おもひでぽろぽろの7つの名シーンを語り尽くす!感想&あらすじ!※ネタバレ解説

おもひでぽろぽろ

本作はジブリ映画になる前、漫画版として『週刊明星』に1987年3月から同年9月にかけて連載された2次作品です。
『風の谷のナウシカ』をはじめ、『魔女の宅急便』や『天空の城ラピュタ』などの幻想・架空的作品から「日常的なリアル感」を多分に含めた本作の脚色は、ジブリ映画の王道を覆すほどの新たな魅力を醸す作品に認められます。

今回はこの『おもひでぽろぽろ』の魅力から見せ場、実際に50回ほど本作を観てきた私の感想を含め、ジブリ映画によるリアリティの真骨頂を一挙公開します!

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『おもひでぽろぽろ』詳細

『【DVD】おもひでぽろぽろ』

主演:今井美樹、柳葉敏郎
監督:高畑勲
出版社:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
発売日:2003年3月7日

『【本】ジブリの教科書6 おもひでぽろぽろ』

編集:スタジオジブリ、文春文庫
出版社:文藝春秋
発売日:2014年3月7日

『【本】おもひでぽろぽろ(1)』

著者:岡本蛍
出版社:集英社
発売日:1996年10月

概要:制作までの背景と放映後の様子

『おもひでぽろぽろ』は、岡本螢・刀根夕子の漫画および、それを原作としたスタジオジブリ制作の劇場アニメ作品。

劇場アニメ作品の監督・脚本は高畑勲で、主題歌はベット・ミドラー歌である「The Rose」(アマンダ・マクブルーム作詞・曲)を高畑勲が日本語に訳し、都はるみが歌った。
タイトルの改題は「愛は花、君はその種子」。

2016年2月に北米で劇場公開され人気を博す。
英語吹き替え版が北米で劇場公開されるのは本作が初になる。
原作『おもひでぽろぽろ』は上下巻と「愛蔵版」で出版される。

宮崎駿曰く、アニメ化するには難解な原作で、高畑勲しか監督できないと企画を持ち込み、企画立案者をオムニバスプロモーションの斯波重治に依頼。
宮崎をはじめ、本作に取り組む各スタッフの熱気はかなりのものであり、アニメ中のブラウン管の中に登場する『ひょっこりひょうたん島』についても、制作当時、ほとんど現存しなかった関係資料を捜し求め、苦労の末に、偶然録音していたカセットの持ち主を探し出し、放送当時のリアルタイムの内容を再現したほどである。

『火垂るの墓』でおなじみの高畑勲を監督を務めたことから、本作のストーリー展開にも、『火垂るの墓』に見られた「過去の回想録を現在進行形のストーリーに当てはめる」という、枠小説型の構成が取られている。

主な登場人物・声優

岡島タエ子(27歳):〈声優〉今井美樹
本作の主人公。東京の会社に勤めるOL。1955年生まれ。
東京で生まれ育った事もあり、田舎に憧れていた。
山形にあるナナ子の夫の親戚の家に滞在する。
トシオの奔放かつ自然な生き方に、それまで知らなかった魅力を覚える。

岡島タエ子(小学5年生時代):〈声優〉本名陽子
1966年当時の10歳のタエ子。
岡島家の三女として育った。
作文は上手だが、算数(特に分数の割り算の計算)が苦手。
ごく普通の明るい女の子だが、末っ子らしくやや意固地で我侭な一面も持っており、特に次姉のヤエ子とは反発し合うことが多い。

トシオ(25歳):〈声優〉柳葉敏郎
ミツオとカズオのまた従兄弟に当たる。
サラリーマンから農業に転身。
有機栽培農業を目指している。
タエ子に仄かな恋心を寄せている。
冬の時期にはスキーのインストラクターを引き受けている。

タエ子の母:〈声優〉寺田路恵
専業主婦。着物と割烹着姿の描写が多い。
タエ子のワガママ加減には呆れている節があり、タエ子の成績(特に算数)がひどすぎるあまり、ナナ子に家庭教師の依頼をした。

タエ子の父:〈声優〉伊藤正博
サラリーマン。タエ子を「ター坊」と呼ぶ。
口数が少なく厳格な性格。
タエ子が文化祭の芝居で子役として出演依頼された件には、芸能界は危険だし早すぎると猛反対した。
一方で末っ子のタエ子に少し甘いところもあるが、一度だけワガママを言うタエ子をビンタした。

ナナ子:〈声優〉山下容莉枝
岡島家の長女。
1966年の時点で美大の1年生。
流行りもの好きでミーハーな面がある。
現在(1982年)ではタエ子との電話でのみ登場。

ヤエ子:〈声優〉三野輪有紀
岡島家の次女。
1966年の時点で高校2年生。
ややキツめな性格で、所有していたエナメルのハンドバッグを巡ってタエ子と喧嘩したこともある。
成績優秀で宝塚ファン。

谷ツネ子:〈声優〉飯塚雅弓
タエ子の小学生時代のクラスメイト。
ハッキリしていて気の強い性格。
家は裕福なようで、別荘を持っている。
論理的な思考の持ち主で、クラスの話し合いでは巧みな例えを用いて生徒を納得させている。

リエ:〈声〉滝沢幸代
タエ子の小学生時代のクラスメイト。
発育がよく、小学四年生のときに初潮を迎えている。
現在(1982年)では2児の母。

広田秀二:〈声優〉増田裕生
タエ子の小学生時代の同級生。
爽やかな印象で、野球がとても上手く、エースを務める程で、クラスの女子からモテている。
タエ子のことが好きだった。「ヒロ」と呼ばれている。

あべくん:〈声優〉佐藤広純
五年生の一学期に転校してきた。
家が貧しく、たびたび不潔な行動をとるため皆から嫌われる。
タエ子の前ではポケットに手をつっこみ道に唾を吐くなど不良少年のように振舞っていた。
タエ子は彼のことがずっと心残りだったが、トシオの助言により、彼がタエ子のことが好きだったことが判った。

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2分でわかる『おもひでぽろぽろ』のあらすじ

ストーリー冒頭は、1982年現在で始まる。
タエ子は27歳のOLになっており、休暇中に、姉・ナナ子の夫の親戚の家(山形県の田舎)に2度目の滞在を予定する。

タエ子は、山形へ向かう寝台特急あけぼの3号の車中で、田舎が無いことで寂しい思いをした小学5年生の自分を思い出す。
そこから「小学5年生のタエ子」(思い出)を連れて、その滞在先の家に行くことになる。

そして、滞在先の家の息子、トシオや農家の人々と交流するうちに、段々とその当時の頃の思い出がよみがえり始める。

トシオの祖母は、トシオと結婚してこちらへの定住・永住を思わす発言をしてくるが、タエ子は田舎の現実の厳しさ(農業の厳しさ)に直面し、田舎(そこ)での生活を躊躇してしまう。

トシオはタエ子に仄かな恋心を抱いており、できればタエ子にこのまま滞在してもらい、一緒に農業を手伝ってもらいたいと密かに思っている。

タエ子はトシオとともに田舎で過ごしつつ、農業のことや、自分の思い出について話を聞いてもらううち、段々トシオの素直さや考え方に惹かれるようになっていく。

タエ子も田舎での景色や生活のあり方に魅力を感じているため、できればそのまま定住を決めたいが、どうしても思い切れず、そのまままた東京に向かう列車に乗り込んだ。

けれど、どうしてもトシオともっと話がしたい・自分も田舎を持ってみたいと思うタエ子は、列車を下り、「定住する話」に同意する連絡を滞在先にした上で、迎えにきたトシオとともに滞在先へと戻っていく。

その戻るさなか、精神的に自立し始めたタエ子の様子を、小学5年生のタエ子と級友たちが静かに見守っていた。

引用元:wikipediawikipedia

本作『おもひでぽろぽろ』の7つの魅力!

自立する、ということ

これはラストシーンでのタエ子の様子に見られますが、過去の思い出から巣立ち、未来に羽ばたくときの様子に感動があります。
誰でもそれまでの思い出や経験とともに現在を生きていて、その思い出たちに見守られながらの今の生活を味わっています。

タエ子は田舎を訪れる前から訪れた後も、小学校の頃の思い出とずっと一緒に生きながら、今と未来の自分のあり方や周りのあり方というものを、あえて見ないで済ませようという、少し甘えた姿勢を貫いています。

このタエ子が、田舎でトシオと一緒にいる中で段々精神的に成長し、未来に向けての生活設計に本気で向き合おうとする姿勢の移り変わりには、おそらく誰もに共通する「自立すること」への感動と魅力が備わります。

レトロのロマンス

本作に限らずジブリ映画の魅力の1つに、「古き良き時代」を想わす〝昔風のレトロマンス〟を醸すシーンは多くありますね。
この『おもひでぽろぽろ』にも「おもひで」を前面に掲げた〝超レトロの懐かしさ〟が、各シーンにふんだんに使われているという面白みがあります。

まず小学校時代のタエ子クラスでの話題。
やはり1966年当時の芸能界の話題がほとんどで、また野球や他の日常的な話題についても「60年代を匂わす、仄かな懐古譚」が満載しています。

野球でいえば、やはり王道はO・N(王貞治と長嶋茂雄)時代の巨人でしょうか。
また作中でタエ子がオーディションにスカウトされるシーンがありますが、これにも芸能に活気が漲っていた当時の風潮のようなものがそこはかとなく表れています。

そして何と言っても『ひょっこりひょうたん島』がテレビで流れるシーン!
これは作中でのテレビのブラウン管の中からリアルに放送されるシーンとしてありますが、視聴者はまさに昔のその当時にタイムスリップして視聴しているような、そんなレトロマンスを堪能できることと思います。

この「レトロ感が生み出すロマンス」が、本作の始終を徹底して支えていることは、本作が醸す魅力のうちの最大の起点になっているのかも知れませんね。

家族の懐かしさ

本作で登場するタエ子の家族は、祖母をはじめ父母や、お姉ちゃんが2人いるなど、当時の家族構成としては当たり前の形ですが、2000年を越えた今となっては、やや大家族的なあり方をしています。

昔の家はこうした兄弟姉妹がいて、皆が活気あふれる生活模様を謳歌し、その活気からそれぞれの役割のようなものをきちんと用意して、日常ドラマを送っていくというリアル感を醸し出します。
これも当然「懐かしさ」を醸し出す〝レトロマンス〟に共通する感動を呼びますが、この家族構成から得られる「時代錯誤的な面白さ」は、本作のストーリー展開と脚色を「誰もに伝えられる不朽の回想録」に仕上げます。

また本作では都会と田舎の生活のあり方の違和にも着目し、それぞれの家族にある方針や理念・理想といったものをあますことなく伝えようとする、やや深いテーマなんかも見え隠れします。

この「家族」に見られる日常のドラマを堪能しながら、ぜひ作中だけでなく、現実に見られる都会と田舎での生活のあり方の違いにも、あなたなりの思いを巡らせてみて下さい。
そこではストーリーからは少し外れた、リアルタイムの感動とも出会えるでしょう。

仄か過ぎる恋愛観

タエ子は小学校時代のクラスメイトの1人・「ヒロ」こと広田秀二に、仄かなあこがれの心を抱いています。
ヒロはクラス中の女子からも人気があり、そのためタエ子は、「自分なんか相手にしてくれない」的な遠慮と躊躇とを持って、なかなか自分の思いを打ち明けることなどできません(もちろんシリアスに恋愛を思わすシーンはありませんが)。

ある日、タエ子が学校から家に帰っていると、途中でヒロがタエ子を待ち伏せしていました。
そこでヒロはタエ子に、何となくタエ子への恋を思わす問いかけをします。
タエ子もその淡い恋心に何となく気づき、ヒロから声をかけられたことをとても嬉しく思う。

そしてそのあとの、タエ子が空へ向かって駆け上がっていくシーン!
嬉しさのあまりタエ子は、自分がまるで空を飛んでいるような感覚にでもなったのでしょうか、帰り道を駆けていくその延長で〝タン、タン、タン、タン〟と空中を駆け上がります。

この小学校時代の甘酸っぱい恋の懐かしさも、本作を語る上で見逃せないシーンには違いありません。

そして大人になったタエ子が、再び心を惹かれ、今の自分に乏しくなった〝純朴と思いやり〟を見せてくれる人へのアタックシーン。
アタックと言っても当然「小学校時代」と同じくシリアスな恋愛劇はないですが、心の中で思い続ける〝相手への恋心のようなもの〟が、子どもの頃も大人の今でも全く変わっていない様子が浮き立ってきます。

本作の訴えどころはきっと、人生への向き合い方を変えようとする人のあり方に、「恋」という仄かなエピソードを差し込んでいるように思えます。
タエ子が見せるこの〝子どもの頃から大人へ成長していく間の恋心・あこがれる心〟のあり方に、本作の魅力を垣間見る1つのテーマがあるように思います。
ぜひ、この辺りの脚色に注目してみて下さい。

田舎の仄々さ・・・

都会に住み続けてきたタエ子には、自分が身を寄せるべき田舎がありません。
なので田舎といえば、他の人の田舎を訪れ、そこで「自分の田舎」を空想することしかできません。

そんなとき、ある山形県の田舎で見た光景や情景は、それまで自分が欲しがり続けた〝生きること・生活することへの純朴さを秘める、とても自然な人生への向き合い方〟でした。

タエ子はそれを見て感じてから一気に〝そこでの生活〟を気に入り、あわよくば、その田舎での定住・永住を考えるようになります。

けれど、いざ田舎で生活しようと覚悟してみても、自分にはそこでの生活の術が何もわからない。
この先、どうして〝自分なりの生活〟をしていけばいいか、都会生まれ・育ちの自分には皆目見当がつかないわけです。
なので挫折します。

そんなとき、トシオが言う「自分なりのペースで生活を送ってみればいい。
できそうだったらやればいいし、無理だと思えばまたやり直したらいい」というような挑戦的な人生へのスタンスに、タエ子は激励され、感動を覚えさせられます(実際トシオはもっと良いことを言っています)。

田舎の厳しさを知りながら、それでもなお田舎の魅力にあこがれ続けるタエ子の心に、「田舎で暮らすことへの仄々とした光のようなもの」がやんわり差し込んでくるのです。
この辺りにも、誰でも共感できる「仄々とした田舎のぬくもり」のようなものが芽生えるでしょう。

級友たちのぬくもり

あなたにも共通する思い出になるでしょう。
小学校や中学校、高校までの思い出が暖かくよみがえり、今を生活している自分を優しく包み込んでくれるような、そんな経験はおそらくいつまでもあると思います。

そんな暖かい思い出は、同じ時期を同じように過してきた級友たちとの学校生活からよみがえることも多いものです。
そんな級友たちとの暖かく優しい思い出の空気が、本作の終始を一貫して飾り立てています。
そんな〝級友たちのぬくもり〟が大人になったタエ子の周りにいつまでも漂っています。

そう、この〝級友たちのぬくもり〟が1番効果を発揮する様子が、ラストシーンでタエ子が自立していく、未来へ羽ばたこうとする場面に表れています。
懐かしさを漂わせながら、それでも未来への展望を図っていくタエ子の姿に、級友たちがいつまでも見守っていてくれる優しい雰囲気が息衝いています。

静かな風景

タエ子が2度目の滞在を機に山形県に赴いたとき、その駅までトシオが迎えにきており、それからトシオの運転で滞在先まで車を走らせていくシーンがあります。
寝台列車で着いたものだから到着時間は早朝であり、その早朝の静けさが何とも言えないロマンチックな景色を醸し出します。

その滞在先に近づくにつれ、朝陽が昇っていくさなかでの自然の美しさ、また田んぼや畑が一面に広がる壮大な傍観はまた、都会の喧騒から逃れてきた人を優しく大きく包み込んでくれるような柔らかい包容力を表します。

空がいつも見える田舎の景色に身を置きながら、タエ子はトシオをはじめ、トシオの母親やその家族との交流を深めていき、滞在先にいる娘・ナオ子(カズオとキヨ子の娘)とは恋愛話や思春期頃の女子特有の話題などに花を咲かせます。
そんないろんな立場の人と交流する場面でも、変わらない一定した静かな空気が演出します。

小学校時代の思い出は回想録なので、何かセピアのかかった光景・情景が一面を覆っており、それだけで静かな暖かい雰囲気を醸し出します。
このような「静かな風景・情景」のあり方も、本作『おもひでぽろぽろ』の斬新な妙味・醍醐味と言えるでしょう。

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本作『おもひでぽろぽろ』の7つの名シーン!

タエ子が寝台列車に乗って、小学校時代の思い出を振り返るシーン

タエ子は都会の生活から田舎の生活へと、寝台列車に乗って向かっていきます。
その間に、いろいろな小学校時代の思い出を引き連れるようになり、その思い出から〝小学5年生の自分〟を常に傍らに置くようになります。

この〝小学5年生の自分〟こそが、タエ子が自立に向けて羽ばたこうとするきっかけを与えてくれる存在で、その〝小学5年生の自分〟から教わる数々の思い出を踏み台に、今後の自分の人生を考え始めるようになります。

本作のテーマというかベースが、このタエ子の〝小学5年生の自分〟にあるのは間違いなく、その小学校時代の思い出を過去のアルバムにしてゆくところに、本作のテーマを吟味できる味わいのようなものがあります。

空を駆け上がっていくシーン

先述しましたが、タエ子は小学校時代、密かにあこがれていた「ヒロ」という級友がいました。
ヒロはスポーツ万能で、女子からも男子からも一目置かれるスター的存在です。

恋愛や自分の主張を上手く言えることに奥手なタエ子は、ヒロから告白のような問いかけをされたとき、とても嬉しくなって、空をも駆けて行けるほどの幸福に巻かれます。

そのとき、タエ子の心の景色というか躍動が、実際に夕暮れの空を駆け上がっていくシーンを見せてくれます。
初めてこのシーンを観たとき私は、「さすがジブリ映画…」と少しうならされた感動を覚えるとともに、アニメならではの飛躍に心酔した体験を刻まれました。

ぜひ本作中で1番メルヘンチックなシーン、「タエ子が子どもながら、自分の世界をリアルに描くシーン」を、あなたの目でご確認下さい。作中ではイチ押しの場面です!

トシオとの密談のような回想録

タエ子は山形の田舎(滞在先)に行ってから、数々の田舎の美景に感動し、そこに定住をしようかと少し覚悟を決め始めます。
ですが「美しい田舎」といってもタエ子にとってはその田舎暮らしが初めてであり、何をどうしたらよいか、今後を思うと途方に暮れてしまう。

そして相変わらず〝小学5年生の自分〟を連れているタエ子の心情は、なかなか「自立」の2文字に辿り着けない弱い自分も訪れています。
そしてクヨクヨ…。

そんなとき、トシオと2人だけの時間をもってドライブに行きますが、そこでタエ子は自分の昔のことをトシオに恥ずかしながらも打ち明けます。
その中でタエ子は、未だに気になっている級友・あべくんのことを思い出し、そのあべくんが自分に対していつも毛嫌いするような、不良ぶった態度でいたことをトシオに言います。
そしてそのあべくんを自分も「汚らしい…」と思ってしまい、いつしか避けるようになったことも。

そんな自分を嫌悪するタエ子は、「自分は偽善者だったかも知れない」というような告白めいたことをトシオに言い、少しトシオに慰めてもらいたいという、下心さえ持ってしまう。
でもその告白を聞いたトシオは、「なんでタエ子さんは男の気持ちがわからないかなぁ?」といったような、半ばタエ子を責めるような口ぶりで返答します。

そこからのタエ子とトシオのリアルな会話が、本作のラストシーンでのタエ子の自立の情景にそのまま生きています。
このドライブ中の車のシーンこそ、タエ子にとってのクライマックスだったかも知れません。
あなたはこのシーンを観て、どんな風に感じられるでしょうか?

どこにでもいるクラスの中のお調子者

〝お調子者〟というか〝人気者?〟的な存在のクラスメイト。
そしてその〝お調子者・人気者〟を見守る周りのクラスメイトの存在。
これも懐かしさを醸す「昔のレトロを思わす回想シーン」に含まれますが、ジブリ映画ならではの暖かさが飛び交っています。

何かクラスメイトのそれぞれに役割があり、またそれぞれの役割を果たす上でルールのようなものができ、そのルールをもってクラスメイト全員が絆を持ち合うような、そんな〝懐かしさにある感動的なまとまり〟が本作の最後までを彩ります。

これはとくにタエ子の回想シーンに反映されていますが、その回想に伴う感動や美しさ・懐かしさはタエ子が田舎にいるとき、寝台列車に乗っているときでもちらほらおぼれ落ち、まさに『おもひでぽろぽろ』を実感させる秀逸な仕上がりになっています。

〝小学5年生の自分〟を含むタエ子の小学校時代のクラスメイトの躍動に、本作のリアリティと感動とが、交差しながら漲ります。

ベニバナの美しさ

タエ子の滞在先の田舎では、ベニバナ染料による繊維業が盛んで、トシオの母親をはじめ滞在先でもベニバナの栽培から刈り入れまでを営んでいます。
トシオは有機農業に精を出し、かつての先輩から受け売りの「愛情をもって育てれば必ずどんな花も植物も応えてくれる」という熱い理想をもって励んでいます。

本作でのトピックの1つにこのベニバナがあり、ベニバナ栽培を介していろいろなストーリー展開が派生することも脚色効果にあります。
広大な自然に一面広がるベニバナの風景は、もうそれだけで「美しい…」と言わせる貴重な感動を伝えてきます。

タエ子とトシオ、またトシオの母親、ナオ子とのベニバナ栽培を通しての絡み合いにも、実に暖かな情景&リアル感があり、タエ子がベニバナを皆と一緒に刈り入れていくシーンには「これからのタエ子の生活」を映し出す伏線のようなものさえ感じられます。

滞在先に住むナオ子の言動と表情

タエ子が滞在する田舎には、ナオ子という少女がいます。
このナオ子は小学5年生のタエ子より少しお姉さん的な存在ですが、やはり思春期に差しかかった頃の不安定な様子と表情を持っています。

「学校のみんなが持っているから、私にも○○の靴を買って!」と母親に無心するシーンなどは、小学5年生のタエ子に負けず劣らずの子どもっぽい言動。

今は大人になったタエ子ですが、未だに〝小学5年生の自分〟を引きずるタエ子の心にはこの〝ナオ子が持つ子供っぽさ〟を踏襲している部分も少しアリ…。
何か、対照的に写されているようなナオ子とタエ子とのかけ合いが、後半のストーリーの要所に反映されます。
この対照観にもぜひ注目してみて下さい。

ラストシーンでの〝小学5年生のタエ子〟の哀しそうな表情

先述しましたが、ラストシーンでタエ子は東京に戻る列車から降り、またトシオのいる滞在先へと引き返します。
定住を決めたタエ子にトシオは、車で迎えに来たあげく、結婚を申し込むような恥ずかし気な様子を見せています(エンディングテロップが流れている中でのシーンなので、音声は出ません)。

そしてタエ子はそのトシオの結婚の申し出を承諾したような、同じく恥ずかし気な姿勢をもって、またトシオと一緒に田舎の風景に消えていきます。
このとき、小学5年生のタエ子と小学校時代の級友たちが、トシオとともに小さくなっていくタエ子の様子をずっと見守ります。

その見守るさなか、小学5年生のタエ子は、なぜか哀し気な、寂しそうな表情を見せながら、トシオといるタエ子の姿を見つめています。
この小学5年生のタエ子の哀しく、寂しそうな表情は、おそらくタエ子が自立に向けて将来へ羽ばたいて行き、小学5年生のタエ子とその周りの級友たちを置き去りにするような、「新しい生活」への旅立ちによるものではでしょうか。

結婚して新しい生活―農夫の嫁としての生活―への門出を祝う傍ら、その自然の厳しさをも含めた新しい生活・人生への旅立ちは、〝小学5年生のタエ子〟というそれまでの懐かしい思い出を「セピア色のアルバムの中に仕舞う」という、卒業のテーマを表すものでしょう。


〈↓参考書籍↓〉

【1】『おもひでぽろぽろ コミック』

形態:アニメージュコミックススペシャル―フィルム・コミック
出版社:徳間書店
発売日:1991年11月1日

【2】『おもひでぽろぽろ 愛蔵版』

著者:岡本蛍、刀根夕子(画)
出版社:青林堂
発売日:2011年5月10日

【3】『母と子への贈物―ジブリ宮崎駿作品にこめられた思い』

著者:光元和憲
出版社:かもがわ出版
発売日:2013年12月20日

【4】『おもひでぽろぽろ スタジオジブリ絵コンテ全集〈6〉』

著者:高畑勲、百瀬義行
出版社:徳間書店スタジオジブリ事業本部
発売日:2001年8月1日

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感想

ジブリ映画の中でも本作『おもひでぽろぽろ』は、ベスト3に入るほどお気に入りの1作です。
かつて、見るべき点は2つ、として観ていました。

1つは先述の「懐かしさに見る感動とロマン」。
2つめは「ラストシーンでの小学5年生のタエ子の表情」です。

なかなか仄々した口絵なので観る前は「柔らかい作品」「懐かしい傑作」程度にしか映らかなかったものですが、実際に何回も観ていくと、本作中に仕上げられた「とても深い人間の成長記録」というものにおのずと気づかされます。

前半の展開での「懐かしく、柔らかいストーリー」では懐古的なレトロの風潮を醸し出してきますが、タエ子が田舎に行き、トシオとドライブ中に会話を繰り広げる後半からのストーリーでは、段々〝小学5年生のタエ子〟がその気配や影を薄めていくような、そんな「過去の思い出から卒業していく人間の成長ドラマ」が幅を利かせてきます。

そしてラストシーンでの大人のタエ子と〝小学5年生のタエ子〟の表情の違いに、その卒業とほろ苦い哀しさが漂っているように感じられました。

あなたはこの『おもひでぽろぽろ』の「思い出」に、どんな感動と卒業を思うでしょうか?


〈↓さらなる参考書籍↓〉

【1】『おもひでぽろぽろ―Only yesterday (ジブリ・ロマンアルバム)』

編集:アニメージュ編集部
出版社:徳間書店
発売日:2002年11月

【2】『おもひでぽろぽろ(下)』

著者:岡本蛍、刀根夕子
出版社:青林堂
発売日:2005年2月

【3】『「月刊アニメージュ」の特集記事で見るスタジオジブリの軌跡―1984-2011 (ロマンアルバム)』

形態:大型本
出版社:徳間書店
発売日:2011年3月12日

【4】『スタジオジブリ大解剖(サンエイムック)』

形態:ムック
出版社:三栄書房
発売日:2016年9月15日

【5】『火垂るの墓(スタジオジブリ絵コンテ全集)』

著者:高畑勲、近藤喜文、百瀬義行ほか
出版社:徳間書店
発売日:2001年6月1日


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