『ショーシャンクの空に』はティム・ロビンスとモーガン・フリーマンという、2大俳優の共演でも有名で、アメリカや日本をはじめ、世界各国でも有名な感動作品に数えられます。
ひょんなことから銀行に勤めるエリートマンは冤罪をかけられ、それまで高い社会的地位を誇っていた安定の人生から奈落の底へと辿らされる。
そして人生の挫折にふち当たったとき、そばにいた友人の助けにより、それまでとは違う「新たな人生」への旅立ちを目指します。
思いきり堪能できるヒューマンドラマの1作です!
今回は『ショーシャンクの空に』のあらすじと魅力を徹底的に掘り起こし、あなたと一緒にその感動をもう1度味わいたいと思います。
『ショーシャンクの空に』詳細
『(DVD)ショーシャンクの空に』
出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン他
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2008年4月11日
概要
1994年にアメリカで公開され、至高の感動作品として主に映画評論家に超人気を博した傑作中の傑作!
冤罪により投獄された有能な銀行員が、腐敗した刑務所の中でも希望を捨てずに生き抜くヒューマンドラマ調の仕上がりです。
原作はスティーブン・キングの中編小説『刑務所のリタ・ヘイワース(Rita Hayworth and Shawshank Redemption)』から。
監督・脚本はフランク・ダラボンであり、本作が彼の初監督作品。
ゆえに力作の代物!
興行的には成功したとは言いがたいものの、(先述通り)批評家・評論家からの人気は高く、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)のアメリカ映画ベスト100(10周年エディション)において72位にランクインしています。
日本では1995年のキネマ旬報ベストワン(洋画)に選ばれました。
主な登場人物:キャスト
アンドリュー:ティム・ロビンス(声:大塚芳忠)
若年で銀行副頭取になったエリート。
ある日突然、「自分の妻とプロゴルファーを殺害した容疑」で逮捕され、そのままショーシャンク刑務所へと連行される。
殺害動機は不倫によるもの。
はじめは大きく挫折するも、段々と生気を持ち直し、刑務所内でも「いつかまた出所して、その後は幸せな人生を送れる」と希望を持っている。
エリス・ボイド:モーガン・フリーマン(声:池田勝)
ショーシャンク刑務所内で〝調達屋〟と呼ばれるムショ仲間の先輩。
少しとっぽい性格だが、1度打ち解けるとあたたかみのある態度をもって接し続けてくれ、実はとても気さくな性格の持ち主でもある。
アンドリューの親友になる。
サミュエル・ノートン刑務所長:ボブ・ガントン(声:仁内建之)
刑務所内で大々的に権力を振りかざし、囚人たちを自分の意のままに操っている。
けっこう短気な性格。
ヘイウッド:ウィリアム・サドラー(声:江原正士)
ムショ仲間で、ある争いに巻き込まれ、首にナイフを突きつけられる。
バイロン・ハドリー主任刑務官:クランシー・ブラウン(声:田中正彦)
アンドリューから相続税対策について相談を受ける。
しかしその性格は横暴で、ノートンと同じく暴力で囚人たちを支配する冷徹漢。
それが祟って結局逮捕される。
トミー・ウィリアムズ:ギル・ベローズ(声:真地勇志)
ムショ仲間。
家宅侵入罪で2年の懲役刑を科されてショーシャンクに送還される。
教育環境に恵まれておらず、刑務所内でも高卒の資格を取るため、日夜勉強に励んでいる。
ボッグズ・ダイアモンド:マーク・ロルストン(声:金尾哲夫)
ムショ仲間で、動作が鈍い。
初老で、入所後から50年目に釈放されるが社会の波について行けず、「刑務所に戻りたい」と本音を吐露する。
結局釈放後、自殺する。
2分でわかる『ショーシャンクの空に』のあらすじ
時代背景は1947年から1966年の間という、超大スケールのロール設定。
アンドリューはある日に突然、妻とその愛人を射殺した罪に問われ、ショーシャンク刑務所に収監されてしまう。
ムショ内は想像以上の劣悪な環境で、アンドリューはそれまでの成功した人生から転落したことで、ひどく落胆してしまいます。
そんな中、同じムショ仲間のエリスと出会い、意気投合。
2人は収容される以前の生活や思い出、今の心境などを素直に語り合える友人になり、その後もずっと一緒に行動する(一度仲間割れしますが)。
ショーシャンク刑務所の主任刑務官であるノートンは、ことに支配欲から囚人たちを徹底して押さえつけます。
その刑務所にはもう何十年も刑期に服している囚人たちがおり、彼らもアンドリューと同じく、なんとか出所して、もう1度やり直すための土台作りに奔走しています。
ですが皆が皆更生を目指わけでもなく、中には社会の荒波について行けず、「刑務所内でしか生きられない者たち」も少なからずいます。
アンドリューは入所後からずっと出所できることを夢見ますが、言い渡された宣告は終身刑。
それから過酷な労働と虚無の毎日を送るにつれ、次第に生気を失い、もはや生きていることに嫌気が差してきます。
けれどエリスとの語らいを経て、また生きる意欲を沸かせたアンドリューは、1966年のある夜、ずっとハンマーでこじ開け続けた房の壁穴を通って脱獄します。
その後、メキシコへ逃亡。
そして逃亡先からのアンドリューによる内部告発により、ムショ内で悪事を働き続けていた主任刑務官・ハドリーは逮捕され、それにより所長も拳銃自殺します。
エリスもアンドリューの後を追う形で服役40年目で仮釈放されるが、ブルックスと同じく、社会の流れに対応できずに虚無を感じる。
ワラにすがる思いで、アンドリューの伝言を信じ、アンドリューの住むシワタネホへ向かいます。
そこで海を見つめながら自適に暮らしていたアンドリューと抱擁し合い、生きていることの喜びを再び確かめ合います。
参考:wikipedia
〈参考資料〉
【1】『ショーシャンクの空に』
出演:ティム・ロビンス他
販売元:松竹ホームビデオ
発売日:2001年5月21日
【2】『ショーシャンクの空に 公開10周年メモリアル・ボックス』
出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ウィリアム・サドラー他
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2005年7月1日
【3】『最高の人生の見つけ方』
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン他
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2010年4月21日
『ショーシャンクの空に』の7つの魅力とは?
【その1】誰にでも訪れる転落
魅力というより驚愕・脅威になるでしょうか?
日常生活を営むうちに急に挫折を味わわされることは誰にでもあることでしょう。
その「誰にでもあること」を本作は丁寧に表現しており、その共感できる脚色・演出からストーリーにのめり込ませるアピールポイントまで、創作に設定を講じ、無理のない展開よって演出しています。
銀行員といえば、現在でも「土台が崩されない商社マンエリート」に数えられますが、そのエリートでも1度挫折を味わえば、このように簡単に刑務所に入れられてしまうという〝転落の縮図〟を見せてきます。
本作を観る場合はこの冒頭が「枕」のような存在になるでしょうが、ぜひ初めからこの「転落」を〝誰にでもある日常の出来ごと〟と見定め、ストーリーの本筋へと辿ってみて下さい。
【その2】刑務所内で問題が山積み!
刑事ドラマやサスペンスものなど、警察と犯人が登場するドラマ・映画ではたいてい犯人が〝悪者〟にされがちです。
しかし本作では、その警察が担う刑務所内にこそ「問題・課題」が山積みであり、むしろ犯人(囚人)よりも警察官・監察官側の方が悪党といった、灯台下暗し的な描写を見せてきます。
「問題・課題」とは汚職や横領のことで、本末転倒の図になります。
警察、刑務所だからといって、それがジャスティスの役割に就く〝完全無欠の存在〟ではないことを、真実を究明する形で暴いていきます。
おそらく観ているだけで、〝かゆいところに手が届く爽快感〟が得られるでしょう。
【その3】正義と悪との本末転倒?
これも警察側と囚人側との問題・対峙の話題になりますが、警察や刑務所の所長だからといって、彼らも囚人と同じ人間であることに変わりありません。
本作におけるショーシャンク刑務所は実に、所長や主任が数々の悪事を働く悪徳刑務所の1つでした。
この刑務所に収監されている囚人たちの方が〝懸命に生きる姿勢〟を持つぶん、この所長や主任たちと一線を画す「正義」を持っているのではと錯覚するほどです。
人である限り欲があり、出世欲から支配欲、また将来を見定める保身欲まで、その終生変わらない欲望の渦は人を犠牲にする形で表れます。
本作を観ていて第1に感じられたことは、「本当の正義と悪はいったいどこにあるの?」というものでした。
おそらくこれは本作の掲げる1番の主張のような気がして、これから本作を観られる方にはぜひ、この辺りの真相を追求しながら観てほしいと思います。
【その4】生きることをあきらめない!
主人公・アンドリューは服役から20年弱で脱獄します。
それまで「生きること」への向上欲をとにかく大切に生きてきました。
途中、何度も挫折することもありましたが、その都度、周りにいる友人(とくにエリス)の励ましによって大きな活力を得ることができ、遂には脱獄し、自分の生活を取り戻すことができたのです。
脱獄、ですから、むろんそれが肯定されるわけはありません。
が、「人の生きる姿勢が素直かつ真面目なものなら、悪徳を働き続けて生き続ける人よりも数倍も崇高なものではないか?」とうかがわせる点も、おそらく本作が掲げる魅力の1つとなるでしょう。
【その5】勉強に励むトミー
刑務所内で唯一、教育環境にほとんど恵まれなかった囚人がトミーです。
トミーはまだ若く、本当は勉強して、高校に進学するという夢を持っていました。
けれど家庭環境の劣悪から罪人となり、果てはこのショーシャンク刑務所に収監されることになったのです。
このトミーの向上欲はとても純粋で、昼夜を問わず勉強し、「自分の可能性を試したい」とする「人として当たり前の欲求」を叶えようとします。
この健気な努力を続けるトミーの姿をぜひ吟味してほしいです。
物がありふれ、非常に裕福になった現代では、なかなか味わえない、貴重なドラマを見つけることができるように思います。
【その6】スケールの大きさ
社会現象という言葉がありますが、これは万人に共通する話題や出来ごと、また世間・世界の人々に共通の問題・課題が取り上げられたとき、持ち出される自然現象のように扱われます。
本作にも、この社会現象となっておかしくない、「正義と悪を審判する一般常識」を追求することにより得られる問題・課題が取り上げられます。
映画の中だけではありません。
現実の世界でも本作が掲げる問題は頻繁にピックアップされており、「人が人を支配する・統率する上で、どのような正義と悪とを基準に置けばよいか?」というような大問題に切迫します。
それはまるで〝答えが得られない終生の課題〟に直面するものでしょうか。
本作を観賞するときには、ぜひ現代社会の縮図を匂わす「正義と悪との物差しのようなもの」を見定めながら、本作の大意を追究する形で鑑賞してみて下さい。
【その7】解放感と自由
自由とは「束縛」があって初めて成り立つもの・感じられるものと言います。
本作でもそれは同じで、収監という束縛から逃れることで、やっと手にできたものが〝釈放・脱獄〟です。
これに自由があります。
(この際、脱獄の罪は脇へ置いておきます)。
収監される前から疑惑をかけられ、アンドリューの場合は「冤罪」という形でショーシャンク刑務所に入れられました。
これも言えば「人の目の束縛・偏見による束縛」という、窮屈を思わす〝縛り〟になります。
人と人とが共存するとき、どうしても「共存のルール」というものが存在し、そのルールは得てして一定の束縛を生み出すものです。
それから考えれば私たちも皆、ある特定の束縛を受けながら生きていることになるでしょう。
そう、つまりここでも「束縛を思う上での共感」を得られるわけです。
アンドリューとエリスは最後に、ショーシャンク刑務所から出てこれた喜びと生きる喜びを、抱擁し合うことで表現して見せます。
この抱擁による喜びが「何から解放されたことによる喜びなのか」を考えながら観てみると、また違った感想・感動が沸くことでしょう。
『ショーシャンクの空に』の9つの名シーン!
【その1】エリスとの出会い
アンドリューはショーシャンク刑務所に収監されてからすぐ、ムショの先輩・エリスと出会います。
エリスはそこで〝調達屋〟と呼ばれ、便利屋のような存在でした。
けっこう沢山の囚人たちから好かれ信頼されながら、一方で気さくな気質も持ち合わせ、人に対する優しさは心の底から湧いてくるものです。
このエリスとアンドリューとの出会いの場面は、本作のメインストーリーへ入る前の前座と言ってよいでしょうか。
外国映画にしてはしつこすぎず濃すぎず、とてもサラッとした出会いが魅力的です。
【その2】トミーの勉強を皆で支える
トミーは(先述通り)教育環境に恵まれなかった青年で、それでも「いつかは社会復帰に向け、自分のやりたいことをやるため、せめて高卒の資格くらいは取っておきたい」と熱心に勉強をしています。
その彼の真面目な態度に周りの囚人たちも感化され、段々トミーに対する見方が変わってきます。
とくにアンドリューは、刑務所に来る前は銀行副頭取として務めるほどの人でしたから、このトミーの努力に勉強の面でも何かと協力できます。
アンドリューをはじめ、エリスや周りの囚人たちとトミーの関わり合いが、なんだか観ていて仄々とした、とても心温まる展開を奏でます。
【その3】刑務所側と囚人たちとの温度差
アンドリューが、初めて刑務所と呼ばれる場所へ収監されていくシーン。
刑務所には、実に色んな罪状で収監されている囚人たちが多くいます。
アンドリューが収監されたときにも、一緒に収監された何人かがおり、毎日ひっきりなしに人が出入りしている様子をうかがわせます。
アンドリューはいわゆる〝濡れ衣〟を着せられて収監されました。
他にも、許しがたいことへの仇討ちに出たことがきっかけで、収監された人もいます。
刑務所の所長や主任は、いわゆる管理者といわれる立場にある人たちです。
世間はそれだけで囚人よりも上の立場に見て取ります。
けれど、本作をじっくり観ていくうちに、この〝立場の差〟というものが段々変化してきます。
果して、世間で言われるほどに立場の高低はあるのか、また正義と悪とをきっちり分けられるのか、ということがわからなくなるのです。
とにかくショーシャンク刑務所では数々の汚職が飛び交います。
所長や主任は数々の悪事を働きながらそれを隠蔽し、自分を完全に棚上げしたまま囚人たちの徹底管理に就いています。
この「刑務所側と囚人たちとの温度差」には、現代でも計り知れない「権力と弱者との見えない壁」が見えるでしょう。
簡単にはジャッジできない〝人の内面と外面〟が潜みます。
【その4】刑務所から外へ出てみると…
ブルックスが刑期を終えて、刑務所を出ていくシーン。
囚人に、ブルックスという初老の男がいて、ブルックスは刑期を終えて50年ぶりに社会へ復帰します。
刑務所には法律で「本釈放」と「仮釈放」とがあります。
仮釈放のうちはまだ執行猶予の段階で管理官からの監視がつき、社会でうまくやっていけるかという、その後の安定を図ってもらえるのです。
このブルックスは仮釈放で社会に出ましたが、それは本釈放とほとんど変わらない過酷なものでした。
すでに社会は収監前に比べて別世界です。
50年といえば、人が産まれて壮年になるまでの時間に相当します。
30歳で収監されれば80歳です。
その刑務所から出て、実際にどうやって生活していけばよいのか、途方に暮れるのも納得できるでしょう。
ブルックスも同じです。
浦島太郎状態のブルックスを待ち受けていたのは、老体には不可能な肉体労働と、あまりに悲惨な日常でした。
「刑務所に戻りたい…」
ブルックスはポツリ呟きます(これが本音)。
刑務所を出てからスーパーのレジ打ちに就きますが、そこのオーナー(ブルックスよりも何十歳も若い男)からこっぴどく罵倒されます。
その後の生活も非常に暗いものに変わり、元服役囚というレッテルから世間はお構いなしにブルックスを責め立てます。
これでは、刑務所を出てよいものか悪いものか、当人にとっては錯乱した思いが充満します。
そうしたあげく、ブルックスはとうとう自分の部屋で自殺しました。
ブルックスの、刑務所を出てからこの最後までを、冷静に見届けて下さい。
ここにも本作が掲げる「社会への本音」が隠されています。
私的に1番感動したシーンでした。
【その5】希望を持つか、持たないか
エリスとアンドリューが出会ってから、仲睦まじい語らいの生活が始まります。
その語らいの中で、「希望は持つな。
希望を持つのは、ここではとても危険なことだ」とエリスはアンドリューに警告します。
アンドリューは冤罪をかけられたことから〝社会復帰〟を当たり前に夢見ており、どうしても自分の生活を取り戻そうと必死になります。
そのタイミングでエリスのこの言葉ですから、2人の間には〝ちょっとしたミゾ〟ができます。
けれど、人はいついかなるときでも希望を持って生きていくもの。
アンドリューも例外ではなく、いくらエリスにそう言われても簡単に夢を捨てきれません。
しかし刑期は終身刑であり、いくら「冤罪」と主張しても、それは囚人がよくいう自己弁護の姿だと相手にしてもらえない。
その長い人間不信が、そのうちアンドリューにも「希望を持つことの怖さ」を強く押しつけてきます。
そしてその後の挽回…。
このシーンをぜひ冷静な目線でご覧下さい。
〝人が現実に生きる上でいったい何が必要か〟ということが、とてもリアルに伝わります。
【その6】ハーモニカ
エリスはアンドリューからハーモニカをプレゼントされます。
エリスは刑務所へ来る前、ハーモニカや楽器がとても好きな音楽青年でした。
なので、そのエリスの思い出話しを聞いたアンドリューは、さっそく自分が持っていたハーモニカをあげました。
ですがエリスは、アンドリューの前でハーモニカを吹こうとしません。
「希望を持つことは危険」
と自分に言い聞かせていたエリスには、またそのハーモニカを吹くことで〝以前の自分の活気〟を思い出す恐怖がありました。
人生を楽しもうという希望が、また絶望に変えられることの恐怖を思い出したのです。
このシーンも、アンドリューに見られた「希望を持つこととの葛藤のシーン」に似てますが、モーガン・フリーマン演じる〝しがない初老の男の虚無〟が実に見事に再現され感動を呼びます。
とても味わい深く、また万人共通の心情が表れるシーンにも思われますので、ぜひじっくりとご鑑賞下さい。
【その7】牢獄の中でのアンドリューの努力!
アンドリューは無期懲役を言い渡され、すなわち当時でいう終身刑になります。
これでもう社会に出ることを許されなくなった絶望的な囚人の1人に数えられました。
それからアンドリューは狂ったように独房の中で暴れ、段々虚無に満ちていく自分の姿を嘆いていきます。
けれどアンドリューは冤罪で、もともと刑に伏す理由も負い目もありません。
「何度言っても誰も信じてくれないのなら!」と、アンドリューはそれから生涯を懸けた脱出を試みます。
この辺りはまるで『大脱走!』(出演:スティーブ・マックィーン、1963年米)の懐かしさを思い出させますが、本作ではとても現実的に、かつ大胆にそれへの決行がなされていきます。
他人は飽くまで他人で、自分が犯罪に見舞われたときその場にいない。
また、自分の心の内も正確に把握できない頼りない存在…。
そんな誰もに共通する共存のルールから、アンドリューは「自分の人生」を取り戻すため、懸命の奮闘します。
この誰にも信用されなくなったアンドリューの姿を、ぜひメインに持ってきて吟味してみて下さい。
きっとあなたにも、何らかの感動と共感が表れると思います。
【その8】アンドリュー、天を仰ぐ
アンドリューはやっとの思いでショーシャンク刑務所を脱出します。
それでもその後は追手がつき、心から安心できる生活に着くのは遠い先のことかも知れません。
ですがアンドリューは、自分でつかみ取った〝生(せい)〟に渾身の力を込めて喜びを表し、雨の降る中、空を仰いで両手を伸ばします。
このときのアンドリューの表情がなんとも言えず安らかで、かつ希望に燃えた活気を灯します。
「いったい何からの脱出だったのか?」
本作をじっくり観ていくと、この疑問がまず浮かび上がるかも知れません。
刑務所はいわゆる社会の公共施設としてありますが、その施設を管理する人にも、囚人と同様、あるいは隠蔽することによりそれ以上の罪悪が蔓延っており、管理者が正しいのか、囚人が正しいのか、それすらもわからなくなる程のカオスが見て取れます。
短いシーンに思われるでしょうが、脱獄前からこの解放の瞬間まで見通すことで、本作が訴え続ける「正義をもって人を裁くこと」への究極的な本論が見えてくるように思います。
[ad#ad-1]【その9】海辺を包む大空の下、抱擁しあう2人の喜び
アンドリューを追ってエリスは、仮釈放後、メキシコへと向かいます。
アンドリューは脱獄後、それまで所長が裏金として貯め込んでいたお金を全て銀行から引き出し、それをもってメキシコの某海岸近くに別荘を買って住んでいました。
そこへアンドリューは、前もってエリスを招待していたのです。
エリスはそれまでの長い刑務所生活でかなり精神も疲れており、なかなか社会に復帰できない自分の様子を悲観し続けています。
仮釈放で社会に復帰したけれど、社会の荒波について行けなかったブルックスとほとんど同じ状態です。
エリスも囚人とはいえ収監される以前までは普通の人と同様に生活してきましたから、いざその境遇において、何をどうすればよいかわかりません。
そんなどうしようもない状況でのアンドリューからの招待ですから、エリスの気持ちがそちらへ向くのは自然のことです。
エリスはしずしずアンドリューがいるメキシコの別荘へと向かいます。
アンドリューはエリスが来るのを待っていました。
同じ囚人仲間として、収監された直後から親友のように生活してきた仲間ですから、この再会はとても意味があり、感動するものに違いありません。
見渡す限りに青い空と美しい海辺が広がる景色の中で、それまでの苦難を全て振り切ったように抱き合う2人。
ここでも「2人は何から解放されて、そこでの自由と喜びを手に入れることができたのか」ということへの思いが、とてもはっきり浮き出ることと思います。
またその後の2人の生活風景、2人の生きる事への信念の持ち方などを想像すれば、また本作の〝醍醐味〟を別の角度から見た深い感想が湧くことでしょう。
まとめ&感想
私はちょうど大学時代に本作を観ましたが、それ以降、何度も何度も反省させられる至高の傑作に数えています。
「刑務所」という世間で管理されている囲いの中で、人が人を裁く正義というものの正体とは何なのか?ずっと心を引く形で考えさせられました。
善悪や正義と悪戯という、人が営む日常生活から決して引き離せない無形財産のようなものですが、これによって個人の人生の全てが決定づけられるというとてもシビアな局面は誰にでも突きつけられると思います。
そう考えるとやはり、本作が掲げ続ける「人が人を裁くこと」への限界のようなものを感じさせられます。
例えば冤罪や死刑制度の撤廃・是正などはおよそ人には担いきれない膨大な問題のように見えてくるのです。
先述で何度か言いましたが、「ショーシャンク刑務所から脱獄・仮釈放されたアンドリューとエリスは、何から解放されてその自由を喜んだのか?」という、このひと言の感想が1番大きくあがりました。
ジャスティス(正義)、審判、裁判、人が人の人生を決める、法律、刑種、更生、支援、冤罪…、この辺りをキーワードにして観ることで、それまであまり考えなかった「人生と自由のあり方」について思惑・想像が広がることでしょう。
「感動する作品を観たい!」、「いろいろと考えさせられる作品を観たい」、「濃厚なヒューマンドラマが観たい」、「ずっと心と記憶に残る名作を観たい!」という人には、ぜひおススメしたい1作です。
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