映画『セブン(”Se7en”)』はキリスト教の「七つの大罪」をベースに敷かれて1995年に製作された、デビッド・フィンチャー監督による猟奇殺人を扱った作品です。
当時の世間において潜在的に流行していた「猟奇的犯罪」の内実を、サイコチックに描き尽した内容で、全米興行成績1位の座を4周奪取してきた恐るべきヒット作品です。
公開から3年後、インターネット・ムービー・データベースでは『第三の男』、『シャイニング』を上回る評価を獲得し、その人気と完熟性はさらなる確立を得ました。
今回はこの『セブン』の魅力に迫ります!
『ジャック・ザ・リッパー』ものや『ヒッチコック』もの、また『コナン・ドイルシリーズ』をはじめ、数々の猟奇的殺人やサイコチック、スリラーサスペンスを観てきた私ですが、その中でも本作のすごみと影響力は格別に思います。
『セブン』の魅力に迫るとともに、多少なりとも【ネタバレ】になりますのでご注意下さい。
さらっと読んで頂き、楽しんで頂ければ幸いです。
映画『セブン』(”Se7en”)のあらすじ詳細
監督:デビッド・フィンチャー
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2010年12月22日
ストーリーは「1週間」という7日をまず設定し、その「7」という数字の日にち内で起こる不可解な事件から始まります。
この「1週間」という数字は、事件解決に臨むベテラン刑事・サマセット(モーガン・フリーマン演)の、定年退職までの期間を指しています。
このサマセットとコンビを組むのが、田舎から越して来た血気盛んな若手の刑事・ミルズ(ブラッド・ピット演)で、気の多さが祟るせいか、ちょっとしたことにも注意が散漫になる癖があり、ちょこちょこサマセットに叱られています。
大都会には、1日中、雨が降り続きます。
その気怠さを感じさせる本降りの中、第1の事件が起きました。
連続して起こる事件の詳細
1.GLUTTONY(暴食):第1の事件
サマセットとミルズが案内されたひどく暗い1室に、体が異常に膨張し果てた大男の死体があり、その死体は椅子にくくりつけられる形で座らされ、未だ食事中の姿勢を取らされていた。
死因は食べ過ぎによる内臓破裂。
調べによると、どうもこの男は銃をつきつけられたまま、物を食わせられ続けたらしいことが判る。
2.GREED(強欲):第2の事件
次の被害者は強欲主義で知られた大家的弁護士であり、彼は高級ビルの自分のオフィスで体を切り刻まれた形で発見された。
むろん死体。死体は生きながらにして肉体を1ポンドずつ切り刻まれていた。
そのとき壁に「HELP」の文字が血で書かれてあり、その文字の指紋から前科者ビクターが浮び上がった。
3.SLOTH(怠惰):第3の事件
そのビクターを追って彼のヤサに踏み込むと、警察はそこで、ベッドにくくりつけられてほぼミイラ化しているビクターを発見する。
壁の血文字はこのビクターの指の皮を犯人が削ぎ取り、それで書いたものらしい。
ビクターは舌をかみ切り、左手首を切られ、抗生物質など免疫を高める薬を投与され、生き続けていた。
つまり犯人は、警察がそこへ踏み込むのを想定していたことになる。
~事件途中でのサマセットの暗躍~
サマセットは一連の事件がキリスト教における「七つの大罪」をテーマにしていると判断し、FBIの知人に依頼して、「七つの大罪」に関連する書籍を沢山借りた利用者の割り出しを始める。
そこで、当該書籍を多く借りていた「ジョン・ドゥ」という偽名を使った男を割り出し、その男の自宅を突き止めた。
そしてジョン・ドゥの帰りを待っていると、いきなり廊下向こうに現れた男がサマセットとミルズめがけて発砲してきた!
かなり危機的状況に陥ったミルズだったが一命をとりとめ、その後、ジョン・ドゥの部屋へ違法侵入し、家探しをする。すると、おびただしい量の日記と、おびただしい量の写真が見つかった。
何とその部屋には暗室まである。
その写真の内に、以前に新聞記者として警察を訪れ、サマセットとミルズに面識を持つ男の顔が写っていた。
4.LUST(肉欲):第4の事件
とある売春宿に勤める娼婦が、惨殺体で見つかった。
この娼婦とプレイしていたお客の男に刃物型の張型を装着させ、そのままプレイをさせた模様。
5.PRIDE(高慢):第5の事件
第4の事件が起きてすぐ、1室のベッドで顔を切り刻まれたトップモデルの死体が発見される。
女性は片手に電話を持たされ、いつでも病院や警察に連絡できる状態にされていたが、自ら死を選んでいた。
6、7.残るのは、「ENVY(嫉妬)」「WRATH(憤怒)」だけである。
この第6と7の事件だけを残す形で、なんと犯人と名乗りをあげる男が警察へ自首して来る。
ちょうどサマセットとミルズが署内の階段を下り、警察署の玄関口に差し掛かったところで、玄関から入ってきたその男は大声をあげて「自分が犯人だ」と指名した。
これが経過の詳細です。
この「第6の事件」と「第7の事件」だけを残した理由は、ジョン・ドゥ自身の嫉妬を第6に、そしてそのことによるミルズの憤怒・激怒を第7の事件に重ねるためです。
結局犯人は、「七つの大罪」に見合う人物をアットランダムに選び出し、「いかにも大罪を犯した代表的人物」として処刑していたわけです。
一連の事件は、雨が降る中の、暗い密室のような場所で展開していきます。
最初は「陰気臭いなぁ~」なんて思うでしょうが、この暗さが本作の不変の魅力を引き立てるのです。
ずっと見続けていれば、「この暗さがなんともいい…」というような好印象を植えられるでしょう。
署内での取り調べ
ジョン・ドゥが自首してきた折りから警察署内は急にざわめき始め、一連の事件の犯人であるとの見方を強める一方で、最大の重要容疑者として彼を保護し、また細心の注意を払いながら、彼の事件への動機や犯行声明の一部始終を記録します。
しかし署内では、法律上にて人権を尊重すべく、このジョン・ドゥの要求を聞き入れなければならないことを進言します。ジョン・ドゥに弁護士がつき、ジョン・ドゥの「今の要求」をサマセットとミルズをはじめ、彼らの上司を含めて聞かされます。
「ある、所定の場所まで、私を連れていってほしい。」
簡単にいうと、これがジョン・ドゥのこのときの要求です。
この「ある場所」まで連れて行くこと、ジョン・ドゥの要求を聞き入れることに、やはりミルズは初め猛反対します。
この辺りがサマセットや他のベテラン刑事と違うところで、やはりミルズにはまだまだ感情的な部分が垣間見られます。
しかし結局、弁護士、上司、サマセット、ミルズで協議した結果、ジョン・ドゥの要求を呑むことになり、彼を護送車で「ある場所」まで連れて行くことに決定しました。
移動中の車での取り調べ
車で移動中、まずミルズが、ジョン・ドゥに発破をかけるように突っ掛かります。
「お前のしたことなど、もって何ヶ月だ。何ヶ月かすればネタにされ、そのうちお前のことそのものも皆の記憶から消されてしまう」
それまでジョン・ドゥは自分を神の使いだと崇め、周りの意見を聞き入れないまま「自分の世界」に陶酔し切っていました。
ミルズはこのジョン・ドゥに一度、命を助けられています。
ミルズはジョン・ドゥのヤサに踏み込んだとき、彼に銃をこめかみに付きつけられながらも撃たれなかったことにより、死なずに済みました。
このときのことをジョン・ドゥに取り上げられ、「鏡を見る度に私に感謝しろ」などと言われたものだからミルズはまた感情的になり、興奮しました。
次にサマセットが、冷静にジョン・ドゥに問いかけます。
「お前はいったい誰なんだ?」
ジョン・ドゥが答えます。
「私が誰であるか、なんて問題ではない。私は神に命令されて、自分がすべきことをやったまでだ。」
またサマセットが問いかけます。
「お前はそう言いながら、1つ、重大なミスを犯している。お前はそのことを、楽しんでいるじゃないか。」
つまり、神の命令に関係なく、自分で意思を持ち、自分がそのことを楽しみたいからしているのじゃないか、ということを言っていたようです。
この車内でのやり取りに、この映画の骨子が表れているように思いました。
[ad#ad-1]『セブン』衝撃のラストシーン
このラストシーンで、この映画で起こる全ての事件が解決します。
「解決する」という言い方は変かも知れませんが、少なくとも「七つの大罪」を扱った一連の事件は完遂される、となります。
つまりジョン・ドゥにとっての事件解決です。
「ある場所」とは、電塔がいくつも立ち並んでいるだだっ広い平野でした。
周りには何もない、ただ空と地平線だけが見える無機的空間。
「ここがお前の選んだ場所なのか?ここでいったい何があるんだ?」
とサマセット、ミルズが問いかけた直後、1台の荷物搬送車がやってきます。
上空では警察のヘリがジョン・ドゥの行動と、不審者・不審物の有無をうかがっています。
「特定の方角から車が1台来る!どうやら荷物運搬車のようだ!」
サマセットが運搬車に近づき、「おい!ここで止まれ!」と緊張しながら叫び、銃を空へ向けて発砲しました。
恐らく運搬車の運転手がジョン・ドゥの仲間と思い込み、焦っていたのでしょう。
運転手は慌てて車から下り、
「撃たないでくれ!俺ぁこの荷物をただ、ここへ運んで来るように言われただけだ!」
とサマセットに懇願します。
そして運転手は、自分が運んできた小包をサマセットに見せ、自分の潔白を証明しようとします。
サマセットはその運転手を、そのままジョン・ドゥから遠ざける形で逃がしました。
さて、運搬車が運んできた小包だけがサマセットの前に残されています。
「爆弾かも知れない、爆弾処理班を至急よこしてくれ!」
サマセットは上空のヘリに無線を使ってそう告げます。
告げながらサマセットは、その小包に、血がついているのに気付きます。
「血だ…」
少し小包の中身に興味を持ってしまったサマセットは、処理班が来るまでに、その包みを開けることにしました。
包みの中には、ミルズの奥さんの生首が…
サマセットの行動と同時進行で、ジョン・ドゥはミルズに、「自分が(ミルズの)奥さんを殺害した」という旨を告げます。
そしてその殺害動機は自分が円満家庭に嫉妬したこと、と言います。
ミルズはその小包の中身を見ないまでも混乱しながら、結局怒りにより、ジョン・ドゥを撃ち殺しました。
これで第6・第7の事件は完遂され、映画は終わります。
【感想】『セブン』深みのある大罪映画!けれど、少し犯人役・ジョン・ドゥの立ち位置が…!
私としては構成だけを見ると、「深みのある、よい映画」に映りました。
けっこうこの映画への感想・レビューには、「ラストが衝撃すぎて…」や「後味がよくない」などといった、ややマイナス的なイメージが先行しているようですが、じっくり聖書や「大罪」に関する参考書などを片手に観てみると、ストーリーの要所に置かれた小道具というか、オプション的な出来ごとが、なかなかカチッとした形でまとまります。
けれど「七つの大罪」を扱う時点で、もう少し「犯人役の描写」を掘り下げてほしい…、といった感想も湧きました。
結局ジョン・ドゥは、「自分が何者であるか」ということを明かしません。最後までうやむやにする形での幕引きで、どんな立場の人が、どんな動機をもって、具体的にどういう主義に基づいて犯行を成したのか、そういったことが詳細に語られないままの終焉です。
この「犯人の立場」というものをはっきりさせないことには、「七つの大罪」を扱う『セブン』における犯人が、ただの猟奇的殺人者で終わってしまう可能性が膨らみます。
「神に命令されてやっただけ」と言うジョン・ドゥの、明確な思想や主義や、またその主義から成る犯行動機への詳細をもう少し明るみに出してほしいというのが、私の素直な感想でした。
けれど、とても見応えのある作品には違いありません。
構成・プロットだけを見ると、鑑賞後でも十分に内容を反省させられ、その影響力にも計り知れないものが具わっています。
もし『セブン2』が出れば、たとえ二番煎じを嫌う私でも、やはりついつい観てしまうでしょうね。
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