの理由】
ヒューマンドラマの真骨頂、うちに恋愛を絡めた「人間」を描き切った傑作です。
人生についてもの思うひと、友情・恋愛をしている人(悩んでいる人)、人の心について興味のある人にはおススメできる作品です。
おそらく夏目漱石の作品のうちで最も有名な1作と思われ、早くからこういう作品と出会っていると、その後も何かと糧になる上でよい刺激となるでしょう(大学受験の現国の問題にも出題されたほどです)。
描いているテーマは「人間」ですから、誰でも熟読でき、それなりの感想を持つことができます。
自分の境遇に置き換えるもよし、作中の出来ごとをそのまま「フィクション」として捉えるもよしで、どのように読んでみても感想文を書くときの題材・テーマはすぐにあがってくることでしょう。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
取るべき視点は豊富に5つでしょうか。
●1つめは「私」の視点
作中の「私」となって、「先生」の言動や「K」の行為(自殺)についてそのまま考慮してみることで、客観的な感想文を書くことができるでしょう。
●2つめは「先生」の立場や視点
自分が恋愛をしていたときを思い起こして、もじもじしている間に誰かに好きな人を取られそうになったとき、急に独占欲に駆られてその割り込んだ人をないがしろにする。
そのことによりその割り込んだ人が自殺してしまったら、自分はどう思うだろうか?
また、恋愛というのは人にとってどういうものか?
この辺りを推測するように考えていってもよいでしょう。
●3つめは「K」の視点
本気で好きになった人はもう、他人のものになって帰らない。
その他人が自分のよく知る人(友人など)。
それで自殺をとげてしまう身の上の真意とは?
●4つめは「静」の立場と視点
「静」は先生とまず見合いをし、「先生」のことを好きになります。
その後「K」に言い寄られ、もじもじしていた奥手の「先生」から少し離れて、「K」の意見を聞き始めます。
そして突如アプローチしてきた「先生」のもとにまた返り、自分に告白してくれた「K」はそのまま自殺します。
このときの「静」の心情とはいかに?
●5つめは読者(あなた)の視点
完全なる第三者の視点とでもいいましょうか。
作中のどの人物の立場や感情にも肩入れせず、完全なる客観的な視点と思考とをもって、最後まで、それぞれのキャラクターのあり方や心の動きをジャッジする立場です。
この5つのどの視点や立場に立って書いてみても、とても魅力的で面白い感想文を書くことができるでしょう。
↓参考書籍↓
【1】『こころ(まんがで読破)』
著者:夏目漱石
出版社:イースト・プレス
発売日:2007年7月1日
【2】『夏目漱石『こころ』をどう読むか』
編集:石原千秋
出版社:河出書房新社
発売日:2014年5月20日
『犯人』
著者:太宰治
出版社:筑摩書房
発売日:1989年5月30日
【簡単なあらすじ】
サラリーマンの通称「鶴」とOLの「森ちゃん」は、仲睦(なかむつ)まじい恋人同士。
ある日、鶴と森ちゃんが公園でデートしていたとき、森ちゃんが鶴にひと言言いました。
このひと言から、物語は急展開を見せます。
「一緒に帰れるお家があったら、幸福ね。帰って、火をおこして、…三畳一間でも、…」
この何気ない森ちゃんのひと言が、鶴の行動を加速させます。
鶴は姉夫婦のところへ行き、森ちゃんと一緒に住む部屋を借りるため、お金を無心します。
ですが姉は猛反対し、そのことで鶴は腹を立てます。
そして思わず姉を刃物で殺傷してしまいました。
その後、鶴は警察の目を逃れ、東京から京都、滋賀県・大津にまで逃避行に。
そしてあげく、悲しい結末を迎えます。
【おすすめの理由】
恋愛の1場面を取っただけの作品ですが、内容はとても濃いです。
日常でもよく見られるヒューマンドラマ調の仕上がり。
それでいて面白く、また哀愁が漂います。
青春モノや恋愛モノ、少しほろ苦いペーソスストーリーに興味がある人には、ぜひおススメです。
とにかく読みやすい!
これがまず感想文を書く際に効果的です。
そして恋愛をしたことのある人、片思いをしたことのある人なら、誰でも感情移入しやすい内容で、加えて非常にリズミカルな描写が「まるで目の前で繰り広げられるような、人間ドラマ」をたやすく再現してくれるでしょう。
【読書感想文のワンポイントアドバイス!】
とりあえず、書いてある内容を読んでみて、思ったこと・感じたことをそのまま書けば、感想文の大半は仕上がると思います。
その上で、やはり主人公・鶴に焦点を当てたり、また姉や姉の夫、森ちゃんといった、主人公を取り巻く各キャラクターの視点に合わせて読んでみると、さらに主観的・客観的な感想文が仕上がることと思います。
●鶴の猛進的な恋愛への姿勢(恋人・森ちゃんへの姿勢)がどんなものか?
●その鶴の行動を客観的に見て、好印象を持てるかどうか?(たとえば姉の立場だったら?森ちゃんの立場だったら?)
●このような恋愛のあり方をどう思うか?
などを参考にしてみて、あなたが感じたことを思うままに書いてみるのもよいかもしれませんね。
けっこう本作は読者の心を強く引きつける魅力があり、感想を書くときには主観的な文章になりやすいので、その感想文を読む読み手のことを考えて執筆後は校正を忘れずにしましょう。
また先述でもお伝えしましたが、本作が発表された当時の資料と合わせて読んでみると、さらに具体的な感想が沸き、より突っ込んだ内容の感想文を書けると思います。
↓参考書籍↓
【1】『桜桃・雪の夜の話 – 無頼派作家の夜』
著者:太宰治
編集:七北数人
出版社:実業之日本社
発売日:2013年12月5日
【2】『恋の蛍―山崎富栄と太宰治』
著者:松本侑子
出版社:光文社
発売日:2012年5月10日
【3】『ヨミダス歴史館』
ここで、太宰治『犯人』が発表された当時(昭和23年頃)の新聞のデータベースを検索すると、簡単に当時資料を見ることができるでしょう。
参考:公式ホームページ
↓参考書籍↓
【1】『高校生のための小説案内』
編集:梅田卓夫、服部左右一、清水良典(他)
出版社:筑摩書房
発売日:1988年4月
【2】『スラスラ書ける作文マジック:作文の神様が教える』
著者:岩下修
出版社:小学館
発売日:2013年7月13日
【3】『言いたいことが伝わる 上手な文章の書き方』
著者:安藤智子
出版社:秀和システム
発売日:2015年11月24日
【4】『書かずに文章がうまくなるトレーニング』
著者:山口拓朗
出版社:サンマーク出版
発売日:2015年7月22日
【5】『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』
著者:前田安正
出版社:すばる舎
発売日:2013年5月23日
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