谷崎潤一郎のおすすめ小説本ランキング!人気作品ベスト20を一挙紹介!

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こんにちは!

今回は文豪と称されながら「和風の純朴小説」から「人の本能を彫刻したような力作」まで、数多くの絶品を世に送り出してきた大作家・谷崎潤一郎のおすすめ作品をランキング形式でご紹介します!

道徳的美談から乖離したいわゆる「耽美主義」に端を発する谷崎の特徴は、その作品において非常に特有の奇想描写に冴えわたり、マゾヒズムから女性崇拝にまで、その価値を不動に認めた象徴的モダンの美麗を飾ります。

漢語をはじめ雅語、詩文、人間描写から背景演出まで、さまざまな趣向を凝らしながら「人間を浮き彫りにした個性」を彩る谷崎文学の艶やかさは、現在においても至高の逸材と評され、「文豪・大谷崎」の名を知らしめる圧倒的な成果を奏でています。

明治末期から昭和中期まで、いかんなく発揮され続けた谷崎文学の端麗かつ優美な作品群から、今回はできるだけ「掘り出し物」の作品を多くご紹介し、少しでも谷崎文学の正味を味わってもらえることを期待します。

谷崎といえば『春琴抄』や『痴人の愛』、『蓼食う虫』や『細雪』などが有名ですが、彼の作品にはまだまだ「純粋に感動できる作品」がごろごろあり、皆さんが出会うべき「お気に入りの一作」も隠れているかも知れません。

今回は私が自信をもって皆さまに「谷崎文学に彩られたすごみと奥深さ」をご紹介するとともに、「これだけは読んで頂きたい!」と願う「谷崎潤一郎のおすすめ作品」をご紹介しますので、ぜひ最後までご堪能下さい。

では、いってみましょう!

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谷崎潤一郎のおすすめ小説ランキング:第20位~第11位

20位 途上

出版社:中央公論社
発売日:1981年11月25日

ミステリー・サスペンスの先駆的な作品として知られ、『改造』(大正9年)に初出が掲載された谷崎初のヒューマンドラマ調の仕上がり。
『呪われた戯曲』とともに非常に文芸要素も高いとされる。

【あらすじ】
2人の男が登場し、1人は探偵、もう1人は(恐らく)何らかの犯罪をなした犯人であり、その2人の会話のやり取りだけでストーリーが展開していく。
犯人の心内から犯罪が織りなされていき、その「犯罪が起きた可能性」をもう1人の探偵が半ば空想的に追及し解決する。

あらすじでわかるように、このストーリー描写は主に、2人だけの心理描写のせめぎ合いからなり、どこで犯罪が起きてどこでその犯罪が追及され解決されたのか、恐らく一読では判らない「変った推理モノ」の運びを見せつけてきます。

谷崎作品の内にはこのような、可能性(プロバビリティ)に依拠した完成度の高い逸材が多いので、谷崎作品で「推理モノやミステリー系を読みたい」という人には、本作に彩られたような「可能性の追及」に慣れることからおすすめします。

テーマや設定・構成は重厚ですが、その内容は意外と安易に掴めると思いますので、比較的スルスルと読めるかも知れません。


19位 AとBの話

出版社:中央公論社
発売日:1981年11月25日

『潤一郎ラビリンスⅩ 分身物語』(中公文庫)に『金と銀』、『友田と松永の話』とともに収録された、「人間の二重性に焦点を当てたエゴイスティック」な秀逸作。

【あらすじ】
生まれつき善人のAと悪人のBとを主人公に置き、2人が互いの存在意義をかけて私闘を繰り広げる。
終局的に見れば、互いに潜む善悪の両性とは一体合流するのかしないのか、その辺りが明確にされない「浮遊するテーマ」が特徴的。

人に潜む「生来的な善悪」を浮き彫りにして描写がなされ、AとBという主人公には互いに知れない「心内の善悪」の存在が、実にしぶとく際立っています。
幾様にも取れるマルチエンドの仕上がりが、実は一体性の内容ではないかと思わすこの辺りに、「浮遊する描写の奇抜さ」が成り立ちます。

かなり珍しい作品でもありますので、ぜひ読んでほしい作品です。
1つの作品から多様な結末を得られる柔軟な作品ですので、気晴らしで読むのにも最適です。


18位 三人法師

出版社:中央公論社
発売日:1982年4月25日

『中央公論』(昭和4年)に初出が掲載された、高野山を舞台に繰り広げられる半ば寓話的な架空譚。
本作の原本の成立は、谷崎が実際に同地を訪れた際に残した手記と、国史ともされる伝本の内から得た着想による。

【あらすじ】
時は、南北朝の戦乱勃発から漸く終わりに近づいた元中年間のこと。
高野山で廻国修業を行なう人の中に3人の半出家がおり、それぞれ名前を幻松、幻竹、幻海といって、彼らは互いに興味を持ち合い、交友関係を結びながら同居するようになる。
時が再び流れ、3人の絆が深まっていくうち、やや幻想がかったスリル譚が語られ始める…。

まるで歴史物を読んでいるような気分で、初めは単なる紀行文や時代小説を読んでいる光景ですが、途中から入る「夢想の挿話譚」が何とも奇妙に際立ちます。

結末部までを読むと、まるで仏教説話から化け物が飛び出してきたような「痛快なスリル」が垣間見られ、これは歴史物なのか何なのか、判らなくなっていく辺りがまた興味深いです。

テーマは3人の修行僧からなる「身の上話」の珍妙にありますが、所々で挿入される夢のようなストーリーがいかにも幻想的で、その設定と構成にはかなりの厚みがあるように窺えます。

なかなかサラッとは読めない濃厚な一作ですので、心を静めてゆっくり読むことをおすすめします。


17位 恐怖

出版社:中央公論社
発売日:1981年6月25日

初出は「大阪毎日新聞」(大正2年)に掲載され、当時の世情から人間に宿る恐怖を演出した「サイコスリル」的なヒューマンミステリー系。
『刺青』や『前科者』などに見られる流行への批判・風刺を交えながらも、「人間の中身と弱さをえぐる描写」が本作のテーマを抽出している。

【あらすじ】
パニック障を患う青年が徴兵検査のために、近代文明の成果・鉄道(京阪電車)に乗って京都から大阪へと赴く。
その間、障害が織りなす「人の集中密度による恐怖」によって、「電車に乗っている」という何でもないことが「死刑台へ上っていく」ように妄想的な形容に駆られ始める。
果して青年が取った意外な行動とは…。

極端な「恐怖症」という心象を扱いながら、絶壁の恐怖と妄想に遭遇したとき恐らく誰もが取る行動―「安穏が宿る空間の確保」を実に詳細に描き出しています。
パラノイアに見られがちな自然(じねん)の往来が、「病的な個人の衝動」を演出します。

精神障害を扱うことから普遍的な心理描写を浮き立たせており、読み手側にもしっくりとくる、非常な共感をもたらすはずです。

短編サイズで文体も平易ですので、「じっくり読み」でも「気晴らし読み」でも、サラッと読める手ごろな作品です。

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16位 鍵

出版社:新潮社
発売日:1968年10月29日

『中央公論』(昭和31年)に初出が掲載された、人間の性の奥底を覗かせる「シュール」とも呼べる愛憎の内容。
谷崎が晩年に渾身を込めて書き上げた完熟の一品。

【あらすじ】
日常生活を送る一般的な夫婦の間で、ある日から互いの日記を暗黙に見せ合うという、刺激的かつ複雑な、奇妙な交信が始まっていく。
実は2人は性の虜となっており、日常の興味のあり方から深い性癖まで覗かれるのに興奮し、やがて背徳的から魅了を覚える「愛憎の檻」へと埋没し果てる。

谷崎作品の中では多々見られる「性描写」が彩られた生粋の作品であり、あまりに見事な「日記に隠れた非凡の様子」は、恐らく読者に並々ならぬ興奮を見せつけてきます。

私は本作を初めて読んだとき、かの有名な『痴人の愛』や『卍(まんじ)』に込められた生理描写と比べてみても、確立された「煩悶の魅力」のようなものを実感させられました。

日記だからこそ平凡であり、また日記であるからこそ暗黙に「本能剥き出しの描写」ができる…。
この辺りに、谷崎が本作で狙った「人間の快楽への探求」が秘められていると思えます。

テーマ・構成は見事なのですが、ややグロテスクに過ぎる表現が垣間見られますので、もう少し上位につけたい本作もこの位置にとどめました。
しかし私としては、谷崎全作品の内でベスト3に入れたい傑作です。


15位 聞書抄(ききがきしょう)

出版社:中央公論新社
発売日:2005年9月25日

「大阪毎日新聞」と「東京日日新聞」(昭和10年)に同時掲載された、時代絵巻を思わす挿絵を付した歴史小説物の体裁を取る。
サブタイトルは「第二盲目物語」。

【あらすじ】
落魄した石田三成の娘の前に現れた盲目の法師。
彼が語り始めたのは、「殺生関白」と仇名された秀吉の甥・秀次の行状、きらびやかで残虐なこの世の地獄絵巻であった。

「殺生関白」と聞いてどんなイメージを持たれるか、実にさまざまな空想や感情が湧くことでしょうが、本作はこのようなイメージ・心情の揺れ動きを多角的に眺めて解きほぐし、なかなか骨子が見えない「人情と情欲とのアンバランス」を表現しています。

「情けをかけるあまりに情厚くあり、その陰で愛おしむ者を却って虐待してしまう…」そんな耽溺に過ぎるというか人の本能的な衝動が、谷崎ならではの筆勢で描かれています。

文体が少々お堅く、谷崎作ではよく見られる「カタカナ書き」の多さにやられてしまい、少し読みづらいかも知れません。
本作も余裕を持ちながら、腰をすえて読まれることをおすすめします。


14位 少年

出版社:新潮社
発売日:1969年8月5日

『スバル』(明治44年)に初出が掲載された、少年少女の他愛ない遊びから肉欲の茂みを見せ始める変調譚。
谷崎お得意の女性崇拝への脚色が漲っている。

【あらすじ】
主人公は少年「栄」(10歳)。
栄は普通の小学生ながら同級で育ちのよい「信一」と遊んでいくうち、それまで得られなかった快楽への興味を持ち始めていく。
ある日、栄は信一の家へ遊びに行くと、いじめっこの「仙吉」がなぜか信一にいじめられている光景を目にする。
その関係に信一の義理の姉「光子」が加わり始め、そのうち光子は本性を剥き出していく。
やがて光子は少年らを意のままに操る女王の風体を醸していった…。

まさに谷崎の王道ともいえる「女性崇拝」への描写が秀逸であり、登場人物を少年少女に仕立てていますが、彼らが見せる興味への片りんは、大人でも魅惑を覚える特異な快楽を表しています。

展開に見られるセリフの言い回しや思考のやり取りなどは平易ですが、そのシンプルなストーリーにはなかなか奥深い「すごみ」のようなものが見え隠れします。

内容自体はさらっと読めますが、思わず同じ場面を二度見・三度見してしまうような、非常に求心力の強い作品といえるでしょうか。

ぜひ「谷崎文学の女性崇拝への兆し」を味わいたい人は、本作に秘められた魅力からご堪能下さい。

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13位 少将滋幹の母

出版社:新潮社
発売日:1953年10月9日

「毎日新聞」(昭和24年)から連載された「王朝物」を扱った時代小説で、美妻である北の方の強奪を巡り、藤原国経と藤原滋幹との壮絶な情念を描き出した長編のセンス・ミステリー。
ベースは『今昔物語』ともいわれる。

【あらすじ】
舞台は平安時代。
左大臣時平は北の方を想うあまりにその愛情は情欲にまで着き、その観念のあり方は北の方と長年寄り添とった夫や実子である幼子との離別を伴った。
母を恋い慕う幼い滋幹は母の情人がしたためた恋文を手許に母の元に通う。
それと並行して奏でられる夫・国経の感情の深みは次第に3人の定めを決定づけていく。

舞台が平安時代ということで登場人物を含む背景・設定演出に特定の枠が付され、そのための「時代を越えた感情のやり取りや、恋情のあり方」などにも特殊な感覚が湧いてきます。

時平と北の方、また国経との経過の定めがあまりにも非情を含む憐憫を見せ、その間に認められる滋幹の純朴な姿がストーリー中で異彩ともいえる人格を表します。

長編ですので「さらっと読む」というわけにはいきませんが、内容は平易なものですのでじっくり読んでも内容は掴みやすいでしょう。
じっくり腰を落ち着けて読むことをおすすめします。


12位 秘密

出版社:新潮社
発売日:1969年8月5日

『中央公論』(明治44年)に初出が掲載され、著名になった経過に伴い、同年12月には籾山書店から『刺青』の副録として刊行された。

【あらすじ】
懐古趣味を持つ主人公「私」は、読書や飲酒を趣味・趣向とし日々を平凡に暮らしていた。
段々そうした平凡に飽き始め、日常の環境を抜け出して寺に住み着くようになる。
そこで特殊な性癖が顔をもたげ始めて女装趣味を覚え、その趣味を楽しむうちに昔の女友だちのTと出会い、2人は互いの秘密を知り合う。
その後2人に変調が訪れ始め…。

女装が趣味という一風変わった男のストーリーであり、秘密というのは旧友の女との間で見つかるものであり、その「ある秘密」を伴って1人の人生が大きく変わっていきます。

逢瀬を続けていた「私」と女との関係ははじめ柔軟かつ未熟なものでしたが、その様子は段々変調をきたし、そこから谷崎独特の脚色が冴えわたっていきます。

構成や設定はとても濃厚でしっかりしており、1つの書物として読むぶんにも十分満足できる作品だと思います。

純朴な恋愛小説のような描写から、段々「特異の世界」に埋没していく谷崎テイストを読んでみたい人には、ぜひおすすめしたい一作です。


11位 大切な雰囲気

出版社:中央公論社
発売日:1983年7月25日

『大切な雰囲気』(昭森社、昭和11年)に初出が掲載され、人評を挿入しながら谷崎が見てきた日々の移ろいのようなものを譚物としてまとめた日記仕立ての一作です。

末尾に「昭和10年11月」と記された日記調の記述であり、関東大震災頃に関東から関西へ渡った谷崎の周囲で交わされる日常の風景が描かれます。

いま生きている人ともう死んだ人との境界を念頭に置き、日々に見られる「(震災により)自然淘汰されたような命」の行方に筆致を携え、谷崎本人の思想や純粋な感想が包み隠さず綴られています。
また『蓼食う虫』の装填についての思い出も少し語られます。

「1つの作品として読む」というより、谷崎本人の日記を読む姿勢で読むことをおすすめしたいです。
作品ではなかなか見られない、谷崎の身の周りに起きた「素直な描写」を読んでみたい人にはおすすめです。

次ページからはベスト10です!どんどんいきましょう!


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