安部公房のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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安部公房のおすすめ小説ランキング:第10位~第4位

10位 IS・カルマ氏の犯罪

出版社:新潮社
発売日:1972年5月20日

『壁』(月曜書房、昭和26年)にオムニバス形式で収録された一作。
「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」の三篇からなる。
公房作のうち「最も前衛的な作品」と言われる側面を持ち、第25回芥川賞を受賞した作品。

人の孤独と失望感からまず「壁」を想定し、人の生活感から「人間的なぬくもり(すなわち人間らしさ)」を次第に喪失してゆく主人公は、自分の「人としての存在権」を自ら剥奪するかのように無機生物の虚無的思想に目覚めていきます。

最近でいうところの筒井康隆作品や(いっとき前の)村上春樹作品に見られたような「喪失感」や「虚無性」が、人の生活に難なく侵入してきて、やがて人の成長を内側から破壊していくといった「喪失の極限を表したような作品」です。

ですが私はなぜかこの作品が持つ“特異な虚無的思想”に引き込まれ、テーマに裏打ちされたような「人の成長からなる空想の派生と限界」といったところに、特別な魅力を感じました。

安部公房の名前が一気に有名になったそのきっかけの作品『壁』に収められた作品だけあり、その内容は実にシュールでありながら“特異の魅力”が満載です。
文体は変わらず論理的主体ですが、公房を知るなら「一読の価値が絶対にアリの作品」です。


9位 砂の女

出版社:新潮社
発売日:1972年7月20日

本作は昭和37年に新潮社から発行され、同年に読売文学賞を受賞後に映画化されたやや奇想天外を扮したSFがかった純文学小説です。
さらに翻訳版では英語からチェコ語・フィンランド語・デンマーク語・ロシア語等の二十数か国語に翻訳され、昭和43年にはフランスで最優秀外国文学賞(英語版)を受賞した新生の傑作!

それまでの公房作品からすると“論理性による実証的な表記”は消え、物語の主張にのみ重点を置いた比較的わかりやすい作品です。

当時における現代社会に上手く順応してゆく人間表象を巧みに捉え、たとえ「の習慣から抜け出たい」という理想があっても人間の本質は周りの概念に必ず埋没して生きるという、非常に哲学がかった作品です。

この“哲学”の妙味を巧くSF要素で脚色し、読者には公房独自のオリジナルの文学観を突きつけます。

現代でも普通に見られる「人の共存生活」と「権力への崇拝と隷属」が公房特有の脚色により非常に上手く表現されており、恐らく読者は誰もが共感できる不変の一作に認められるでしょう。

『箱男』や『終りし道の標べに』で採られた“人の奥底を1つ1つ明るみに出してゆくような告白型の展開”が実に奇抜であり、先の2作品に共感できた人は間違いなく面白く読めると思います。


8位 ごろつき

出版社・新潮社
発売日:1972年7月20日

ありふれたタイトルに見えましたが「公房ならどんな風に描写するのか?」と興味を覚えて読んだやや現代風刺を交えた冒険小説です。

日常に見られる正常人の実態に“ごろつき”に通じる未開のドラマを描き、人の心の奥底に秘められるし正義と偽善との境界を見事に描き出し、そのテーマは真正面から「人の本能からなる狂暴性」を掴もうとしています。

私は本作を読みながら初めはなかなか印象を掴むことができなく、「よくあるに日常風景」を連続して見ているような気でいましたが、二度、三度再読するごとに、人が持つ生来の性悪が“生きながらにして幸福を掴もうとするストーリー”に思え出し、その点からいえば結末はやはり「一応のハッピーエンド」に終始しているのではないかと落着させられました。

皆さんはどんな風な結末を迎えるでしょうか?小説に“マルチエンド”を期待する人にはぜひおすすめしたい一作です。


7位 無関係な死

出版社:新潮社
発売日:1974年5月28日

あるとき自分のアパートの部屋に「見知らぬ死体」を見つけた男はその死体の身元を確認する術もなく、ただ淡々と日々を生活するうち次第にその死体から「自分の心理に潜む劣等性」を見せけられてゆく。
個人が未開の社会から生活を追われてゆく、スリル・サスペンス系の短編小説。

あまり注目されてこなかった作品ですが、私は本作を安部公房の短編・中編小説の内で至高の傑作(あるいは怪作)と位置付けてもよいと思います。
それだけ氏のキャリアの中から多くの独創とクオリティが詰め込まれた斬新な快進作と言ってよい作品です。

『人魚伝』(安部公房全集第5巻、昭和47年)に取られた脚色やテーマ性と付随するところがありますが、本作の本意はもっと別の結末にあり、“人が持つ能力そのものが人の理想(、あるいは人の社会)への反響性を持ってしまう”というような、非常に重い内容が飛び交います。

「やや難解な公房作品を読みたい!」という人向けの作品です。

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6位 カーブの向う

出版社:新潮社
発売日:1972年11月20日

公房作品にはよく見られる「記憶喪失」が変じる“人の生活の限界”を謳ったサイコ・ホラー的要素を加味したヒューマンドラマ調の純文学小説。

ある男がその記憶を中断されてしまい、次の瞬間から見るもの・聞くもの全てが「訳のわからない現実」に映る迷路の中を、手探り状態で“自分の目的”へ辿り着こうとする“人の心理描写を抽出した作品”です。

実に公房らしい脚色の連続で、表現は平易ながらも訴えようとする主張やテーマは重厚で、読解を得るにはなかなか手ごわい感触を得る“人の純粋を詠った作品”と言ってよいでしょう。

人から知識や経験を全て奪うのでなく「中断する」という形にしておくことで、人の本能はどのような図面を現実に浮き彫りにするかといった、ややサイコチックな描写が飛び交います。
この辺りが読んでいて実に奇妙な感覚を与えます。

『燃え尽きた地図』にその背景があるようにも思われ、本作を読んだ前後にはぜひ『燃え尽きた地図』または『洪水』(戯曲)なども読んでみて下さい。


5位 子供部屋

出版社:新潮社
発売日:1972年11月20日

『安部公房全集第8巻』に収録された、公房中期頃に発表されたやや幻想がかった作品です。
人が子供の頃や野生に回帰するとき“どんな理想を描いてゆくか”といった夢の正体のようなものを、ずっと追い続けてゆくサスペンスロマンの仕上がりです。

ストーリー展開をおおよそ“子供部屋”という一室に設け、その内で人間描写の移ろいを隈なく明るみに出したややノスタルジックな作品です。
本作には実に公房らしい独創が表れていて、まるで『少女と魚』や『未必の故意』、あるいは『棒になった男』にも彩られたような“奇怪な人間ドラマ”がさく裂しています。

“子供部屋”は部屋から主人公の周囲、他人の周囲、人の社会、といったような「入れ子構造式」の変遷を遂げ、やがては主人公が生きる世界を全て「子供部屋」としてしまうような、これも位相幾何学的な脚色を見せ、私としては読むうちに“どんどん物語の深み”にハマるほどの異様な魅力を感じさせられてしまいました。

タイトルからは想像もつかない「人の本質に迫った魅力」が満載です。
ぜひ読んでみて下さい。


4位 おまえにも罪がある

出版社:新潮社
発売日:1973年2月20日

あるアパートに怪しげな男と女が住んでおり、二人は隣人同士で仲も親密。
ある日二人は、乳母車に乗せた男の死体を同じアパートに住む留守中の別の男の部屋に放り込む。
この男は独身。
独身男が帰宅するとそこには当然見知らぬ死体が。

公房作品にあるミステリー小説の内でも非常に奇抜な展開を見せる本作は、他のミステリー・サスペンス小説に見られる常套の仕掛けや結末とは委細異なった、人間描写に徹底したスリルサスペンス・ホラーの仕上がりです。

経過を追いながら所々で形容される登場人物の心理描写が秀逸で、ただミステリー小説を味わうだけでなくまるで“ミステリーそのものの正体”を断面的に見せてくるような、実に真に迫ったリアル感が充満しています。

展開は確かに一般に見られる「ミステリー作品」のものと同様に窺えますが、その人間描写の確立性が実に見事だったのでこの順位にしています。

「ミステリー小説の底を抜いたような発想」このフレーズにピンときた人は、ぜひ読んでみて下さい。

次ページはいよいよベスト3です!


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