風立ちぬ 感想を語り尽くす!あらすじから5つの名シーンまでを一挙公開!※ネタバレ解説

風立ちぬ

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ジブリアニメで2013年に公開された宮崎駿監督作品、『風立ちぬ』!
もうあなたはご覧になったでしょうか?

これは実在の人物・堀越二郎をモデルに取ったドキュメンタリータッチの1作でもあり、公開当時は「戦前戦後を生き抜いた堀越二郎の記録」とともに、ジブリアニメでは初の現代模写・実写化が騒がれた、とても斬新な構成の作品です。

宮崎駿監督はこの制作を機に「長編アニメからの引退」を発表しており、言えば事実上、『風立ちぬ』が宮崎アニメの集大成的な作品になるのかも知れません(また作ってほしいという期待を込めながら)。

宮崎監督自身も「自分で作った映画で、泣いたのは初めてです」とその感極まる思いを赤裸々に告白しています。

このように宮崎監督自身にさえ告白させた本作の威力なるものは、果たしてどのようなものなのでしょう?

この辺りの魅力、見せ場、独断を交えた感想について、今回は一挙公開してみたいと思います。

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『風立ちぬ』詳細

監督:宮崎駿
販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
発売日:2014年6月18日

〈概要〉

実在の人物である堀越二郎をモデルに、その半生を完全に創作して描いた作品であるが、堀辰雄の小説『風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている。

漫画からのビジュアル面での大きな変更点として、登場人物の多くが擬人化された動物の姿で描かれていたのを、全てリアルな人間の姿で描かれている。

キャッチコピーは「生きねば。」

宮崎駿が監督した作品で、実在の人物を主人公とするのは初めて。

「この漫画はいわば趣味として描いていたもの」
「アニメーション映画は子どものためにつくるもの。大人のための映画はつくっちゃいけない」
と当時は映画化することは全く考えていなかったという。

主題歌

荒井由実「ひこうき雲」

宮崎駿は松任谷由実のファンで、「ひこうき雲」を宮崎が気に入っていることを明かして本作へのオファー。
1989年公開の『魔女の宅急便』では「やさしさに包まれたなら」と「ルージュの伝言」を挿入歌に起用している。

松任谷
「このために40年やってきたのかなというくらいうれしい。だって私のデビューアルバムの曲ですから。もう後にはひけませんよ(笑)」とコメントしている。

評価・動員数

【堀越二郎の遺族からの反応】
モデルとなった堀越二郎の長男は、関東大震災のシーンあたりから引き込まれ、別れのシーンでは涙が止まらなかったと高く評価している。

【国内】
2013年7月20日・21日の2日間で興行収入9億6088万円、観客動員74万7451人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった。

【海外】
2014年1月22日よりフランスで公開された。
公開1か月で動員数は43万6000人(これは『崖の上のポニョ』公開時91万7000人の約半分)

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主な登場人物・声優

堀越二郎(ほりこしじろう)/声優:庵野秀明
本作『風立ちぬ』の主人公。
裕福な家庭に生まれ、性格はのほほんとしてとらえ所がなく、時間や予定にはルーズ。

スタジオジブリの鈴木敏夫に対して、アニメーション監督の庵野秀明が「零戦が飛ぶシーンがあるなら描かせてほしい」と申し入れている。
宮崎は主人公のイメージとして「早口である」「滑舌がよい」「凛としている」の3つを挙げており、庵野を選んだ理由として「いい声だからでなく、存在感で選んだ」としている。

里見菜穂子(さとみなおこ)/声優:瀧本美織
本作『風立ちぬ』のヒロイン。性格は明るく純真。
その一方で芯の強い女性。
東京の代々木上原に住まう資産家の令嬢(関東大震災前は上野広小路)。
趣味は画を描くこと。

本庄(ほんじょう)/声優:西島秀俊
東京帝国大学時代からの二郎の親友。その後、同僚かつライバルとなる航空技術者。

黒川(くろかわ)/声優:西村雅彦
二郎の上司。性格はせっかちで気むずかしい堅物。

カストルプ/声優:スティーブン・アルパート
軽井沢町に滞在するドイツ人。
たまたま二郎や里見家と同宿だったことから、二郎と菜穂子が交際を始める際に立会人となった

里見(さとみ)/声優:風間杜夫
菜穂子の父親。
菜穂子との交際を申し出た二郎に対し、菜穂子の病状を伝え、考え直すよう諭す。

堀越加代(ほりこしかよ)/声優:志田未来
二郎の妹。
幼い頃から兄の二郎を慕い、「二兄(にいにい)」と呼ぶ。

服部(はっとり)/声優:國村隼
二郎が所属する設計課の課長。
七試艦上戦闘機の開発の失敗で失意の二郎に、休暇を与えた。

黒川夫人(くろかわふじん)/声優:大竹しのぶ
二郎の上司である黒川の妻。

カプローニ/声優:野村萬斎
実在の人物であるカプロニ創業者のジャンニ・カプローニをモデルとしている。

引用元:wikipedia

【簡単】3分でわかる『風立ちぬ』のあらすじ

時は第2次世界大戦の前後。

主人公・堀越二郎は、幼少の頃より飛行機にあこがれる〝飛行機マニア〟だった。

そんなとき、自分の夢に出てきた飛行機設計士・カプローニ伯爵に「飛行機設計家」になるよう励まされ、その夢に向けて精進していく。

そして二郎は大学で実際に設計技術を学び始めた。

しているときに関東大震災に見舞われた街中で、少女・菜穂子に出会う。菜穂子を助ける形で出会った2人だが、その後しばらく会うことはなかった。

卒業後、二郎は飛行機の開発会社へ入社し、本格的に飛行機設計家としての道を歩み始める。

それから入社5年目にして、二郎は海軍戦闘機の開発におけるチーフに抜擢されるも、二郎が設計した飛行機は〝空中分解する〟という、何とも情けない成果を出してしまった。

そのことにより落胆した二郎は、避暑地にあるホテルまで行き、そこでまた偶然に菜穂子と出会う。

そこで元気を取り戻した二郎は、そのとき菜穂子に結婚を申し込んだ。

菜穂子はこのとき、「自分が結核であること」を告白し結婚に対して難色を示すも、二郎は「治るまで自分が面倒を見る」という約束を取りつけ、そのまま2人は婚約する運びとなった。

けれども菜穂子の病状は重くなり、喀血したことをきっかけにして、二郎は菜穂子の治療に専念するため郊外の病院へと菜穂子を入院させる。

その後も飛行機造りに専念していた二郎は、(それが自分の夢でもあるため)なかなか菜穂子の見舞いに行けない日々を送っていった。

それがもとで寂しくなった菜穂子はついに病院を抜け出し、二郎のもとへと会いに来てしまう。

二郎は「飛行機を取るか、菜穂子を取るか?」のほぼ2択を迫られたが、どうしても夢を捨て去ることができず、何とか両立する形で日々を送ってみようと決意する。

そこで二郎と菜穂子は上司の立ち合いのもと小さな結婚式を挙げ、そのまま上司の家の離れを間借りして住み込んだ。

それが二郎と菜穂子の、2人で始めた結婚生活の始まりである。

菜穂子の身体は次第に弱り始め、顔色の蒼白を隠すためにとわざと頬紅を強く塗るなどし、二郎に心配をかけまいと努力する。

またそれでも菜穂子は「仕事をしているときの二郎が好きだ」と言って、夢をあきらめずに自分の人生を送ることを強く二郎に勧めた。

飛行機完成日の試験飛行が行なわれる日、普段通りに二郎を見送った菜穂子は、そのまま置手紙をして二郎のもとを去る。

これを知って上司は、

「きっと菜穂子は自分の美しい、まだ元気なうちの姿だけを二郎の記憶に残したかったのだろう」

と察した。

不思議なもので、二郎は試験飛行をしていたそのときに、菜穂子のことが急に気にかかり、菜穂子の身の異変を察する。

時が経ち、戦局が悪化して日本はやがて焦土化してしまう。

また夢に現れたカプローニ伯爵から、

「よくやったじゃないか。君の作った飛行機は最高傑作だ」

といった旨の賛辞を受けるが、二郎はその飛行機が1機も戻ってこなかったことを受け、再び落胆してしまう。

その同じ夢の中で菜穂子が登場し、

「生きて」

と元気に励まされる。

これを聞いて二郎は心底から活力を取り戻し、泣きながら何度も頷き、

「ありがとう、ありがとう…」

と菜穂子に語り続ける。

〈関連作品〉

【1】『風立ちぬ・美しい村』

著者:堀辰雄
出版社:新潮社
発売日:1951年1月29日

【2】『風立ちぬ』

著者:宮崎駿
出版社大日本絵画
発売日:2015年10月8日

【3】『風立ちぬ/菜穂子』

著者:堀辰雄
出版社:小学館
発売日:2013年11月6日

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ぜひおすすめする『風立ちぬ』の9つの魅力!

何と言ってもノンフィクションのリアル!

何と言っても『風立ちぬ』を彩る「ノンフィクション」というリアル感が終始冴えており、始めから終わりまで、ずっと釘づけにしてしまう魅力に引き込まれることでしょう。

堀越二郎の生い立ちをご存知の方には尚更でしょうか。

たいていのアニメ作品には〝どうせアニメの中での出来ごとだから…〟と言って、どうしてもその〝世界〟へ入っていくのに躊躇を覚えることもあるでしょうが、本作にはそれがありません。

確かにそれでも映画ですから「脚色されている部分」はありますが、それを軽く超えるほどの〝現実を思わす感動〟が所せましです!

ジブリ映画では今回「初めてのノンフィクション」を手掛けた1作でもあり、その意味でも実に新鮮で味わいのある「レトロ・グラフィックな感動」が巻き起こっています。

どうぞその醍醐味と魅力と感動を、ぜひあなた自身の目で確認して下さい。

実話だからこそ面白い!

また上記から引っ張る形ですが、どうしてもこの「実話」から巻き起こる感動が消えないもので、私的にも「最近ジブリ映画を観て、初めて心から感動した作品」にノミネートされている次第なのです。

「こんなドラマチック・映画チックなことが本当に起きてたんだ!?」と心底から思わせる巨大な深層的快感が、観れば観るほど、また(原作なら)読めば読むほど、さらに何度も観れば何度も観るほどに、全く飽きさせない彩りとその感動が次々押し寄せる〝底抜けの味わい〟を楽しめます!

以前までは『風の谷のナウシカ』が宮崎監督アニメの最高峰などと(勝手に)思い込んでいたものですが、なんのなんの、本作はさらにその上をいくほどの、激大な感動と臨場の渦を投げ落としてくれました。

絶対に観てほしい1作で、とくに二郎と菜穂子との淡い初恋から、段々お互いに〝深みのある・人間味の根深い究極の愛〟を育むまでの完熟ストーリーの魅力を、ぜひ全心を傾けて存分に愉しんでほしい傑作です!

本当にぜひ1度観て下さい!必ず損はしません!!

レトロな風景の懐かしさと臨場感の交流

ジブリアニメではよく「時代設定」が昔に彩られたり、また未来生気を象った幻想的な風景が脚色されるものですが、『風立ちぬ』も〝第2次世界大戦の前後期〟という70年以上前の設定で、それゆえのレトロな光景・情景を楽しめます。

またそのレトロの中に自然と視聴者の心が入っていけるような、何というか、「昔を昔の枠にはめ込んでしまわない、不思議な世界観の確立」が上々で、そのお陰でさらに感想や想像が膨らんでくる「柔軟な鑑賞」が可能になっているようです。

実に巧いタッチの線引きで、昔の風景をさも〝今そこにあるような風景〟になぞらえて描き尽くし、その上でストーリーは確かに戦前後の気配をしたためている…。

どこかニヒリスティックな情景も垣間見られる部分がありますが、ノンフィクションの潮流が何とも舞台に輪をかける形で演出を支配しつつ、観る側にとっては「とても贅沢な楽しみ方」ができる何十層もの感慨が芽生えます。

ぜひその辺りの〝描写の巧さ〟にもご注目下さい。

2人の主人公と、並走する空間軸

本作には、二郎と菜穂子という2人の主人公があらかじめセッティングされているようで、その2人の目線をもってストーリーが展開するような、「並行するストーリー軸が別々の空間からやがて1つの終局部分」へとつながる重奏の構成に見られます。

その「2人が持つ別々の空間」がはじめ偶然ながらセッションを重ねていき、やがては「1つの終局部分(ゴール)」へとすんなり溶け込んでいくという、まるで現実に見ているようなストーリーを奏でてくれます。

この辺りの設定と演出が抜群で、ストーリーを真面目に追えば追うほど、さらに浮き立つ「2人の命の物語」と言って過言ではない〝人生の重さ〟のようなものが語られてきます。

贈られてくるのは確かに1つのストーリーなのですが、どうしても「2人に与えられた人生の躍動と盛衰」が視聴者の心を揺さぶり続けます…。

透き通るような青い空

本作『風立ちぬ』の各場面には、けっこう「青く、透き通った大空」が描かれます。

この青い空にまるで吸い込まれていくような感動を覚えながらも、2人の濃厚かつ感動的な現実の秘話は滞ることなく紡がれていきます。

私はこの「場面いっぱいに広がる大空」を観て、本作のメインテーマは「空」だと思いました。

テーマ曲として選ばれたのが「ひこうき雲」(松任谷由実)で、この歌の内容は〝亡くなった友人の命をひこうき雲に喩え、その一線のあり方が青い空に延々伸びていく景色〟をもって「今でも友人は心にいます」という何か〝隠れた告白〟を聞かされているような気もしました。

その〝ひこうき雲〟が真っ直ぐ描くものが空で、・菜穂子の笑顔がずっと映り続けるのもこの青い空です。

空は手を伸ばしても届かないようでいて、何かずっと見守っていてくれるような、またひょんなことでその母体のような空中へ吸い込んでくれるような、何とも不思議で暖かい〝愛情や安心〟のようなものを感じることがあります。

菜穂子が死んでやがては空になった、と言わせるほどの演出が、何か本作の骨子の部分に隠されているような気もします。

「風立ちぬ」というタイトルが織りなす深み

「風立ちぬ」というタイトルはいったい、どんな意味を持つのでしょうか?

おそらく末尾にある「ぬ」の訳し方で皆さん迷われると思いますが、少し具体的に言えばこの「ぬ」は、古典文法に使われる「過去完了の助動詞」と思われ、したがって直訳は、

「風が立った後」、または「風が吹き去った後」

というような意味になります。

こう考える場合、次に「〝風が去った後〟という形容にはどんな意味があるの?」となると思います。

この辺りが『風立ちぬ』のストーリーに隠された妙味となるでしょうか。

おそらく「風」というのは〝二郎と菜穂子がこの世で味わった経過〟の意味と、〝菜穂子を「風」に見立てた上での、当たり前にも心地よい幸せの時間がもう過ぎ去ってしまった〟という2重の意味合いを持たされているのでは…、なんて考えてしまいます。

この「過ぎ去った…」という形容にはやはり寂しい気色が少々残るものですが、ラストシーンで言われる菜穂子の「生きて」と言う二郎への励ましの言葉をもって、「その〝寂しさ〟がこの世だけでの寂しさで、いずれまた2人は天国で再会できる」というような、喜怒哀楽の全部さえ救ってくれる特殊な形容にも見えてきます。

探れば探るほど奥深みが増す構成・演出と原作のストーリー軸、やはり見逃せないものです。

心の底から励ましてくれる、純真なストーリー

また『風立ちぬ』のテーマは、キャチコピーの「生きねば」にも見られる通り〝生きること〟でしょう。

二郎も菜穂子も懸命に自分の人生を生き(もちろん他のキャラクターもともに)、人としての幸せと夢の両方をずっと追い続けていくという、非常に純粋かつ純真な仕上がりになっています。

とくに菜穂子の〝二郎を大きく見守る目〟には母性の輝きのようなものがあり、加えて自分の幸せを「この世の生(せい)だけに見ない」という、何とも達観したような成熟の観点にあふれるものです。

このストーリー構成も非常に奥深いものですが、さらには〝単純な目でもってストーリーを眺めてみる〟ことで、もっと吟味できる「心の動き」のようなものを垣間見ることでしょう(この辺りはどうぞ本作をご覧になって確認下さい)。

何重にも絡められた〝奇跡的な人間模様〟の連続を、どうか心の感覚をもって追い続けて観て下さい。

決してきれいごとだけじゃない、人間らしいストーリー演出

アニメだからといって必ずしもハッピーエンドになるわけでなく、とくにジブリ映画ではこの辺りの「現実に即した人間のリアル感」をよほどに汲み取ってきた歴史もあり、本作『風立ちぬ』でも〝夢、夢、夢〟で終わるような脚色はされていません。

たとえば1つ例をあげるなら、「二郎が菜穂子のことを愛していながらも、なかなか見舞いに行かなかったり、自分の夢を追うことで少し菜穂子をなおざりにするようなシーン」です。

決して二郎は「菜穂子を見捨てる」とかそんな姿勢を取っているのではなく、〝夢と生活との両立がかなり難しいこと〟をもってそれを体現しているような、どうしようもない人生の壁のようなものを表しているわけです。

このような〝愛しているからといって、自分の人生全てをその人に重ね合わせることなんてできない…!〟といった、私たちも現実で常に見せられ突きつけられている、リアルの厳しさのようなものを見せてくれます。

この辺りの描写にも非常に根強いリアル感が芽生えるもので、「確かに現実でも、こんなときはこうするだろう(こうなってしまうだろう)」と言わせる臨場の空気が流れてきます。

この〝模様〟はとくに後半から望めますが、「二郎が仕事に打ち込んでいる姿」とそれに対する「菜穂子の一線を引いている様子」に着目してみて下さい。

本当に〝人とつき合うこと・人を愛すること〟の奥深さ、正義のようなものが見えてくるように思えます。

ラストシーンでの、幻想のような命の声

よく「怖い夢を見た…」や「感動的な夢を見てしまった」というのを聞くと思いますが、夢とはその人の深層心理から見せられるものらしく、言えば、その人が普段生活している上で〝自分でも気づかないこと〟を見ていると言います。

二郎もこの夢の中でさまざまなストーリーを見、さらには夢に登場する伯爵や菜穂子から「励ましを受ける」といった独壇的な場面を見ています。

ラストシーンで菜穂子が二郎の夢の中に出てきて、

「生きて」

と、それ以上ない励ましをもって元気づけます。まるで生命賛歌を思わすような菜穂子の声で、それは〝菜穂子を失って、自分の夢をも見失いかけていた二郎〟にとっては何にも代えられない心底からの活性を生ませます。

〝いずれまた会えるから、今はあなたの人生を精一杯生きて〟

とも置き換えられるようなこの言葉に、果たして二郎はどんな気持ちをもって応え、また菜穂子の残像をどのように心に象って生きていくのでしょうか?

この辺りは原作を読んだ方がリアル感をもって知ることができると思います。

ぜひ原作と映画の両履きをもって、この〝二郎と菜穂子の色褪せないアルバム〟を覗いてみて下さい。

いかがでしょうか。

『風立ちぬ』の魅力が少しでも皆さんに伝わったでしょうか?

本作の感動の威力はおそらくその「原作のリアル」からきており、そのリアル感をさらにパワーアップさせる形でアニメ化することでこそ、実に豊富で弛まない、不変の臨場感を醸し出しているのだと思います。

ぜひこの感動に彩られる爽快な活劇を、本作を通してご堪能下さい。

では次に、ご紹介した〝魅力〟の数々を秘めた「本作の見せ場」を5場面、厳選してお伝えしたいと思います。

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『風立ちぬ』5つの名シーン・名場面

【その1】奇跡的と言える、偶然の再会

前半のシーンになりますが、おそらく皆さんもご存知の関東大震災の激動が『風立ちぬ』でも彩られており、その大震災下で二郎と菜穂子は偶然にも街中で遭遇します。

普通に多勢見られる街中での出会いですから、はっきり言って「運命的な出会い」になるものでしょう。

その「運命的な出会い」をしたことによって2人は、その後も「互いの人生を分かち合う、奇跡的な生活譚」を繰り広げていきます。

この場面もジブリアニメならではの脚色が冴えており、

現実でも本当に見られるような、無理のない出会いの場面

として描かれていて、その自然さがかえって引き立ち〝臨場感・リアル感〟を挿入し、2人のあり方にノンフィクションの風味を漂わしていく絶妙のコラボを演出させています。

何気ないワンシーンなのですが、なぜか〝実に味わいのあるシーン〟に映るでしょう。

ぜひお見逃しなく!

【その2】飛行機造りに熱心な二郎

これは前半から要所でずっと続いていくシーンになりますが、二郎の「飛行機造りに非常に熱心な気迫、その没頭する姿勢」を垣間見させることで、本当に「飛行機造りをするために生まれてきたのか?」と思わせるほどの二郎のあり方が鮮明に伝わります。

これも史実なので、ストーリーにおいてもその実際は容易に実感できるでしょう。

そして菜穂子の容態が悪化したときでもその飛行機造りに没頭してしまい、つい後で後悔する二郎のシーンも実に無理がなく、観ていて思わず〝人間味のある自然の描写〟に堪能されることでしょう。

二郎にとって「飛行機が全て」と言わせてしまえるほどの終始一貫した脚色が、史実の二郎への演出も微妙に奏でているように見えてきます。

【その3】喀血して倒れてしまう菜穂子

菜穂子は絵が好きで、よく草原に画板を持って行っては、心行くまで風景画などを描いていました。

菜穂子はこの趣味を、自分の容態を悪化させた後も続けていました。

ある日、その「自分の幸せの時間」を過ごしていたタイミングで菜穂子は、ついに喀血してしまいます。

それを知った二郎は早急に菜穂子に病院へ運び、そのまま入院させて「自分は看病につく」と豪語します。

この展開を観ていると、何か2人の趣味が生き方そのものにも見えてきて、その〝生き方〟で二人三脚できなかったことの哀しさのようなものが浮き立ってきます。

ただ場面を追うだけではなくて、趣味や仕事に掲げているような「2人の生き方」そのものを吟味して観てみると、さらに深い感想が薄(うっす)らと感じられることでしょう。

【その4】ぬくもりのある2人の生活

二郎と菜穂子が結婚生活を味わった間はほんの短いものでしたが、それでもその短い間で「全ての喜怒哀楽を味わった」ような、とても濃厚で貴重なものだったと思います。

二郎は一家の大黒柱として何とか菜穂子を楽に生活させてやり、自分の幸せもそこで叶えたいと奔走しますが、菜穂子の病状が段々悪化しているごとに哀しさを覚え、ついその哀しさに負けてしまいそうにもなってしまいます。

ですがその度に菜穂子は大きな愛情で二郎を抱擁し、見守り、そしてときに強く励まして、二郎がまた人生を歩いて行けるよう懸命に支えます。

その2人のあり方が何ともきれいでぬくもりを持ち、そのぬくもりに絆される形で感動を覚えさせられます。

とくに観てほしいシーンは、夜、二郎が飛行機の設計図を書いて試行錯誤していたとき、その様子を布団で寝ながら見守っていた菜穂子にそっとキスする場面です。

これも夫婦であれば何気ない1場面なのかも知れないですが、本作『風立ちぬ』のストーリーをもってこその深みが味わわれるもので、1男女の純朴で素直なあり方が非常に浮き立っているように思います。

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【その5】「生きて」―それから始まる二郎と菜穂子の二人三脚

原作の凄いところは、やはり「菜穂子が亡くなってもその〝生きた証〟が残り、二郎と菜穂子はその後もずっと一緒にいる」というネバーエンドの結末を描いている点でしょうか。

「死んだら終わり」というような悲しい結末ではなく、「命は決してなくならない」といった究極の生命賛歌を掲げているところに、原作並びに本作に彩られた描写の奥深さが見事に終局しているように思えます。

ストーリーを最後まで観るとおそらくわかるのですが、二郎は菜穂子の死をそのまま受け取らず、「菜穂子はずっと心の中で生き続けていること」を暗示させているかのように、何か変わらない落ち着きのようなものを見せています。

そしてその姿勢が常に天国にいる菜穂子に向けられていて、天国と地上で2人は〝二人三脚〟を続けているようにも見えるのです。

設定・脚色の巧さでしょうか。

ストーリーを淡々と観れば哀しいのですが、少しそのストーリーを構築している骨子の部分を覗くと、この「絶え間ない命への謳歌と、消えることのない愛の深さ」のようなものが確実に見えてくるように思えます。

ぜひ本作だけは〝深読み〟をする形で観てもらい、その本意をじっくり味わって、ストーリー全体に掲げられた「不動のテーマ」のようなものをつかんでほしいと思います。

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感想

私は『風立ちぬ』をリリースされてからしばらく経って観たのですが、やはり予想通り、とても感動してしまいました。

ジブリ映画はもうあんまり観ないだろうな、と思っていた矢先のことだったので、またその感動に振り回されたことが〝余計に新鮮味を与えてくれた〟のを覚えています。

堀越二郎のことをあまりよく知らなかったのですが、ジブリ映画の『風立ちぬ』を観てから「少し調べてみよう」となり、実際にその人生のあり方なんかをちょっと見てみました。

すると、さすがに感動させられる「いろいろな人生の軌跡」を垣間見させられ、本作で彩られてきたさまざまな場面を彷彿させられる形で実に堪能したものです。

ノンフィクションということもあり、本作を観られる場合は、おそらく先に原作を当たってからの方がよいかと思われます。

その方が「この場面がこういうふうに脚色されている」や「史実がこうだからこの場面が生まれたのだろう」などの予備知識をもって楽しめると思うので、おそらく鑑賞にもそれなりの深みが増すことでしょう。

「ジブリ初のノンフィクション映画、実在の人物を登場させたリアル・ノベル」でもあるので、ぜひまだ観ていない人には観て頂きたく、この〝膨大な感動〟を少しでも味わってほしいと思います。

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