切なさの魔術師と呼ばれる乙一氏は、若干十七歳で「夏と花火と私の死体」（執筆時は十六歳）でデビューし、若者を中心に安定した人気を保つ作家です。
泣ける、切ない、と言われる反面、ユニークで大爆笑を誘う文体や作品も多く、あとがきが面白すぎるのであとがきから読む、というファンも多いのです。
では、そんな乙一氏の小説で「これはおすすめ」というランキングを挙げてみたいと思います！
乙一 人気小説おすすめランキングベスト3
「死にぞこないの青」
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死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
乙一 幻冬舎 2001-10
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3位はホラー仕立てでありつつ、乙一らしく「人が救われる物語」を貫く「死にぞこないの青」をおすすめです。
これは、面白いという人と、嫌かなという人に割れているようですが、乙一氏は先述した通り「人が救われる物語」を書きたい人なので、これは若い担任が自分の立場を守るためにたった一人の小学生を苛める話ですが、その生徒がそれに打ち勝つ力を得る、自分を救うという意味で爽快感を感じます。
それに「青」という不気味な存在が絡みます。
拘束服でぐるぐる巻きにされて、顔中縫い目だらけの真っ青な少年、それは主人公のマサオにしか見えず、担任から逃れ、逆襲する方法を耳打ちしていきます。
ここら辺がホラーですが、これはマサオ自身の力だろうな、と思いますよ。
やり遂げる力を持ちながらも、自分の意志で教師を許したのはマサオですから。
これが乙一氏の目指す、人が自分を救う力じゃないかと感じる作品です。
第2位「しあわせは子猫のかたち」
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しあわせは子猫のかたち (角川つばさ文庫)
乙 一 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-02-15
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表題作として角川つばさ文庫で発行されました。
泣ける泣けるひたすら泣ける、寂しい人間の目線から人の温かさをもう一度信じてみようか、と光に目を向ける、そういう話です。
大学入学のために親戚の家を借りた「ぼく」の一人称で進む物語です。
その家では先住者の若い女性が強盗に殺されており、カメラ好きだった彼女の撮影道具や家具がそのまま遺され、何と飼い猫まで居ついていました。
しかも、あろうことか「彼女自身」つまり陽気でお茶目な幽霊までが残っていて、主人公の世話を焼き、お節介にも掃除をしたりユニークないたずらをしたり、自分好みの落語のラジオをかけたり（趣味が渋い！）。
これも、事故だと思われていたミステリー絡みです。
幽霊である彼女の死には、近くで死んだ大学生の事故が関わっています。
理由も分からず突然殺されながら、彼女、雪村サキは、そんな人生を悲嘆してはいません。
後ろ向きで人が苦手な、それでもそんな自分に絶望して泣く主人公にほのかな希望を残して去っていきます。
雪村サキの残した手紙の温かさに、これは掘り出し物！と断言させて頂きます。
第1位「暗いところで待ち合わせ」
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暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
乙一 幻冬舎 2002-04
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比較的前期の作品ですが、暗くて怖い！と思った表紙は何なのか、感動の涙が止まらない、当時乙一最高傑作とされた長編ラブストーリーであり、長編ミステリーでもあります。
目が見えなくなった若い女性ミチルは、父を亡くし、親友の手助けを借りつつ一人慎ましく暮らしています。
ミチルは駅のホームが見える家に住んでいますが、そのホームから男性が突き落とされる殺人事件が起きて、彼に虐められ続けて職場で孤立していた後輩のアキヒロが盲目のミチルの家に逃げ込み、気配を隠して同居を始めます。
いくら気配を殺してもアキヒロがいることに気付き始めて恐怖から素知らぬふりをするミチルの、見えないことでの日常の危険を知らん顔出来ない優しさからつい助けてしまうアキヒロ。
二人の同居が、あくまでもお互いに気付かないふりをしたままさりげなく交差していく、これがたまらない優しい描写です！
そして、殺人事件の真相は…と、こちらももちろん楽しめます。
乙一氏は、当時恋愛小説として完結した描写がなく、この「暗いところで待ち合わせ」も、ほっと穏やかな春を迎えかけたような、この二人はこれからどうなる？と思わせぶりだけどきっと幸せになるよね、と期待できるラストです。
孤独だからそれに慣れちゃったし自分はそれでいいと思ってた
だけど一度温かさを知ったからもう一人じゃ生きていけない
そんな物語なので、ぼっちだけど本当は人恋しいから、似たような誰かと会いたいな、と思っている人
切ない人が絡むミステリーが好きな人におすすめな作品です。
乙一小説 おすすめランキング初心者向け、まずはこの2冊を!
感動できる、そして初心者向けの本として、乙一小説、どれがおすすめ？となると、やはり短編集として秀作があちこちから集まった「失はれる物語」をおすすめです！
映画になった「きみにしか聞こえない」の原作「calling you」も、ここに挙げた「しあわせは子猫のかたち」も収録されています。
泣ける短編がたくさんです！
ラノベに分類されがちな乙一氏の最初に発売された本は、綺麗なイラストがついていますが、この「失はれる物語」にはついていないので、年齢層が高い人でも手に取りやすくなっています。
若い人にでも読みやすい内容の短編が収録されながら、装丁がシンプルという一冊です。
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失はれる物語 (角川文庫)
乙一 角川書店 2006-06
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そして、映画化された「ＺＯＯ」が文庫化されるにあたり、映画化された作品の「ＺＯＯ１」とそれ以外の「ＺＯＯ２」に分けられましたが、「ＺＯＯ１」が、人間の奥深さを描く秀作としておすすめの文庫です。
これには、グロの黒乙一ともいわれる「SEVEN ROOMS」の人気とインパクトが強烈です。
一部屋に一人ずつ閉じ込められた女性が。午後六時に惨殺されていく描写は残酷ですが、それを覆す十五歳の少女の最期の狂気と、弟である「僕」の、姉との永遠の別れの悲しさが淡々と描かれていて、殺人劇なのに涙が止まらない作品です。
これも是非、ですよ。
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ZOO〈1〉 (集英社文庫)
乙一 集英社 2006-05
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ZOO〈2〉 (集英社文庫)
乙一 集英社 2006-05
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切ないけどミステリー、ユニークだけど染み入る文体の乙一作品
【乙一 おすすめ作品ベスト3】
1位「暗いところで待ち合わせ」
2位「しあわせは子猫のかたち」
3位「死にぞこないの青」
【初心者向け】
「失はれる物語」
「ＺＯＯ」
切ない物語、そしてミステリーが絡んだり、ホラーだったりファンタジーだったり、こっちの文章にお腹を抱えて笑ったかと思うとクライマックスの文章は涙ぐむ重みをはらんだりします。
乙一氏の作品はこういうもの、と断定できないんです。
「小生物語」というウソ日記と言われるエッセイもどきがありますが、これがページをめくるごとに笑い転げずにはいられません。
そういうものを書く人が、数多（あまた）の読者を泣きに泣かせるのです。
初心者向けにしろ、話題作にしろ、大損にはならないので、おすすめいたします。
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