ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』は2010年7月に放映され、声の出演に神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子をはじめ、いま流行りの俳優から往年の女優までをそのキャストに迎えた、著名な大作として知られます。
しばらく制作を控えていたスタジオジブリが、ようやく〝ジブリアニメの生粋の作品!〟と念を押される殿堂入りの名作となり、観客動員もかなりの成功を収めました。
「小人が、あらゆる生活物品を人間の生活から借りて生きていく。
さらに自分たちの姿を人間に見られたら終わり」というちょっと変わった嗜好の設定が光ります。
今回は本作の魅力から名場面、さらに私の独断と偏見の感想を絡めて一挙公開します!
『借りぐらしのアリエッティ』詳細
【DVD】『借りぐらしのアリエッティ』
監督:米林宏昌
販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
発売日:2011年6月17日
【本】『徳間アニメ絵本31 借りぐらしのアリエッティ』
原作:メアリー・ノートン
企画・脚本:宮崎駿
監督:米林宏昌
脚本:丹羽圭子ほか
出版社:徳間書店
発売日:2010年8月28日
〈概要〉
メアリー・ノートンのファンタジー小説『床下の小人たち』(en:The Borrowers)が原作となっている。
元々は、約40年前にアニメーション監督の宮崎駿と高畑勲によって考えられた企画であり、2008年初夏になって宮崎駿によって改めて企画された。
当初は『小さなアリエッティ』という題であった。
監督に米林宏昌が起用されたのはプロデューサーの鈴木敏夫の提案である。本作に登場する和洋折衷の屋敷や庭園は、2008年11月12日にスタジオジブリの社員旅行で訪問した青森県平川市の盛美園がモデルとなった。
宮崎駿によれば屋敷の所在地は東京都小金井市の辺りという設定である。
〈主な登場人物・声優〉
―小人たち―
アリエッティ/声優:志田未来
本作の主人公。
貞子達が暮らす屋敷の床下で様々な生活品を借りながら、両親と密かに暮らしている小人(こびと)の少女。
14歳。
基本的には明朗快活で人間や家猫、虫に対して物怖じしない性格。ホミリー/声優:大竹しのぶ
アリエッティの母親。
52歳。
豊かな表情とやや大げさな身振り手振りが多い。
借り物を工夫して家庭を切り盛りしている。ポッド/声優:三浦友和
アリエッティの父親。
61歳。
危険な「借り」に出て一家を支える大黒柱。
この先自分達に何かあったときのためにアリエッティに初めての「借り」を教える。スピラー/声優:藤原竜也
小人の少年。
12歳。
家族は居らず、蓑を纏って赤い弓を持ち歩いて1人で野性的な生活を送る。
屋外を活発に動いている所為か劇中ではモモンガのように滑空し移動する描写も見られた。―人間―
翔(しょう)/声優:神木隆之介
12歳。
両親は離婚して父親とは別居している。
また、外交官の母親・奈津美も仕事柄海外赴任することが多く、家族との交流は薄い。
生まれつき心臓が弱く、過度に運動出来ない体である。
母から屋敷の小人について聞いたことがある。牧貞子(まきさだこ)/声優:竹下景子
アリエッティの家族が暮らす屋敷の主人。
68歳。
翔の祖母の妹で、いわゆる大叔母にあたる。
病身の身である翔のことを案じ、手術前にも拘らず仕事で外国に出張している翔の母・奈津美を批判する発言をするなど、良心的な人物である。ハル/声優:樹木希林
長年住み込みで働いている貞子の屋敷の家政婦。
65歳。
愛車の赤い軽自動車の駐車マナーを主人の貞子に度々注意されている模様。
小人を捕まえようと試みるが、捕獲を一般の鼠捕り業者に依頼しようとするなど思慮の浅い点も見られる。
〈主題歌〉
「Arrietty’s Song」
作詞:セシル・コルベル
作曲:サイモン・キャビー(Simon Caby)、セシル・コルベル
日本語訳詞:伊平容子
ジブリ作品としては、初の海外音楽家による主題歌。
〈興行成績〉
全国447スクリーンで2010年7月17日公開
初日2日間で興収約9億円、動員約68万人で映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった。
公開3日目で興収13億4,979万8,700円、動員103万8,138人を記録。
【簡単】1分でわかる『借りぐらしのアリエッティ』のあらすじ
ある森奥の大きな屋敷の床下に、昔から小人が住み続けているという。
そのとき屋敷にいた小人はアリエッティとその家族、3人が住み続けていた。
アリエッティをはじめ、その母親・ホミリー、父親・ポッドである。
その屋敷には、主人の貞子、家政婦のハルと、そして心臓病の療養のために移住してきた翔が住んでいた。
翔が移住してきてすぐにアリエッティは、その屋敷の広い庭で翔に姿を見られている。
〝人間に姿を見られたら必ず次の移住先に引っ越さなければならない〟という小人の習わしだったが、翔は心が優しくアリエッティのことを誰にも言わなかったため、ただちに引っ越す必要はなかった。
アリエッティの父親や母親は「人間に見られた以上、やはり引っ越さなければならない」と決意しながらも、しばらくはそこでの生活を営むことになる(次の移住先が決まっていなかったため)。
そして以降、アリエッティは父親に連れられて「人間の生活環境」から自分たちに必要な物品を確保しに行くが、また途中で、翔にその物色する姿を発見されるというハプニングもあった。
そこでも翔の機転によって事なきを得る。
翔は自分が病弱のこともあり、生きながら命のはかなさのようなものを感じていたためか、アリエッティという小人の命も〝自分の友だち〟のように抱擁する暖かさを持っていた。
けれど家政婦のハルの好奇心・悪だくみによって、その借りぐらしの住まいが結局暴かれたり母親・ホミリーがハルの手によって捕えられたりするが、そのときでも〝アリエッティ1家族を守るために〟と、翔はその家族を安全な場所へ避難させ続けていく。
アリエッティは始め「人間だから」という理由でやや翔を警戒していたが、やがて翔の優しさにほだされる形で、小人ながら野にささった柵に上り翔の頬にキスをし、自分の気持ちを訴えかける。
けれど自分たちの住まいが暴かれたことにより、結局その屋敷に住み続けることはできず、アリエッティの家族はスピラーを伴い、別の居住地へ引っ越していく。
〈参考資料〉
【1】『フィルム・コミック 借りぐらしのアリエッティ4(アニメージュコミックス)』
編集:アニメージュ編集部
出版社:徳間書店
発売日:2010年9月25日
【2】『床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉』
著者:メアリー・ノートン
出版社:岩波書店
発売日:2000年9月18日
【3】『借りぐらしのアリエッティ(北米版)』
形式:Blu-ray
言語:英語、日本語、フランス語
字幕:英語、フランス語
販売元:Buena Vista
『借りぐらしのアリエッティ』の7つの魅力!
【その1】小人、という不思議感
本作のメインはやはり何といっても、この「小人が繰り広げる世界観」でしょう。
日常、普段では絶対に私たち人間にはわからない〝不思議な世界観〟を脚色することによって、そこで得られる(映せる)さまざまな「生活感・リアルな人間模様」が展開されていき、どの視聴者にも同じ〝貴重な感覚や冒険譚〟を降り注いでくれます。
「人間と小人との共存・共棲とはこんなものなのか」という新しい感動も、本作を通して明るくかつ鋭く伝わるように思います。
ぜひこの〝不思議な感覚・世界観〟を存分にお楽しみ下さい!
【その2】人間の生活と小人の生活
アリエッティの家族は「人間の生活環境」から自分たちに必要な生活物品を拝借し、それを日々の糧として暮らしていきます。
このときでも面白いルールがあり、まず「人間に見られたらダメ」、「必要以上にそこに長居しない」、「強そうな敵(クモやネズミなど)と遭遇したら下手に対峙せず、逃げること」など、ありとあらゆる〝小人族だけに伝わるルールのようなもの〟が実にイキイキと伝わってきます。
この「独特なルールを持つ世界観」が面白く、その空間の中でアリエッティやその家族、また途中からはスピラーや翔なども加わり、皆〝仲間〟のようになって数々の脅威から逃れていく様子が見入らせます。
やはりこの辺りは〝ジブリ映画の威力〟ですね。
【その3】お父さん・ポッドの着々と速い、無駄のない動き
ジブリ映画の骨頂の1つには、やはり各キャラクターの動きにあると思います。
今回のキャラクターの動きの中で1番のキラ星は、このアリエッティの父親・ポッドの〝無駄のない動き〟!無駄がないだけでなくその全体的な動きも実に早く、1つの行動から次の行動に移るまでが0・1秒ほどの速さに思わせるほど、かなり痛快な躍動を見せてくれます。
このポッドの動きにはじまり、その他、場面を彩る各キャラクターの細かい躍動にも、「ここまで細かい点にこだわるか!?」と言わせるような、ジブリ映画にはなくてはならない「人間よりも人間らしい動き」が加わってきます。
ぜひこのキャラクター全てのリアルな躍動感をお愉しみ下さい。
【その4】小人から見た人間の世界観
やはり本作を見ていると、どうしてもその世界観の方に目が行ってしまいます。
小人・アリエッティ家族から見た人間の世界には、自分たちにとって、とても危険なものがわんさかあふれています。
この辺りはよくSF映画・コミックスなんかで彩られますが、この「普段の人間の感覚では決して得られないような、小人ならではの視点とそれによる物の見方の違い
が実に新鮮で面白く、「ああ小人にとっては、こんなことも危険になるのかぁ」などと感心させられるほど、普段に自分たちが見ているもの・体験しているものの多くを、もう1度反省させられるような、そんな起点を与えてくれます。
普段の認識点や価値観を根こそぎ変えてくれるような稀な作品「アリエッティ」、いや貴重だと思います。
【その5】各キャラクターに個性が満載!
アニメは皆そうですが(ジブリアニメはとくに)、全てのキャラクターには個性が振り分けられており、その個性をもって1つずつのキャラクターが物語や人間模様を構成・展開していき、またその個性によって視聴者にさまざまな感動を与えます。
ジブリ映画はとくにこの「キャラクターの個性」を大切にしていて、本作でも全てのキャラクターはその個性によって動き、その言動からまたさまざまな派生的展開を繰り広げます。
アリエッティの家族でも、父親、母親、アリエッティそれぞれの個性は大幅に違い、また屋敷に住む貞子・ハル・翔などはあからさまにその違いを突きつけます。
本作ではとくに、小人と人間との個性・思考性・感覚の違いのあり方を見るのも面白く、その違いから描かれていくさまざまなストーリー展開にはまるで〝意表を突かれるような場面〟さえ登場してきます。
本作を観るとき、ストーリーを追いながらも、この各キャラクターに分けられた〝個性の違い・それによる興味深さ〟を楽しんでみるのも一興かも知れませんね。
【その6】「借りぐらし」という旅人の感覚
本作のタイトルにもなっている「借りぐらし」ですが、やはりこの「借りぐらし」を聞くとまずはじめに〝腰かけ感〟、次に〝またすぐ別の場所へ移り住んでいく旅人のような感覚〟というのが芽生えます。
言えば〝身軽な感覚〟になるでしょうか。
この〝身軽な感覚〟に、本作に映し出されるストーリーの全てが抱えられ、またその〝感覚による土台〟でいろいろな人間関係を築きながら生活していく全てのキャラクターには、この「旅人の感覚」によって投影される〝自由なムード〟が漂ってきます(ジブリ映画ではこの「自由」にあこがれさせるムードが非常に多く登場しますね)。
確かに本作のメインストーリーを読んでいくとこの〝借りぐらし〟というのは小人たちにとって、とても悲しい事情のように思えてきます。
ですが少し見方を変えてみれば、このように「自由への奔走・活気」のようなものも見え隠れしてきて、別のサイドからストーリーを楽しめるというような、特典つきのお楽しみも芽生えてくるわけです。
【その7】ファンタジーへの夢の存在
本作に登場する小人はまさに、この「ファンタジー」を体現してくれています。
人間の世界では日々「現実…」の連続で、やはりそうした毎日を送っていると自然に物の見方が定着してきて、ちょっとした夢への期待や展望も、すぐさまその景色を失くしてしまう場合(こと)がよくあると思います。
そうした「1度あきらめかけられた人間の夢」というものを、この映画は根底から救い上げてくれ、また人間の日々の葛藤に「夢の貴重さと明かり」を差し込ませてくれます。
人間の生活にはどうしても〝娯楽〟が必要で、創造・空想・遊びの部分がなくては、その真価をじゅうぶんに発揮できないもの。
その夢の復活と夢に駆け上れる生気のあり方とを、もう1度確認させてくれる魅力と充実性が、本作が奏でるストーリーの至る所に隠されています。
どうぞこの人間になくてはならない「本物の娯楽と快活性」を、あなたの目と心と感覚をもってお楽しみ下さい。
ジブリ映画の魅力はそのストーリーの味と、キャラクターの個性、さらに夢を追わせる活気のようなものに尽きますね!
さて次は、本作に彩られた各名場面・名シーンのおすすめです!
[ad#ad-1]『借りぐらしのアリエッティ』8つの名シーン
【その1】アリエッティ、庭先で普通に見つかる
けっこう面白い冒頭のシーンなのですが、翔が屋敷に移り住んできたとき、初めて翔はそこの庭で小人の姿を発見します。
「小人は人間に姿を見られたら、次の引っ越し場所に移らなきゃいけない」
このフレーズを念頭におき、〝アリエッティ、ふつうに見つかってるやん〟と言わせるオチのような場面です。
アリエッティは普段の言動から、しっかりしているようでそうでもない、ちょっとドジっ子的な要素も持ち合わせています。
その辺りの個性も実に楽しい。
そこでもあたふたと身を隠そうとして、一刻も早く〝安全地帯〟に行こうとしますが、結局3~5秒ほどは、翔に普通に見られていました。
【その2】翔の優しさと、命に対する思い
先にご紹介した冒頭のシーンから、翔の優しい1面ずつを垣間見させる場面はそのラストまで、要所で表れます。
最初から翔には「小人たちを発見して、それを報道関係に売り、一躍ヒーローになってやろう!」というような野心めいたものがなく、ただ純粋にアリエッティを貴重な友だちとして思い、またそのアリエッティの家族を守ってあげようとする優しい心があふれています。
これだけでも翔の人となりのようなものが見えますが、その翔が置かれた状況と、その状況からくるような〝ものの命に対する温かい情熱〟のようなものが見え隠れして、この辺りが実に切なく感じられつつ、また感動的でもあります。
この翔のあり方とまさに対照的にあるのが家政婦・ハルの存在で、ハルは「何とか小人たちを一網打尽に捕まえ、その功績をもってヒロインになってやる」といったような、半ば悪だくみに長けた姑息・暗躍のようなものが立ち込めています。
この2人を交互に見る形でストーリーを追っていくと、さらに翔のアリエッティとその家族に対する思い方・愛情の投げかけ方というのがわかるでしょうか。
翔と、アリエッティをはじめ小人たちとの交流の場面…。
とても心か安らぎ、温まるシーンです。
【その3】カラスのリアルすぎる飛来!
少し細かい(マニアックな)シーンになりますが、いきなりカラスが飛んでくる〝驚きのシーン〟です。
アリエッティは段々と翔に惹かれるように普段からも翔のことを気にするようになり、あるとき、翔がそっと置いてくれた角砂糖のお礼にと、翔が寝ている寝室の窓辺へ辿り着きます。
そこでいざ窓を開けてもらおうとするアリエッティの目の前に、突然襲ってくるカラスの驚き!
「アニメ映画だからこのくらいの動きは当たり前」と言われるとそれまでですが、いやしかし、甘~い純朴なムードがこれから始まろうとするときの〝いきなりの襲撃〟には、やはりビックリさせるインパクトがもの凄いのです。
ちょうどストーリー中盤ほどの場面ですが、どうぞこの〝一瞬のおどろき〟をご堪能してみて下さい。
また「ああ確かに小人だと、こんなことにも苦労するんだろうなぁ」と思わされる、小人ならではの世界観も一緒に味わえます。
【その4】角砂糖をハンティングしにいくスリル!
ストーリー前半の場面です。
父親・ポッドに連れられてアリエッティは、その夜、初めての「借り(狩り)」に出かけます。
それもハンティングしにいく場所は屋敷にある普通の日常空間。
人間の日常空間がアリエッティたちには、とても多くの危険が待ち受ける、奇々怪々な世界に移り変わります。
その中を、あらかじめきちんとハンティング用にと準備が整えられた各ステップを超えていき、ポッドを先頭にしながらアリエッティは、周りの状況を一々確認してついていきます。
角砂糖は、アリエッティとポッドから遥か前方の、テーブルの上にきちんと置かれています。
部屋にやっと到着したその位置からそのテーブルまで、まるで〝野を越え山を越え〟の感覚でようやく辿り着ける、非常に遠方の雰囲気を醸し出しています。
周りは暗闇…。
しかしひと度人間が起きてきてその部屋に入り、自分たちの姿を見つけられてしまったら、アリエッティたちは一網打尽で一たまりもありません。
翔ならいいけど、別の人間―とくに家政婦・ハル―に見つかったりすれば…、考えるだけで恐ろしい結果となってしまいます。
そんな境遇の中を、ポッドとアリエッティは静々ながら黙々と、着実に角砂糖目がけて前進していくのです。
この緊張感とゾクゾクするようなスリルは、やはりそのシーンをじっくり観ないとわかりませんね。
[ad#ad-1]【その5】アリエッティと翔の秘密の語らい
翔は暇なとき、よく庭のお気に入りの場所に行き、そこで本を読んだり昼寝をしたりしています。
その翔の頭上には小さくも奥深い草むらがあり、そこからときどきアリエッティが姿を見せるのです。
アリエッティはすっかり翔になつく感じで(決して本当になついているわけではないですが)、何度か寝そべっている翔に近寄って話しかけます。
翔はアリエッティと会うのを内心楽しみにしていて、「自分の命があとどれくらい持つのか」という消えない不安を抱えながら、それでも〝不思議の感覚〟を生きる糧にするように、そのアリエッティとの語らいをとても大切にしています。
そんな中での、アリエッティと翔の語らいの場面です。
この語らいの場面は、ストーリー中でははじめ遠くから映す形でその会話内容を明らかにしません。
あえて視聴者に「どんな感じのことを話しているのか?」と想像させることを目的としているように、何か〝アリエッティと翔の密談〟を思わせる、少し不思議が抜けない仕上がりを見せています。
ストーリー途中からその密談だった会話内容は明るみに出されますが、とくにその前の「密談的な情況」の方をおすすめしたいです。
子どもの頃や、何らかの行き詰まった環境・境遇にある人にだけ訪れる「不思議の世界による励まし」のようにも見え、その「密談」の様子はとても神秘的かつ温かく見えてきます。
【その6】母親・ホミリー、ハルに捕まる!
アリエッティたちの存在が段々ハルにもバレ始め、ハルはついにある日、アリエッティたちが住んでいる隠れ家を押し入れの床下に発見してしまいます。
そのときのハルの好奇心旺盛な表情(かお)!
獲物を見つけた獣のようにイキイキし、その隠れ家にポツンと1人急須を持って立っていたホミリーを見つけ、すぐさま手を伸ばしてそのホミリーを捕まえます。
そして意地悪いことにそのホミリーを、集気瓶のようなガラス瓶に閉じ込めてしまうのです。
そうして閉じ込めたまま、次にハルは害虫駆除屋に電話をかけ、そのホミリーをはじめ(他にもいるだろう)小人の退治を依頼します。
ここまでの流れでハルがどんな人間かおわかりでしょう。
全く情け容赦ないような、意地の悪いおばさん。
ですがこのときのハルのハッスルぶりも、なかなか面白いもの。
「自分が探していたものが、ついに見つかったときの子どものようなイキイキ顔」、これを見ているだけでも笑えます。
それからハルと翔の「小人の争奪戦」のような競争が始まり、ハルは何とかアリエッティたちを駆除したいが、翔は何とかアリエッティたちを助けて逃がしたい!
この辺りの〝追いつけ追い越せの争奪バトル〟をぜひご堪能下さい。
【その7】別の家族の小人、スピラー登場!
ポッドはある日、外へ生活物品を調達していたところ、足を負傷してしまいます。
そこへ別の場所に住んでいた同じく小人のスピラーがやってきて、ポッドはこのスピラーに命を助けられます。
それからスピラーはアリエッティの家族と親密になり、〝好きなときにそこへきてもいい〟という約束を取り交わすほど、アリエッティの家族に受け入れられ、その後はまるで半分アリエッティの家族の1員のようになっていきます。
アリエッティたちは「その界隈で小人は自分たち1家だけ」と認識していたので、このスピラーの存在をとても有難く思い、また男手がポッドだけだったこともあり、とても頼もしく思います。
このスピラー登場によって本作のストーリーはさらに世界観を広げ、またさらに小人の世界が他にもあるという奥行きのような感動がやってきます。
【その8】アリエッティ、翔の頬にキスをする
翔が自分たちを匿ってくれたことで何とか駆除されず、自分たちの安全を確保できたアリエッティの家族でしたが、やはり1度見つかってしまうと〝2度、3度の危機〟は当然やってくるもので、その今後を懸念したポッドをはじめアリエッティの家族は皆、別の居住地を求めてその屋敷を去ることにします。
そのとき、自分たち小人を純粋な気持ちで助けてくれた翔のことを振り返り、アリエッティは次の移住先を求める途中で何とかもう1度、翔に会おうと試みました。
そしてスピラーの協力もあってアリエッティは、同じくアリエッティとの別れを惜しんで追ってきていた翔と再会を果たします。
そのとき翔は自分の正直な気持ちを、アリエッティに全て告白します。
それを聞いてアリエッティは居たたまれず、つい野にささった柵にするするっとよじ登り、翔の顔の前までくるとその頬にチュッとキスをします。
アリエッティの、精一杯の愛情表現でした。
ここで、それまでの翔とアリエッティのストーリーが何か〝総まとめ的なゴール〟を見たような光景を映し、その後はそれぞれの途に就いていきます。
やはりこの場面が本作1番のクライマックスで、小人と人間との関係を一気に縮めてくれたような、夢のある幻想的な〝現実の世界〟を奏でてくれます。
ぜひこの場面をメインの楽しみとして、ストーリー全体を追ってみて下さい。
『借りぐらしのアリエッティ』感想
私は本作をつい最近観たのですが、やはり〝さすがジブリアニメ!〟とうならされ、その魅力的な独特の世界観に打ちのめされました。
小人に焦点を当て、その小人の生活が「人間の生活空間」からいろんなものを借りることで成り立っている、という斬新な設定にとても興味深さを感じました。
普段から何気なく見ている・体感している・使っているものが、小人にとっては「こんなふうに映る」といった奇抜的な発想が、やはり本作を観ている間中、その感動をそそってくれるベースのようなものになってくれていました。
翔の持つ特異な境遇に、アリエッティという〝小人が織りなす、不思議にも心強いとても暖かな世界観〟が差し込まれ、半ば自分の運命に絶望しかけていた「どうしようもない気持ち」を、その根底から救い上げてくれるような演出の世界観は、やはりどんな人にも共通する〝応援のメッセージ〟を投げかけている気がします。
必ず「人生において1度以上は観たい」と思わされる、貴重な名作の1つではないでしょうか。
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